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子どもと一緒にシンプルで豊かな暮らしベストセラー『捨てる!技術』の著者・辰巳渚さんの親子で読みたい生活の基本

辰巳渚さん
 『捨てる!技術』で一世を風靡した辰巳渚さんは、御存知のようにシンプルで快適な生活の達人です。そんな辰巳さんが「子どもを伸ばす」生活の本を4冊も出されているのです! 伸ばすといっても、昨今の教育ブームの早期教育とかそんな頭デッカチなものではありません。日々、幸福に生きていくために、身につけておきたい「生活の技術」をやさしくわかりやすく教えてくれる本なのです。親子で、そして独り暮らしをはじめる時にもぜひ読みたいこのシリーズ、最新刊の『子どもを伸ばす 手仕事・力仕事』を中心に、ステキなお話を伺いました!


辰巳渚さんの本


『子どもを伸ばす手仕事・力仕事 手と身体を使えば使うほど、頭がよくなる』
『子どもを伸ばす手仕事・力仕事 手と身体を使えば使うほど、頭がよくなる』
辰巳渚
岩崎書店
1,300円(税込:1,365円)

『子どもを伸ばす毎日のルール  子どものうちに身につけたい100のこと』
『子どもを伸ばす毎日のルール 子どものうちに身につけたい100のこと』
辰巳渚
岩崎書店
1,300円(税込:1,365円)

『子どもを伸ばすお片づけ  できる子とできない子とではぐんぐん差がつく』
『子どもを伸ばすお片づけ できる子とできない子とではぐんぐん差がつく』
辰巳渚
岩崎書店
1,300円(税込:1,365円)

『「捨てる!」技術新装・増補版』
『「捨てる!」技術新装・増補版』
辰巳渚
宝島社
700円(税込:735円)

『辰巳渚の「捨てる!」生活  家まるごと2日でスッキリ!!』
『辰巳渚の「捨てる!」生活 家まるごと2日でスッキリ!!』
辰巳渚
高橋書店
1,300円(税込:1,365円)

『「暮らす!」技術』
『「暮らす!」技術』
辰巳渚
宝島社
600円(税込:630円)

『捨てる!スッキリ生活』
『捨てる!スッキリ生活』
辰巳渚
幻冬舎
1,100円(税込:1,155円)
『大人の太鼓判 これができれば一人前』
『大人の太鼓判 これができれば一人前』
辰巳渚
パルコ出版
1,200円(税込:1,260円)

『もう一度「捨てる!」技術』
『もう一度「捨てる!」技術』
辰巳渚
宝島社
600円(税込:630円)

『サラリーマンの「生きる!」技術』
『サラリーマンの「生きる!」技術』
辰巳渚
廣済堂出版
1,400円(税込:1,470円)

『「断る!」作法 もっと軽やかな人づきあいのための』
『もっと軽やかな人づきあいのための「断る!」作法』
辰巳渚
宝島社
1,300円(税込:1,365円)






プロフィール


辰巳渚さん (たつみ なぎさ)
1965年生まれ。お茶の水女子大学文教育学部卒業。編集者を経て、フリーのマーケティングプランナーとして独立。『「捨てる!」技術』が100万部のベストセラーに。男の子と女の子との日々の暮らしを楽しみながら、しつけもしっかり手を抜かないおかあさん。

インタビュー


−−シリーズ最初の本『子どもを伸ばす お片づけ』が発行されたのが、2005年。その後『子どもを伸ばす 毎日のルール』『子どもを伸ばす お手伝い』そして今回の『子どもを伸ばす 手仕事・力仕事』と、母親にとってはぜひ子どもにやってほしい内容の本を2年間で4冊も出されたんですね。
 今回の『子どもを伸ばす 手仕事・力仕事』はどんなテーマで書かれたのですか?


辰巳さん サブタイトルは「手と身体を使えば使うほど、頭がよくなる」としたのですが、学力的な「頭がよくなる」ということが目的ではないのです。手と身体を使うことで、生きていくことの喜びなり豊さを深めていく助けになるということなんですね。それは、私自身の生活実感でもありますし、日々、子どもたちを見ていて思うことなんです。
 
 たとえばお子さんとなにかする時、外でかぶと虫を獲ろうねとか、知育玩具をやろうねとか、そういうことも大事なのでしょうが、この本でとりあげている「手仕事」は、生きていく上で、日々、作業する内容そのものです。それがあって、その上で遊びなり、お勉強をするというのが、自然なことなんじゃないでしょうか。


−−目次を拝見すると、並んでいる項目は「はさみで切る」「ぞうきんを絞る」「おにぎりを握る」といった、生活の中の作業の、基礎の基礎……みたいなものですね。

辰巳さん かつては自然にやっていたことでも、今の世の中ではなかなかできないことがたくさんありますよね。でも、昔からそれらは、どんな小さな子どもでもやってきたことなんですね。親が意識していなくても、忙しく農作業をする親の傍らで、子どもがお風呂の水を汲む、とかね。でもこういったことも、今は意識しないとできないことになりました。
 たしかに、基礎の基礎ではありますけれど、今は基礎がなくて、まわりばかりがあるという状態だと思います。


