楽天ブックス 著者インタビュー

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ほんとに食べているのかわからない、ブームに乗っただけのようなお取り寄せ本があふれる昨今、ワインのソムリエとしても食通グルメとしても有名な田崎真也さんが厳選した究極のお取り寄せ本がでた。『田崎真也の絶品お取り寄せ手帖』だ。目次を読んではお腹がなり、ページを開けばホッペタが落ちそうなお取り寄せ食材の数々。田崎さんに美味についてのこだわりの数々を語っていただいた。

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田崎真也さん『田崎真也の絶品お取り寄せ手帖』『田崎真也の絶品お取り寄せ手帖』
テレビのロケ先や旅先で、田崎真也の足と舌で確かめて見つけたあの味、この味。きじの卵、三陸海宝漬、いかしゅうまい、若狭甘鯛、一夜干し、塩もずく、ワイン豚など87品を紹介する、極上のお取り寄せ本。
1,470円(税込)
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田崎真也さんの本!

言葉にして伝える技術 ソムリエの表現力『言葉にして伝える技術 ソムリエの表現力』
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プロフィール

田崎真也さん (たざき・しんや)
1958年 東京生まれ。1977年フランスに渡航。1983年、全国ソムリエ最高技術賞コンクール優勝。1995年、世界最優秀ソムリエコンクール 優勝。 東京・愛宕山の田崎真也ワインサロン、フレンチレストラン エス(S)など4軒のレストラン・バー経営。テレビ、雑誌などでも活躍。ワインや酒・食に関する著書多数。

インタビュー

−−本を開くと、いきなり「だちょうの卵」(p7)のお取り寄せが紹介されていて、ビックリしました。
田崎さんご紹介した中で一番扱いに困るのが、だちょうの卵でしょうね。困るというか、まず、どう割るのわかりませんね。だちょうの卵は、エッグアートっていうんですか、タマゴのカラでいろいろな細工している人たちの間では、一番、細工のし甲斐がある卵なわけで、そこでの相場はカラだけで6000円くらい。中身なしですよ。この本でご紹介しているのは、中身がはいって5000円。だから、お安いですよ。こんな勧め方をすると、まるで、テレビショッピングみたいだね(笑)。
−−カラの割り方も紹介してらっしゃいますね。
田崎さん小さく穴を開けて、棒をつっこんで、中身をドロドロの状態にして出す方法ですね。カラが貴重だから、ああやって割らないと、もったいないんですよ。スクランブルエッグやオムレツにするにはいいですけど、目玉焼きはちょっとたいへんですね。目玉焼きの場合には、全部、パカッと割らなきゃいけないですけど、そうすると、カラが使えないじゃないですか。茹でたまごもいいけど、なかなかやれないですよ。茹であげるのに2時間かかります。そのうえ、カラを割るのがもっとたいへんです。厚みが2ミリもありますからね、そんじょそこらでは割れない。大人が上に乗っても大丈夫なんじゃないかな。
−−昔読んだ本ではトンカチで割ってました……。しかし、こんな変わった卵を、田崎さんは普段も使われたりするんですか?
田崎さん使います、使いますね。けっこうウケますでしょ。パーティーなんかでも、おもしろいじゃないですか。味は、次のページでご紹介している「きじの卵」の方がウマイですけど。きじの卵は季節がむちゃくちゃ限定ですので、無い時期は、身のほう、つまりきじ肉も売っているので、そちらをお試しください。お鍋にしたり、いろいろできますよ。
−−ほんとに、目次のご紹介されている品物のリストを見ているだけでも、ドキドキしてきますね。珍しいものや、絶品系の品物がたくさん紹介されていて、すぐ頼んでみたいと思わせられます。どんなお考えで、これらの食材を選ばれたのですか?
田崎さん取り寄せのメリットというのは、なかなか近所では買えない、その土地に行かなければ手に入らない、というところですよね。東京はマーケットとしては大きいですから、たいていの物を売っている。ですので、東京の人が「デパートに行けばとりあえず買えるわ」と思うレベルでは、つまらない。基本的に、デパートに売っていないものでないと、取り寄せのメリットってあんまりないわけです。

