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新郎57歳、新婦27歳― 「北の国から」の演出家・杉田成道さんが、年齢差30歳での結婚 60歳を過ぎてからの3児の子育ての日々を、ドラマ制作秘話とともに紡ぎ出す 『願わくは、鳩のごとくに』

2001年5月、30歳も年の離れた夫婦が誕生した。新郎は国民的ドラマ「北の国から」の演出家、杉田成道さん。新婦は銀行員から一念発起し、医大に通う依里さん。二人の出会いは新婦がまだ小学生の頃。それから約12年。妻を癌で亡くした杉田さんの前に現れたのは、大学生になった依里さんだった――杉田さんが「北の国から」をはじめとするドラマの現場と、60過ぎての子育てに四苦八苦する自身の姿を描いた、初の単行本『願わくは、鳩のごとくに』。結婚、出産、家族の死という現実がドラマの中の生と死と交錯する。その事実に驚かされつつ今、“家族”の意味をあらためて考えさせてくれる1冊について、杉田さんに伺いました。

プロフィール

杉田成道さん (すぎた・しげみち)
1943年愛知県生まれ。67年フジテレビジョン入社。74年「夏の家族」で演出家デビュー。81年より22年間にわたりドラマ「北の国から」シリーズを手がける。98年「町」で第52回芸術祭大賞、90年「失われた時の流れを」でギャラクシー大賞受賞。その他の主な演出作にドラマ「ライスカレー」、スペシャルドラマ「少年H」、「海峡を渡るバイオリン」、「死亡推定時刻」、「駅路」等。舞台演出作も「陽だまりの樹」、「幕末純情伝」など多数。また映画監督として「優駿 ORACIÓN」、「ラストソング」に続く第3作目、「最後の忠臣蔵」(主演・役所広司)www.chushingura.jpが12月18日より全国公開される。(配給:ワーナー・ブラザース映画)
現在、社団法人日本映画テレビブロデューサー協会会長、株式会社フジテレビジョンエグゼクティブディレクター、日本映画衛星放送株式会社代表取締役社長。

インタビュー

願わくは、鳩のごとくに

−−『願わくは、鳩のごとくに』を読ませて頂いて、数々のドラマを演出されてきた杉田さんが、まさにドラマのような人生を送られてきたことを知り、とても驚きました。文芸誌en-taxi(扶桑社)の連載をまとめた1冊ですが、そもそも連載を始められたきっかけとは?
杉田さん年賀状に書いていた60歳を過ぎての子育て日記ですね。年賀状ってあまり読まれないでしょう。少しでも読んでもらえたらと思い、子育て日記を書き始めたのですが、それを読んだフジテレビの某専務が、「あれをen-taxiに書け」と。でも、飲んだ席での話だったので、まさか本気だとは思わなかった。ところがその翌日、彼の部屋に行ったら、en-taxiの編集担当者がいて、「締切はいつにしましょうか」と言われて「ええっウソだろー」と思ったのがすべての始まりです(笑)。
−−執筆作業はいかがでしたか?
杉田さん辛かったですね(苦笑)。自宅だと3人の子育てで手いっぱいで集中できないので、仕事を休んで、会社で書いたりしていました。当初は子育て日記を書く予定で、こんなに長く書くつもりはなかったんですよ。それがなぜか社内のおじさんたちに受けて、連載期間を延ばせと言われ、結局、7回の連載になりました。
−−新郎57歳、新婦27歳の結婚式から新婚生活、子育て、杉田さんや亡くなった奥様の驚くべき家族の歴史と、読んでいる間、目の前に映像が浮かぶようでした。
杉田さん 僕は作家ではないので、書けるとすればシナリオぐらいなんですね。だからできるだけ映像的に、あまり観念的にならずに、平易な言葉で書こうと思っていました。
−−30歳の年齢差を超えて結婚するまでの過程は、ドラマのようなラブ・ストーリーですね。
杉田さんでも結婚して9年、変われば変わるものです。昔はあんなにしおらしかったのに(笑)。
−− (笑)お子さんはおいくつになられたのですか?
杉田さん 小学校3年生と1年生、それから3歳です。今年は七五三が2人いましたね。

