楽天ブックス 著者インタビュー

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アトランタ、シドニー、アテネと3つのオリンピックで5個のメダルを獲得した武田美保さん。その華麗な演技で多くの人々を魅了する一方で、実は現役時代から、身体の柔軟性に悩んでいたのだとか。そんな武田さんが現役引退後、より美しい身体づくりを目指して始めたのがピラティスでした。本場アメリカの大学で学び、誰でも気軽にできる、エクササイズの方法を追及した結果生まれた「武田美保のピラティス ライフ」には、トップアスリートとしての経験に基づいた、ボディメイクの秘訣が満載。さらに、健康な身体と心を兼ね備えた女性としての生き方のヒントも隠されているのです。

プロフィール

武田美保さん (たけだ・みほ)
1976年京都府生まれ。5歳から京都踏水会で水泳を始め、7歳で同会のシンクロコースに入門。13歳の時に井村シンクロクラブに移籍しジュニアの日本代表に。1997年より立花美哉選手とデュエットを組み、日本選手権7連覇を達成。アトランタ、シドニー、アテネの3つのオリンピックで銀、銅合わせて5つのメダルを獲得した。引退後、ネバダ州立大学発行のピラティスインストラクター公認資格を取得。現在は講演、音楽を使った水中エクササイズ「シンクロビクス」の指導、水着デザインと幅広く活躍し、今春からは「筋肉ミュージカルにも出演。
オフィシャルページ: http://www.mihotakeda.net/

インタビュー

−−シンクロの選手としてさまざまなエクササイズをやられてきたと思うのですが、ピラティスは、どのようなきっかけで始められたのですか?
武田さん手時代は柔軟体操が中心で、特別なエクササイズは取り入れていませんでした。ピラティスとの出会いは、2003年に、ピラティスをやっている振付師の方と知り合う機会があって、「身体を柔らかくしたければ、しなやかに筋肉をつけることのできるピラティスがいい」と紹介されたことがきっかけです。というのも、私はシンクロの選手のわりにすごく身体が堅くて、シンクロを始めた7歳の頃から、それを克服することが課題だったんですよ。
−−アテネオリンピックをはじめ、武田さんの華麗な演技からは、身体の堅さなんてまったく感じられなかったのですが……。
武田さんもちろん、一般の方に比べたら柔らかいのかもしれません。でもシンクロで美しくみせるには、足の開脚といっても180度では不十分で、200度ぐらい開かないとダメなんです。しかも全方位的に、肩、腰といった身体のあらゆる部分が柔らかくないと美しくみえないのです。これは両親に感謝すべきことでもありますが、私の場合は生まれながらに関節まで頑丈すぎて、柔軟性が足りなかったんですね。選手時代、ロシアや中国で英才教育を受けてきた選手たちを横目に、偶然、「やってみたいな」という気持ちでシンクロを始めた私には、越えられない壁があるのかもしれない、と感じることもありました。でも、ピラティスを始めたら、選手の時よりも身体が柔らかくなってきたんですよ。
−−ピラティスといえば、「ハリウッドのセレブに大人気」という評判で日本に広まってきましたが、一体どこで生まれたものなのですか?
武田さんもともとは第一次世界大戦の頃、ドイツ人のジョセフ・ピラティスという人が考案したものです。彼は戦争で捕虜になったのですが、そこで収容所という劣悪な環境に負けない身体を作るための方法を編み出し、それを使って負傷兵などのリハビリを試みたんですね。すると、病気やケガで身動きが取れなくなった人たちがみるみるうちに良くなったそうです。その後、アメリカに渡ったピラティスさんが開いたスタジオに、ケガを抱えたダンサーたちが通うようになって、広まっていったようです。私にピラティスを紹介してくれたのは、元シンクロスイマーの男性だったのですが、彼は身体が柔らかすぎて大ケガをしたことから、リハビリのためにピラティスを始めたのだと言っていました。
−−たんなる流行ではなくて、非常に実践に裏づけされたエクササイズなんですね。シンクロ選手を引退してから、ピラティスを学ぶためにアメリカに留学されましたが、引退後には、ピラティスをやろうと決めていたのですか?
武田さんピラティスを紹介されて以来、ずっとやりたいと思っていましたが、アテネオリンピックを控えていたこともあり、個人的な時間が取れなくて、結局始めたのは引退してからでした。ただ、選手時代は、ケガで1日練習を離れるたけでも「早く戻りたい」と願う日々だったので、そうした時間を欲しいとは思いませんでした。そのせいもあって、アテネではすごく気持ちよく泳ぎ終えて選手を引退することができました。でも、シンクロ全体を見渡した時、「自分にはまだやり残したことがあるんじゃないか」と感じたんです。

シンクロはスポーツ性とエンターテイメント性を兼ね備えている数少ない競技だと思いますが、ロシアが台頭してからは、どこまで速い動きができて、どれだけ長く潜っていられるか、というスポーツ性がより強調されるようになりました。音楽性を追求したりすると、技術的な得点に結びつかない。その両方の兼ね合いがとても難しくて、選手の間はトップを取るために、スポーツ性を追わずにはいられませんでした。