それからまた、最近は、取り寄せ関係の書籍がたくさんありますが、どれを見てもけっこう同じような路線にいきがちですね。買いやすい店が限られている。しかも、完全に出来合いの物や、なんとかセットとかが多いので、そういったものとはちょっとちがった、かわったものが取り寄せられたらおもしろいだろうと思ったのです。だから、きれいにパッケージして地方発送可能ってPRしてるとこじゃなくて、なんとかできませんか?って頼んで送ってもらうようなところがほとんどです。取り寄せを職業としてる店ではなく、純粋に、地元だけで販売している品を宅急便で送ってもらうようなところが大半です。

もうひとつの視点としては、自分の店(注:田崎さんが経営するレストランやバー)がありますでしょ。うちの店で扱う素材って、基本的に取り寄せなんですよ。業者さん探して、築地の市場や、大井の八百屋さんから持ってくるとこに頼んじゃってる店がほとんどでしょうけれど、ほんとうは産地を調べて、産地の人とコンタクトをとって、直接送ってもらって、それを使うというのが理想だと思います。タマネギ1個必要というときは、スーパーに買いにいくこともありますが、ぼくの店のメインの食材は、市場や、全国の品を扱っているいわゆる八百屋さんや肉屋さんから買わずに、それぞれバラバラに買いつけています。だから、店の仕事的にはぜんぶ取り寄せ。なので、その中から紹介させていただいているのもあります。
−−もうひとつ、すごいなと思ったのが、レシピです。レシピというより食べ方のヒントというのでしょうか。珍しい品や、どうやって食べるとおいしいのかなぁというものに、こう使ってみたら、とか、こうして食べるとおいしいよ、というようなアレンジを載せていらっしゃる。しかも、普通の料理の感覚だとでてこないような、ロースハムとジャムなんていう組み合わせが斬新ですね。
田崎さん「ふらのジャム」(p74)ですね。いけますよ。ロースハムのブタ肉は、ソテーしてリンゴジャムをソースに使ったり、甘い味と相性がいいんです。生ハムとメロンが定番みたいに、ね。

「スモークドアンチョビの天ぷら」(p67)とかもご紹介しましたが、せっかくお取り寄せいただいたものですから、責任上、使い方や作り方がわからないといけませんから(笑)。そのまま食べてもおいしいんですけど、なにか料理をしていただこうと。この本のために考えたオリジナルのレシピです。

「スーチカとアスパラガスの炒め物」(p64)も美味しいですよ。スーチカは、これ、なんにでも使えます。紹介した食べ方だけでなく、いろいろ工夫してみてください。スーチカの「スー」は塩、「チカ」は漬けるって意味で、沖縄の言葉なんですけど、ブタの塩漬けのことです。なにしろ美味しいです。
−−価格的にも、珍味の割にはお手頃というか、高いのもありますが、自分のために買える価格ですね。
田崎さん高いといえば、フォアグラ(p10 「フォアグラ レア・スモーク」)が高いかな。でもこれ、食べるとちがいがわかりますよ。フォアグラの生のブロックが、今、1キロ7000円ぐらいしますかね。それとあまり値段はかわらないですけど、でも、生のものは料理しないといけないですからね。生のフレッシュな、良いフォアグラを買って、自宅でかなりがんばって料理したとしても、ぜんぜんレベルがちがいます。このレア・スモークの冷凍をスライスして、溶けるか溶けないかのタイミングで食べるのがウマイんですよ。ルイベ感覚ですね。絶品ですよ。

