楽天ブックス 著者インタビュー

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ハリウッドでも映画化され、今や世界を恐怖に陥れている『リング』。その生みの親である鈴木光司さんの最新刊は久々のホラー小説だ。実話を元にした8つの短篇が収められた『アイズ』は前作『仄暗い水の底から』以来のホラー短編集となるが、その内容は単に恐ろしさだけを強調したものではない。恐怖の奥底にある深い彩りを見事に作品化している味わい深い短編集だ。「ホラー小説のイメージを変えたい」と語る鈴木光司さんに『アイズ』について聞いた。

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鈴木光司さん『アイズ』『アイズ』
謎の深夜タクシー、高層ホテルの窓に映る人影…。過去の因縁が現実に繋がり、震え上がるような恐怖を体験させる超・恐怖小説。「リング」「らせん」の著者が、「本当にあった怖い話」を取材して描いたリアルホラー。
500円(税込)
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鈴木光司さんの本!

鋼鉄の叫び『鋼鉄の叫び』
『光射す海』
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らせん
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リング
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プロフィール

鈴木光司さん (すずき・こうじ)
1957年静岡県生まれ。慶応大学文学部仏文科卒。『楽園』が日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞しデビュー。『リング』を第1作とするシリーズ(『らせん』『ループ』『バースデイ』)はいずれもベストセラーに。『リング』は日本で映画化された後、ハリウッドでもリメイクされ、世界的な話題を呼んでいる。ホラー小説のみならず冒険小説、ミステリも執筆。『光射す海』『神々のプロムナード』『生と死の幻想』『シーズザデイ』などがある。また、『父性の誕生』『パパイズム』などの著書では父親論を展開し、支持を集めている。

インタビュー

−−『仄暗い水の底から』以来、実に9年ぶりのホラー小説になりますね。刊行を待っていた読者も多いと思います。複数の雑誌に発表された短篇が収められていますが、最初から単行本にまとめることを意識されていたんですか?
鈴木さん最初の1本を書いた時から、これは1冊の本にまとまると思って、連作として書き始めました。
−−どの短篇も実話を元にされているそうですね。
鈴木さんそれも最初からコンセプトとして考えていましたね。  最初に書いた「鍵穴」という小説は、3〜4年前に知り合いから聞いた話が元になっています。その人が30年くらい前に経験したことなんですが、ある日友人が大学に来なくなった。おかしいなと思って、彼の下宿に行ってみると、外から見ると灯りはともっている。でも、ノックをしても反応がない。おかしいなと思って鍵穴からのぞいてみたら、白い手がおいでおいでをするように揺れるのが見える。なんだ、いるんだ、でもなんで出てこないんだ、と大家さんに頼んで合鍵で部屋を開けてもらったら……(以下はぜひ『アイズ』をお読みください)。

この話を聞いたことが、この『アイズ』というホラー小説集を書くきっかけになった。この話って小説になるなあ、と思ったんですよ。

その話はたまたま知り合いから聞くことができたんだけど、みんな誰でも怖い話を持ってるんじゃないかと思いました。『仄暗い水の底から』を書くきっかけになったのも、自分のちょっとした体験がきっかけだったんです。屋上の狭いスペースでたまたま女物のバッグを拾ったら、中からセパレートの水着が出てきた。意味がわからない。その意味のわからなさが怖いんです。

身近なところで、意味がわからない体験をしたことがある人はいっぱいいるんじゃないかな。
−−たしかに、説明がつかないことって怖いですね。誰でも、一つくらいはそういう経験をしているのかもしれません。
鈴木さんそうでしょう。「鍵穴」を書いた後に、ためしに周りの人に話を聞いてみたら、3本、4本と怖い話が集まってきたんですよ。「タクシー」という短篇もそう。お父さんを亡くされたばかりの方がタクシーに乗って、ドライバーに何を話しかけても応えてくれない。感じの悪いドライバーだなあ、と思っていたんだけど、目的地に着いて、降りるときに……(以下はぜひ『アイズ』をお読みください)。それで、すごく怖かったって。

