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私の本棚 酒井駒子さん 行きて帰りし、物語の世界

影響を与えられた絵本たち 1冊目

ちいさなうさこちゃん
ちいさなうさこちゃん
著者/編集:ディック・ブルーナ,石井桃子
出版社:福音館書店
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--ちいさなうさこちゃんが最初の絵本ですか?

酒井さん兄の絵本を読んだりはしていたと思うんですけど、自分のために買ってもらったっていうのはこれが最初ですね。幼稚園のころ、家に帰ってきたら母親が嬉しそうな顔をしていて待ち構えていたんです。あなたによいものをあげましょう、みたいな感じで。それで一通りよんでくれて、どう?って聞かれたんですけど、何て答えたらいいか分からなくて。すごく面白い!という感じとは違うでしょ?なんかこの、さやえんどうとなしとかがすごくおいしそうに見えたりとか、ページの最初で開いているお家の窓が最後には閉まっていたりとか。今でも言葉にはできないんですけど、好ましい感じ。なんかこの、胸の奥のほうにずっと残っているような感じを伝えたかったですね。その後も毎回何がすごく面白いというわけではないのだけれど、何度も好ましく開いてはみていました。

--お母様が本をお好きだったのですか?

酒井さん物凄く読み込むという感じではなかったと思うんですが、本が少ない時代に育ったから自分が子どもを持ったら、本をたくさんあたえてやりたいと思ったんでしょうね。おもちゃとか、全然買ってもらえないんですけど、本は別枠で買ってもらっていました。読み聞かせなどもしてくれていたのですが、一番印象に残っているのが旧約聖書物語という本ですね。それを一話ずつ毎晩読んでもらいました。

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影響を与えられた絵本たち 2冊目

大きい1年生と小さな2年生
大きい1年生と小さな2年生
著者/編集:古田足日,中山正美
出版社:偕成社
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--これはどういうきっかけで?

酒井さんこれも母が買ってきたものだったと思います。2、3年生の時に読んだと思うのですが。この主人公のまさやくんというのがとっても怖がりなんですけど、何で怖いのかが自分でもよく分からない感じがすごく共感できるし、その子がだんだんと世界を広げていくのがとてもよく思えました。最後に女の子のためにほたるぶくろをとりに冒険をするんですけど、大人にとってはちょっとした距離でも子どもにとってはひとりでいくってすごいことに思えて、その遠くに行く感じが、読んでいてわくわくしました。このまさやくんが細やかに描かれているので、おとなになって読み返してもやっぱりすごいなあと思いました。また団地があったり、ちょっといくと山があったり…といったこの物語の舞台になっているところが自分の住んでいたところに近い感じもありました。私も子どものころひとりで遠くにいくことが好きで、ひとりでずっと歩いていったりとか、バスに乗って遠出してみたりとか。小学生の頃にヒッチハイクをしたりしたこともありました。今だったら、オススメしないですけど(笑)、まだのんびりした時代でした。

--ご自身とまさやくんが重なるところがあったのですね。

酒井さんそうですね。最後のほうもすごくいいです。あと、絵も好きだなって思っていました。すごくいい絵だなと。今、お子さんが読んでも古くないのではと思います。

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影響を与えられた絵本たち 3冊目

クマのプーさん プー横町にたった家
クマのプーさん プー横町にたった家
著者/編集:アラン・アレグザンダ-・ミルン, 石井桃子
出版社:岩波書店
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酒井さん小学生の時によみました。挿絵を含め、自分にとって大切な一冊です。 これは兄の本なんですけど、ずーっと本棚にささっていました。ディズニーのほうは読んでいたんですけど、こっちのほうは何か茶色いし、ディズニーの本とは違うなぁと手がでなかったんです。だけど小学校6年生くらいのときに、ふと手にとって見たらすごく面白くて!訳者・石井桃子さんの上等なユーモアもこの頃になると「分かるような感じ」がして、この面白さが分かる自分も嬉しかったですね。それからこの物語を流れるずっと終わらない昼下がりみたいな感じ、ちょうどこのころってそういう「終わらない昼下がり」時代から自分も出始めたころだったからこそいいなって。大人が思うのと同じように思え始めたのがもしかしらこの頃だったのかしれませんね。

それから、やはり絵がすごいなって思いました。ディズニー的なかわいらしさはないのですけど、なんでこんなに愛らしいのだろうって。樹の表現とかもかっこいいし、風景の感じも素敵。

--この頃すでに、自分はこういう絵が好きだというのが分かってきたころなのでしょうか。

酒井さんそうですね。あまり抽象的な絵より、少しリアルな世界がいいなと。リアルな絵でありながら、ちょっとファンタジーを加えた絵を描いていくのが自分では好きかなと思いました。中学生くらいに、自分でも絵本というものを書きたいなと思ってチラシの裏に描いたり、漫画を作ってみたくて漫画を描いてみたり新聞をつくってみたりしましたね。また、その頃宮沢賢治や小川未明に出会って、これに挿絵をつけて1冊の本にしたいと思ったこともありましたね。(のちに酒井さんは小川未明さんの絵本の挿絵をかくことになります)

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絵本作家として影響を与えられた作品

もりのなか
もりのなか
著者/編集: マリー・ホール・エッツ,間崎ルリ子
出版社: 福音館書店
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またもりへ
またもりへ
著者/編集: マリー・ホール・エッツ,間崎ルリ子
出版社: 福音館書店
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酒井さんこれは絵本を描き始めたか、まだデビューしたかはわからない、1冊書いたか分からない頃なんですけど、絵本の原画展で原画を見たんです。それまで『もりのなか』の存在は知っていたのですが、なんとなくこの茶色いカバーとかが好きじゃなくて、小さいころに読んだことがなかったんです。だけど、大人になって原画を目の前にしたら、ほんとうにすごいなと思って。こう、本当にただ一色で、白黒で書かれているんですけど、すごく引き込まれる豊かな世界があって。それを見たあとくらいから自分も黒でかいてみようかなと思うようになりました。「よるくま」くらいまでは白をベース描いていたんですけど、そのあとは黒をベースに絵をかくようになりました。

--原画で出会ったというのが大きいですね。お話もいいですよね。

酒井さんなんてことないお話なんですけど、子どもの頭のなかをのぞいているような。登場人物、動物などがそれぞれ愛らしくて、本当に。ハンカチ落としをしてひとまわりしましたとか、なんかおかしいんですよね。うさぎがはんかちをもって、みんな生真面目にはんかち落としをしているとか。静かに満ち足りた感じがいいなあと思います。

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