「キリタップ産 時不知鮭」(p47)なんかも、これは百貨店なんかにも卸してることがあるみたいですが、その値段より安く買えます。

p13でご紹介している「へその味噌煮」の、へそってわかりますか? かつおの心臓です。ハツってことですかね。運動量が大きい魚は、やはり心臓がしまってるんでしょうね。一匹から一個しかとれないですから、一袋にするのがたいへんなんです。十何匹分ですよ。だいたい、一番うまいパーツは、マグロ漁とかカツオ漁とかやってる人が、食べてしまうんです。トロとかはお金にするところで、お腹は水揚げされたところでさばいてしまうので、普通の市場とかには出回らない。だから、漁港じゃないとないものです。食感は、焼き鳥の砂肝よりはもっと柔らかくて、ほんとに鶏のハツと似ていますが、あそこまで油っぽくないです。風味はもうちょっと血合っぽい、レバーのような香りがします。それがまた慣れるとね……。静岡でも製品化しているところはほかにないんじゃないですか? この店のオリジナルですよ。
−−その「へそ」を、「パスタの具にしてもなかなかいけます」という食べ方をご紹介されていて、ほんとに食べ尽くされてる方じゃないとでてこない文章ですね。本文そのものも、田崎さんの語り口がちょっと感じられ、サラッと短めで読みやすいですし……。
田崎さん食べ物と飲み物に、そうそう能書きをつけても、ですね(笑)。それより、食べてもらうほうがいいでしょう。どれでもいいからひとつ、取り寄せてもらうと、わかっていただけると思いますよ。お店もいっしょですが、一回目の印象でよく思っていただけると、何回か通ってみようかなと思いますよね。タイミングもありますし、もちろん食べ物ですから、好みもある。とくに調味料ってむずかしくって、嗜好のちがいや、地方によるちがいも大きいですから、全部が全部、すべての人にどうぞってわけにはいかないでしょう。でも、せっかくですから、ひとつは取り寄せていただければ、ね。

 自分で取り寄せて常備して使っているものは、調味料が多いですね。調味料って大好きで、すごく興味もあるんですけど、全部紹介していたら、調味料本になっちゃいますからね。一部しか紹介してないんです。実際には、もっとたくさんあります。出来合いのものを取り寄せるより、素材を買って、自分で料理するのが基本ですから。
−−そうですね、食通のための大人のグルメ本という印象ですね。食材もバランスよく、ごはんのおかずにも、酒のつまみにもよさそうなものばかりですね。
田崎さんぼくが魚が好きなので、魚関係が多めですし、どっちかっていうと、ノンベ派向けかな? 酒がなきゃってかんじですね(笑)。とはいえ、これはこの酒って決めつけて、銘柄を載せてしまうと、そのお酒を探す方がたいへんですからね。後書きにも書きましたが、飲みたいお酒から料理を発想しようということも書いています。良い素材があって、これから調理をするのであれば、飲むお酒を決めてから、考えたほうが美味しい組み合わせにできますからね。

 取材先の造り酒屋さんなんかに教えてもらった食材もありますよ。焼酎や日本酒の造り酒屋さんとか、酒を作っている人はうまいもんを知っているんですよね、その土地のね。
−−そういった蓄積があるからできた本なんですね。
田崎さん雑誌やテレビなどで、食べ物の取材に行くと、ほんとうに美味しいものに出会います。普通は、ただ、それで終わってしまいますが、こういう機会にふたたび紹介できたのはいいことですね。いろんな機会に、いろいろな土地に行って、いろんな方々とお会いする。もちろん、その後、自分で買うのもありますけど、だんだん期間がたってくると「そういえば、あの人、どうしているかな。美味しかったな」と思いだす方がたくさんいらっしゃる。この本を作るにあたって、あの県にあんな人がいたなと、思いだしながら、食材を並べることができたのも、良かったですね。

たとえば、「鯉の甘露煮」(p12)。ほんとに手作りで、おばあちゃんが、酒と醤油だけで、水はいっさいなしで作っている絶品です。

それから、「磐梯山噴火味噌」(p96)。辛いですが、なかなか応用範囲が広い調味料で、コチジャンと同じように使えばいいんですけど、もっと普段の日常的な食べ物に応用しやすいですね。これもロケで現地(福島)に行った時に、みつけたんですね。食べ物番組って収録が長いんですよ。自分で食べている時間は、コメントを言ったりして15分くらいで終わっちゃうんですけど、インサートっていうんですか、食べている雰囲気を寄りで撮る、「箸いれ」などの撮影がめちゃくちゃ長い。長いと2時間ぐらいかかりますか。それで、その間、ブラブラしていて、みつけたんです。味見して、うまいなって思って、話を聞いて、メモしておいて、後で使ってみようって買って。