怖い話というものは身近から拾わなくちゃいけないんですよ。我々はこうして日本に住んでいるから、どんなに怖い話でも舞台がニューヨークだったりすると、身近じゃないから恐怖が薄くなっちゃう。どこにでも起こりうる話でありながらも、人間関係を丁寧に描くことによって、じわじわと恐怖を盛り上げていく。それがホラー小説の王道だと思いますよ。
−−読んでいる時に後ろを振り返るのが怖くなるような……そんなリアリティーですね。鈴木さんの小説は登場人物の人間像を丁寧に描かれていることもあって、とてもリアルに感じられます。
鈴木さん人間を描くという部分では絶対に手は抜けませんね。その反対に、スプラッターのような残虐なシーンは描かない。それは邪道ですから。
−−『アイズ』を読んでいると、人間の奥底にある恐怖を引っ張り出されているような気がしました。
鈴木さん読者の方一人ひとりの心の中にある恐怖を、小説を触媒にしていかに引き出すか。それが大事なことなんですね。
−−『アイズ』に収められた8本の小説の中には、戦国時代まで遡って描かれている作品(「櫓」)もありますね。
鈴木さん『アイズ』に収められた作品は大きく2つに分けられるんですよ。1つは身近な人から聞いた怖い話をヒントにしたもの。もう1つはぼくが実際に現場に行って、雰囲気を感じ取って書いたものです。 「櫓」という小説は、3〜4年前にテレビのワイドショーでも話題になった岐阜の幽霊マンションに取材に行った経験が元になっています。行ってみたら何を感じるんだろうと思ってね。  現地で住民の方に「ラップ現象とか本当にあったんですか?」と取材したりもしました。その時、どうしてこういうことが起こるんだろうなあ、と考えたんですよ。  目の前は見渡す限りの田んぼ。そこに、3棟か4棟マンションが建っているんですが、このへんにはないモダンな建物なんですよね。ぼくは心霊現象にはそれほど興味はないし、怖くも感じないんだけど、どうしてそういう怪現象が起きるかというと、やっぱり土地のせいなんだろうなあ、と思ったんですよ。代々この「場」に伝わる何かがあると仮定したら、戦国時代まで遡らざるを得なくなってしまった。
−−鈴木さんは冒険小説やファンタジーなどの分野でも活躍されていらっしゃいますが、ホラー小説については、意外と寡作ですね。
鈴木さん絶対に質の高いものを書きたいと思っているからです。ぼくはホラー小説というジャンルが貶められていると思っているんです。だからこそ、ホラー小説に質の高いものがあるということをアピールしたいですね。ホラー小説というジャンル全体の底上げに貢献できるような小説を書きたい。ですから、濫作はできないですね。
−−質の高いホラー小説とは具体的にはどのようなものだとお考えですか?
鈴木さん読者の想像力を刺激して「怖い」と感じてもらえる小説です。「恐怖」を感じるように書くということは大変に高い技術が必要なんですよ。残酷描写のような安易な方法で描くのではなく、心理的な恐怖を感じられるようなものは特に難しい。ホラー小説を読むことで想像力が刺激されます。頭に栄養を与えることなんだということを知ってほしいですね。
−−心霊現象にはそれほど興味がないとおっしゃっていましたが、超自然的な現象についてはいかがですか?
鈴木さん心霊写真を見てキャーキャー言う気は毛頭ないんだけど、超自然的な現象については科学という観点から興味がありますね。

現代の科学が実際に起こる現象のすべてを説明しうるなんてことはありえないんですよ。無理なんです。100年前に比べて、さらに無理だということが証明されています。古典力学のときは、科学がすべて説明し尽くすだろうと思われていたけれど、いまはまったくわからないことだらけ。

ノーベル賞級の科学者が「心霊現象があるかもしれない」って平気で言う時代ですからね。昔だったら職を奪われるような発言ですよ。物質が先か精神が先か。そういう議論でも、今やどっちが先でどっちが後かもまったくわからない。物理学の世界なんて、まるでフィクションの世界ですよ。
−−科学万能と思われていた時代から、どうやら科学も怪しいとなってきた時代ですね。現代人が感じる漠然とした不安をホラー小説というかたちで描かれていると感じます。
鈴木さんそういう側面もあるでしょうね。ホラー小説というジャンルでやれることはもっとたくさんあると思います。そのためにもホラー小説のイメージをアップさせたい。ホラーと聞くと「残酷なのは苦手」と敬遠してしまう読者の方も多い。でもぼくはもっと広い層の方に読んで欲しいんです。ぼくのホラー小説はマニア向けじゃないんですよ。
−−たしかに人間の「恐怖」という感情は誰もが持っていて、忌むべきものではないはずですよね。先ほどお話にも出た「タクシー」という短篇小説は、怖いけれど、温かいものも流れています。
鈴木さんそうですね。ぼくは基本的に人間を肯定的にとらえるタイプです。そういう人がホラーを書くと、読後感がそんなに悪くならないんです。これはホラー小説としては珍しいと思う。ホラーに対して先入観を持って毛嫌いしていた人にこそ読んで欲しいですね。
−−今日はありがとうございました!
「ぼくみたいなまっとうな人間がホラー小説を書いていることが不思議でならないんですよ。ぼくは本当に太陽と青空の下が似合う男なんですよ」と笑顔を見せる鈴木さん。確かに、目の前の精悍な男性が『リング』シリーズで世界中を震え上がらせた方だとはにわかには信じがたい。しかし、人間の「恐怖」という感情に焦点を合わせるホラー小説は鈴木さんならではのもの。『アイズ』は、ホラー小説初心者の方にも安心して勧められる作品だ。【インタビュー タカザワケンジ】

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