杉田成道さん

−−60歳を過ぎてから子育てをされて、ご自身が変わったと感じる部分はあるのでしょうか。
杉田さん僕らの世代は「男子厨房に入るべからず」と教えられたんです。今は何でもやらせて頂いています(笑)。朝起きるのは僕が一番先ですし、子供たちを起こして朝食を食べさせて……最初の結婚とはまったく違いますね。亡妻との間に息子がいますが、仕事が忙しかったこともあり、本当に何もやらなかった。まさかこれほど家事をやることになるとは(笑)。
年をとってからの子供というのは、やはり可愛いんです。僕の年齢だと、集まれば孫の話か病気の話ですから。僕にとっては、子供たちが生きる上での核になっていますね。
−−子育ての日常とともに「北の国から」の制作の舞台裏も描かれていて、長年「北の国から」を観ていたファンとしてはとても懐かしく、興味深かったです。
杉田さん今振り返ってみても、「北の国から」は本当に大変な作品でした。というのも、役と役者自身の境界線が非常に曖昧なんですね。そこが通常のドラマとはまったく違う。家族的というか、関わっている全員が「北の国から」そのものであるような。作者の倉本聡さんも「北の国から」のオーラに引きずられて書いたところがあったと思います。最初は違ったけれど、徐々に作品のエネルギーに引っ張られていった。たとえば純役の吉岡秀隆が髪を染めてしまい、お母さんが困っていると聞けば、それがそのまま純の姿になったり。中嶋朋子が蛍でいることを嫌がっていると知れば、今の自分から抜け出そうとする蛍の姿を描いたり。役者自身と役が混ざり合っている。ただ、そこは倉本さんという大作家ですからね。一度ご自身のフィルターを通して描かれていますが、役と役者がオーバーラップした状態をドラマにしていたんです。
−−だから観ている人間がドキドキして、夢中にならずにはいられなかったんですね。
杉田さん特に子役から演じてきた吉岡、中嶋の二人にとっては、まさに思春期のぐらぐらと揺れ動いている時期がドラマシリーズと重なっていましたから。
−−それにしても、「北の国から」で家族を描いた杉田さんが、初めて書かれた本もまた、家族のドラマだというのが面白いですね。
杉田さん まあ、偶然でしょうけど(笑)。僕自身、常に家族について考えていたわけでもなかったですし。テレビ局に入社した時も報道志望だったんですよ。
−−そうだったんですか!
杉田さん ただ家族をはじめ、人のつながりという意味でいえば、僕は肉体が消滅すると同時に、その人が消滅するわけではないと思っていて。その人間のエネルギーは大気に入り、それがすべてを動かしているのかなと。
−−この本を読むと、そうしたエネルギーのようなもの、次の世代へとつないでいく家族の力を強く感じます。中でも杉田さんがなぜ、30歳年下の依里さんと結婚したのか。その理由が亡妻の育ての母の人生とともに明かされる章では、三木のり平さんが義父になるまでのエピソードをはじめ、不思議な人間同士の縁に感じ入りました。
杉田さん亡妻の育ての母だったばあさんは、本当にすごい人でしたから。その話は最後に書こうと決めていました。
−−血のつながらない8人の子供を本当の母のように育て上げ、また93歳で亡くなる時の覚悟というのは、さすが「明治の女性」という気がします。
杉田さん強いですよね。「人間としてかく生きるべき」という信念がある。その分、耐える力も尋常ではなく、今みたいに「私の気持ちを分かって」などというのがまったくない。
「ならぬことはならぬ」という言葉について、少し書きましたが、昔は社会の決まりがあった。それは絶対の倫理であって理屈ではない。今、子育てをする上で、僕はここが欠けている気がしてならないんです。今は何でも子供に理解を求めるけれど、人間には理解を超える掟があると思う。昔から「お天道様に恥ずかしくないように」とはよく言ったもので、お天道様と対峙している意識があれば、弱い者いじめはできないんですよ。逆に言えば、生きる上で大事なのはそれだけだった。実に簡単だったわけです。

−−昔と今とでは、何が一番変わったと思われますか?
杉田さん今は自分のために生きろとよく言うけれど、それが分かりにくい。昔は人のために生きろ、自分は殺せ、という考え方だったから分かりやすかった。そうすれば人が喜んでくれて、自分もうれしくなるわけですから。あとはやっぱり、女性が変わったんでしょうね。子供を姉妹や愛する玩具にしようとしたり。自分を殺して母になろうという覚悟が無くなった。でも、自己を抑制できる人間に子供を育て上げるのは、とても大変なことであって。だからこそ、母親の役割をもっと自覚したほうがいいのに、今は何でも自分の幸せに寄せて考えてしまう。教育に対しても、どうしたいかというイメージがないから、情報に惑わされて迷ってしまう。男性にも言いたいことはたくさんありますが、母親というものの概念が無くなったことが、一番の変化ではないかと思います。
−−子育て日記、教育、生き方など、いろいろな読み方が出来る1冊ですが、どんな風に読んでもらいたいですか。
杉田さん書店の方から感想を頂いたりするのですが、まさかそんな風に読んで頂けるとは思っておらず、自分が一番驚いています(笑)。 この本を書いている間、カメラを通して、自分のこれまでの人生を追っている感覚がありました。それでまあ、僕の人生はこんなものかと。本が完成した日には、死んだ親父やお袋に親孝行できたかな、と思ったり。初めて本を書いた効果は、そんなところでしょうか(笑)。最終的には僕がいなくなった後にでも、子供たちに読んでもらえればいいなと思っています。

<コメント>
ちなみに『願わくは、鳩のごとくに』には杉田監督の最新作『最後の忠臣蔵』の割引券が付いています。「自分を抑えて生きる武士の話ですが、ぜひ女性に観て頂きたいですね。観終わった後、こんな清々しい生き方があるのかと感じてもらえるはずです」と杉田さん。家族の在り方、個人の生き方が問われている今、この本、そして映画を通して、その意味を考えてみてはいかがでしょうか。 取材・文 宇田夏苗

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願わくは、鳩のごとくに 杉田成道

ドラマよりドラマ?
「願わくは、鳩のごとくに」読みどころ
【1】新郎57歳、新婦27歳。30歳の年の差婚に至るまでのエピソードは必見です!世の女性は見習うべき!?
【2】60歳を過ぎてからの子育ての日々。お子さんとの時に笑える、時にしみじみするストーリーは必見です。
【3】ファンは嬉しい、「北の国から」の制作秘話がいたるところに!

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  • ★本到着と同時に一気に読みました。一言で言うと面白い。腹を抱えて笑ったり、涙したりして。北の国からの大ファンでしたから、「鬼」と言わしめたその人がどんな文章を書くのか期待したのです。上手い!作者の表の顔と裏(家庭)のギャップ。傑作です。

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