キムチ(p36)もおもしろいですよ。滋賀県にはキムチを作っている個人商店がたくさん集まってるとこがあるんですが、なんで滋賀県でキムチなのか、ほとんどの人が知らないことですよね(注:理由は本文をお読みください)。レストランのコンサルティングで行った時に、夏祭をやっていて、おばちゃんたちが一生懸命売っていた。それをみて、なんで?って聞いてはじめてわかったことです。こういう本に紹介されるのは、初めてなんじゃないかな。

石垣島のクリームチーズ(p35)は、最近始めたばっかりです。ヨーロッパのいいチーズって、牛に乾燥した草を与えないんですよ。緑の牧草だけ。日本は全国でチーズを作っていますが、なかなかその条件がそろうところってないんです。ところが、石垣島は一年中、新鮮な牧草があるんですね。若夫婦ががんばっていて、これから、どんどん進化すると思いますよ。

このロイヤルマンゴー(p45)もびっくりしますよ。コマーシャルをお手伝いしているところなんですけど、なぜ関わっているかというと、このマンゴーにびっくりしたからです。普通のマンゴーは、種が厚いじゃないですか、食べるところがないくらい。種のまわりはすっぱいし。ところが、このマンゴーは種が紙みたいに薄くて実も甘いんです。どうして、ここまでちがうかというと、輸入方法をかえたからです。普通だと、まだ緑の若いものを収穫して、途中でだんだん熟させていくんですが、それだと当然ながら、中は完熟しないんです。光合成で完熟したのではないんですね。これは、完熟したものを収穫して出荷します。だって、今、飛行機だってその日のうちに到着する時代ですから。一週間前に収穫する必要はないんですよ。そのかわり、注文して直送なので、届いたらできるだけ早く食べないとダメですけど。こんなの食べちゃうと、スーパーで買物できないですね。
−−プレゼントとか贈り物、贈答とかにも良さそうですね。
田崎さん日本では、お中元やお歳暮などの贈り物って、習慣的にいろんなものを送りますが、案外、デパートのお中元コーナーなどで、安易に選んでしまいますね。ところが、その選んだものを自分が食べるっていうことは、ほとんどないですよね。本来、贈り物って、そんな無責任なことではなくて、自分が美味しかったから、ぜひ食べてほしいっていうものであったり、あの人はぜったいこれが好きだろうと思って贈るべきものではないでしょうか。そうでない、習慣的なところばかりがマニュアル化されちゃってるから、自分は食べもしないのに、パッケージと包装紙で選んで送ってしまう。だったらやめたほうがいいなって思いますね。

ですからこれらは、贈り物にどうぞ、というのではなくて、ぜひ、ご自分で食べてみてください。それで美味しければ、昔でいう、おすそ分けの気持ちで……。
−−おすそ分けの気持ちっていいですね。
田崎さんでもねぇ、豪華な「三陸海宝漬」(p27)とか、あれなんて、もらってもおすそ分けしたくないですね(笑)。
−−こういった形でまとめられると、いままでのワインの田崎さんというだけでなく、ちがう形での展開やお仕事の方でも新たな展開をはじめられたりするんですか?
田崎さんいやぁ、わからないですけど。ただ、いままでの美味しいものをまとめてしまったので、また、新たに、この本に掲載していない美味を探そうと思います(笑)。
−−今日は、本当にありがとうございました!
とにかく垂涎もの。大人の味覚とホンモノの価値を知っている人ほど楽しめる、お取り寄せ本です。とりあえず、一番気になった品を取り寄せてみる……。そこから広がる食の楽しみは、洗練された知識を、肩に力をいれないスタイルで味あわせてくれる、ソムリエ・田崎さんらしい豊潤な世界です。いままでのお取り寄せ本で満足できなかったグルメのあなたも、これ一冊あれば、味覚の遍歴に終止符が打てるのではないでしょうか。 【インタビュー 波多野絵理】 田崎真也

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