楽天ブックス 著者インタビュー

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 本好きが嵩じて、古本屋さんと結婚してしまった田中栞さん。子供を背負って日本全国の古本屋を訪ね歩き、ごっそりまとめて本を買い歩く(その姿をウラヤマシイと思ったあなたは相当な本好きだ)。そんな古本屋行脚とご主人の経営する『黄麦堂』の危機を救った『古本屋の女房』を出版した田中さんに、本好き談義をくりひろげていただいた。

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田中栞さん『古本屋の女房』『古本屋の女房』
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プロフィール

田中栞さん (たなか・しおり)
■田中栞 昭和34年横浜市生まれ。横浜の古書店「黄麦堂」夫人。三笠書房、汲古書院の編集者を経て、現在、平凡社などの仕事をするフリーの校正者で2児の母。日本出版学会会員、日本校正者クラブ会員、日本書票協会編集顧問等。

インタビュー

−−読ませていただいて思いましたが、古本屋ビジネスのきめ細かさは、たいへんなことだ、と思いました。
田中さんうちの主人(黄麦堂店主)も、もともとは新刊書店出身なんですよ。ただ新刊書店は、やろうと思っても開業資金がたくさん必要です。古本屋は安くすみます。そのうえ、過去に出版された書籍の蓄積がたくさんあるし、絶版になっている本も扱えるなど、選択肢は多いんです。それで、独立しようとした時に、古本屋業界にはいったわけなんです。ただ、逆に古本は仕入れがむずかしいですね。思ったようには本が手にはいらないんですね。売れるとわかっていても仕入れられないし、不況の時代に入ってからは本は売れないので、結局そういったことが尾をひいて、いまは実際の店舗をたたんで、ネット販売の「絶版文庫販売の黄麦堂」になってしまいました。
−−その顛末は、本を読むとよくわかりますね。いまお話にでた仕入れのことですが、古本屋の場合は、 市場で仕入れてくるだけでなく、本の価値を判断してほかの店から買って自分の店で売る、いわゆる「せどり」がありますね。田中さんが、 子供をベビーカーに乗せて、日本全国の古本屋をせどりして歩く描写は圧巻でした。
田中さんあの時期だからできたことだと思います。今買いつけにまわっても、あれだけの本をみつけることはできないでしょう。なにしろここ数年で、古本屋の状況はかなり変わってしまいましたから。新刊書店以上に変化していると思います。せどりで買えるような本も激減しています。
−−日本各地の古本屋さんガイドのようにも読めますね。緻密なメモをとっていらっしゃるし、店の様子のイラストも描かれている。
田中さんメモも写真もたくさん撮っています。プロじゃないので、資料がないと書けないですから。いろんな角度から撮影した写真の中から、自分でイラストをおこしました。私が行きたいところは本屋さんばっかりなので、店内はどうなっているのか、詳しく知りたい、記録を持っていたい、溜めておきたいという欲求があって。
−−本屋オタクなんですね(笑)。
田中さん子供の頃からの本好きが発展した本オタクだったんですが、そのうち、本が置いてあるところはどんなところか、どのようにして作られるのか、素材は何でできているのか、作っている人はどんな人なのか、そんないろいろな興味が割り込んでくるんです。私の本業は、出版物の誤字や誤記を訂正したりする校正者ですが、本屋さんを紹介する記事や、印刷関係、製本など本の周辺の業界のことを紹介する仕事もけっこうあるんですよ。
−−ご主人の『黄麦堂』はネット販売のみなんですか?
田中さんそうです、現在はネットの古本屋です。倉庫として借りたところは、人が来れば、「どうぞ」って入れるようにはなっているんですが、立地として人がフラッと立ち寄る場所ではないですしね。知ってる人はいらっしゃいますけど…。15坪ぐらいの倉庫で、商品の整理や、発送・サイトの管理をやっています。
−−本の巻末近くの、離婚を考えられたあたりの顛末は、本当にたいへんそうでしたね。
田中さん知識がそんなにない、不動産トラブルでしたから、家までとられるんじゃないかっていう危機感がありましたね。小説なら、最後に「めでたしめでたし」で終わるんでしょうけれど、人間は生きてる限り人生に終わりはありませんから。そのあとも生活は継続しています。続編ももう決めてあるんですよ、『古本屋の古女房』っていう(笑)。 「胡蝶掌本」という豆本のシリーズが出版されていて、そこでひとつ書くのが決まっています。それから、この本を作る途中や裏側で、制作や売り込みに行った書店の様子がどうだったかとか、夫婦関係の後日談や店についての話も書かないといけないでしょうし。
−−そんな本好きな田中さんにお聞きしたいのですが、よく知り合いから、本をプレゼントしたいんだけど、どんな本がいいですか?って聞かれるんです。
田中さん贈り物は相手が喜ぶものを贈るのが一番ですよね。本は、個人の好みがありますから、それがわからない時は図書券が無難です。もしくは、本人に欲しい本を聞く、とかね。好みがわかっている人なら、その人の趣味や、興味があることに関する本が喜ばれるでしょう。子供がいるから子育ての本、て決めつけないで。本に限らず、相手の方のツボにはまるコダワリがあるものを贈るべきですよね。ふだんからコミュニケーションしつつ、想像しておくといいんですよ。もっとも私の周辺には、本にドップリな人ばかりなので(笑)なにも悩みませんけどね。

私がこれまでもらってうれしかったのは、自分が研究している本をもらった時です。私は書誌学を研究していまして、この書誌学というのは、同じ本を何冊も比べて、ちがう部分を探し出し、出版の時にどうだったのか、などということを本から解明していく学問なんです。何回も印刷されたとか、組み直された本は、それだけ需要があった、重要なものだったということになるんです。その規模がどのくらいだったのかっていう全体像を解明するのが書誌学なんです。興味のある方は、林望さんの『書誌学の回廊』とかいかがですか。
−−では、最後に、古本屋に本を売るコツを教えてください。
田中さんそうですね、どうせ売るなら、気軽に持っていかれたらいいんじゃないですか。本棚に新しい本を入れる場所を作ると思って、リサイクルでもあるんだし、ダンボール何箱もためて死蔵しないうちに、次の読者に渡すと思って。新刊を売るのは、早いほうがいいんですよ。懇意な古本屋ができれば、そこの店主がきっと、いろいろなことを教えてくれると思います。
−−今日はありがとうございました。

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