もちろん、そうしたことに面白さは感じましたが、本来、私自身がシンクロで好きなのは、自己表現の部分だったんですね。引退を考えた時に、シンクロを始めた頃、水の中で音楽を合わせたりするのが、「すごく楽しい」と感じていたのを思い出し、「今度はそれを追求してみたい、それをやらないかぎり、自分のシンクロは終わらない」と思いました。そうした気持ちから、「プロとしてショーに出て泳いでみたい、そのために、もっとしなやかな表現のできる身体を作りたい」と、ピラティスに取り組むようになりました。実際にやってみると、ピラティスはシンクロに似ているところがあるんですよ。
−−どんなところが似ているのでしょうか?
武田さん重力のない水の中で、シンクロの回転や倒立をするには、身体の中心軸をまっすぐにできなければなりません。身体の中心を感じる力が弱いと、上手く回転したり、倒立したりすることが出来ないからです。ですから、身体のコア(中心)の筋肉を鍛えることはとても大事です。身体のコアをイメージしてエクササイズするという意味では、ピラティスはシンクロと共通していると思いますね。
−−武田さんがこの本の中で紹介されている、<ボディバランステスト>をやってみました。目を閉じて、十字の上を50回足踏むと自分の弱点がわかるというものですが、私の場合は自然に立ち位置が下がっていく、「後傾タイプ」という診断でした。
武田さん自然に後ろに下がる人は、背筋が縮まっている傾向があります。それで腹筋の力が弱まってしまっているんですね。
−−腹筋の力が弱まっているんですか……(苦笑)。こうして自分の弱点を知り、必要なエクササイズを組み合わせることのできる、「オーダーメイド・ピラティス」の発想が面白いですね。
武田さんなんとなく、という気分で一通りのエクサイズをすべてやるよりも、自分の弱いところをピンポイントで鍛えたほうが、効果は実感できると思います。背中のゆがみが矯正できたら、次は腹筋のエクササイズを多めにしてと、自由に組み合わせることができるという仕組みは、この本を作る上で大切にしたところです。
−−ピラティスの呼吸法も試しましたが、これだけでもかなりリラックスできますね。
武田さん呼吸が身体に与える影響はすごく大きいんですよ。赤ちゃんの時にはストレスがないので、大きく肺呼吸しています。ところが、大人になるにつれて、いろいろな環境ストレスが出てきて、息を吸うことのできる範囲がどんどん狭まってしまうのです。心のストレスや身体のゆがみによって、肺活量も変わってきます。ピラティスの呼吸法を取り入れるだけでも、身体が活性化されるので、集中力がなかったり、眠れなかったりする時にも効果がありますよ。
−−ピラティスを続けていることで、ご自身も身体の変化を感じていますか?
武田さん選手を引退して運動量が減ったのに、代謝が良くなったのには驚きました。身体にゆがみがあると血液が滞ってしまうので、身体に溜まった毒素もうまく排泄されなくなるのです。ピラティスの呼吸法を取り入れると、内臓が刺激されてお通じもよくなるので、身体が軽くなります。デトックス効果があるので、パッと見た印象が変わりますよ。代謝がよくなるので肌ツヤも出てきますね。それに呼吸法をやるだけでも気が休まってきて、動きにも無駄がなくなります。本来あるべきところの骨格に戻すために必要な筋肉がついて、キレイな筋肉の形が作られていくので、姿勢も良くなります。
−−武田さんご自身は週にどれぐらいやられているのですか?
武田さん週に2回は長くやる時間をとりますが、あとは疲れたときにほぐしたり、足のむくみをスッキリさせたり、という風に生活に取り入れています。1度にたくさんやらなくても、空いた時間にやるだけでも身体はだいぶ変わります。少しずつでも、「昨日より楽になった」と思えたらうれしいですよね。その気持ちが「美しい姿勢になりたい」といった、前向きな発想につながっていくのではないでしょうか。
−−選手時代に続いて、新たな人生にも前向きに取り組んでいらっしゃる印象を受けるのですが、引退してから気持ちの変化や葛藤はありましたか?
武田さん引退後に一番苦労したのは、冗談みたいな話ですが、陸の生活に慣れることだったんですよ(笑)。21年の競技生活の中で、長い時には1日10時間以上を水の中で過ごしていたので、陸の上だとすぐに貧血になるし、頭も痛くなって、アテネの後3ヶ月は身体が辛くてしかたありませんでした。

だから、陸の上でどこまで自分が表現できるのかは未知数ですね。精神的な面では、選手時代は試合といった明確な目標があったので、自分の人生についても、ある程度のメドを立てることができました。それがある意味、安心感につながっていたんです。これからは「こうなりたい」ということを、自分自身で選びとっていかなければならないので、あらゆる方面で自分の能力を磨いていくつもりです。まずはこの春、初めて「マッスルミュージカル」に出演させて頂くので、その舞台を通して「人間ってここまでできるんだ」というのを表現したいと思っています。
−−最後に、これからピラティスを始めようとしている人にアドバイスをお願いします。
武田さん 私自身、キレイになる努力はずっとし続けたいと思っていますが、ピラティスは年齢に関係なく、誰でも続けることができるエクササイズです。何より、女性をトータルでキレイにしてくれます。自分の身体の変化を感じることで、感性もどんどん磨かれていくので、いろいろな刺激をキャッチしやすくなると思います。そうした身体と心の変化を感じながら、ピラティスを楽しんでいただけたらうれしいですね。

健全な身体が何よりも美しい――健康的な曲線美の持ち主である武田さんの印象は、そのひと言に尽きる気がします。今回の取材をきっかけに、武田さんの「ピラティス ライフ」を実践してみたところ、呼吸法をやるだけでも肩の力がふうっと抜けて、気分がリフレッシュできるのにビックリ。数あるエクサイズを最初から最後までや通さなくても、腕、足、と気になる部分をピックアップできる構成は、忙しくて時間が取れない、ピラティスをやろうとしたけれど挫折してしまったという方におすすめです。これから薄着の季節、ピラティスで魅力的な身体のラインを手に入れれば、夏のオシャレも楽しくなるはずです。
【インタビュー 宇田夏苗】


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