辰巳渚さん−−たしかに、「おにぎりを握る」とか、親でも最近はなかなかやりませんね。

辰巳さん  やけどすると危ないとか、包丁を使わせるのは危険だとか。ポロポロこぼされるのが、面倒くさいとか。
 コンビニでつい買ってきたりね。そのほうがラクで美味しかったりするし(笑)。


−−そういった、かつては自然にやっていたことでも、現代では忘れてしまいそうなことが、73個も書かれているんですね。非常に細かい日常の作業から、「障子を貼る」などのように建具そのものをみかけなくなってきている懐かしいものもあるし、「打ち水をする」などのように見直されて復活しつつあるものまで。これらの項目はどんなポイントで決められたのですか?

辰巳さん  私たちが日常生活でやることです。今はあまりやらなくなったことでも、生きるために必要だと思うことを選んでいます。
 たぶんこれらのことは、みなさん、結婚されてはじめてする方が多いと思います。結婚してするということは、要するに生活するということですよね。でも、生活というのは、結婚して、いきなりはじまるわけではないでしょう? それこそ、生まれてはじめて呼吸して、食べて育って死ぬまで、ずっと一生続けていくことです。その技術を身につけるということは大事なことですね。
 でも、「おばあちゃんの知恵」を書いたつもりはぜんぜんありません。今の生活でやってほしいこと、私もやりたいと思うことを書いています。

 それは、昔の知恵だから良い、ということではないからです。たとえば、「おにぎりを握る」で考えてみると、やっぱり握ったほうが美味しい、握ったことで遠足のワクワク気分がもっと高まりますよね。お米を握るにはこうすると上手にできる……というおばあちゃんの知恵ではなくて、いまの私たちの生活を楽しく豊かにするために、こういうことをやるといいんじゃないかということをあえて書いているんです。
 便利な道具を否定しているわけじゃないですよ。たとえば、ピーラー(皮剥き器)も使ったりしています。ただ、全自動乾燥機よりは、天日で干したほうが気持ちがいいし、洗濯物が痛まないし、取り込んだ時うれしい。そういう喜びがあると思う作業を選びました。


−−日々の生活で、身体を動かすことで心が動かされることを大切に、選ばれたわけですね。たしかにこの本を読むと、まず自分がやってみて、子どもにも経験させたいと思うものばかりですね。とはいえ、うちにも10歳になる娘がいるのですが、なかなかこういったことはやってくれなくて……。子どもにやらせるコツのようなものはありませんか?

辰巳さん  そのくらいの年齢になると親がやれというほどやらないですよね。コツ以前の話として、『子どもを伸ばす 毎日のルール』の読者の方から、こんな話を聞いたんですよ。その方は、『毎日のルール』をさりげなくトイレに置いておいたんですって。そうしたら、子どもさんが読んで「私のいうことは聞かないクセに、置いてあった本を読んで、納得しているんですよ」と言っていました。親が読みなさい……と言うと反発することでも、他人が言うことは受け入れることがありますね、そういう伝え方もできるんじゃないでしょう。

 ……それで、子どもにやらせるお話ですが、親子でやる作業というのは、なにより親が楽しんでやることが大切だと思います。親が楽しんでいないと、子どもはやらない。「あなたのためにやりなさい」といっても、逃げていきます。おにぎりひとつにしても、来てごらん、ほら、一緒にやろうね、うまくできたね、美味しいね……と。楽しいことならやるんですね。そういったことで慣らしてあげながら、次第に体を動かすことを覚えていってもらえば……。


−−楽しそうに作業している場を、親が作ってあげることなんですね。

辰巳さん  私にも、10歳と3歳の子どもがいますが、つくづく、10歳ぐらいの年齢になるまでが勝負だと思いますね。なにが勝負かというと、身体が覚えることが身につくという勝負なんです。大きくなって頭で勉強できることもありますけど、子どものうちに体に染み込むことの大切さというのがあって、たとえば、おにぎりを握った時の熱さを掌が知っているか、自分が握ったおにぎりをお弁当にもっていくワクワクする記憶があるか……。長い人生では、そういうことがすごく大事だと思うんです。

 おっしゃるように、子どもにそういった作業をさせるというのは親にとってけっこう負担ではあります。かつては手伝いになったかもしれないけれども、今はもっと簡単に片づける方法がいくらでもある。時間もかかるし、指導して、あとで片づけをするのも面倒だし、勉強もさせなくてはいけない……。
 でも、そういった基礎の基礎は、一生必要なことだし、どこかでやらなくてはいけなくなる。それに、完璧にできなくていいんですよ。完璧にできる方がいたら、私がおそわりたいぐらい。この本を読んで、時間をみつけて親子でやってみようかなと、身体を動かす、ささいなきっかけにしていただければ……。


−−そうですね。忙しいとやらないですましてしまいますが、この本が手元にあると、フトやってみようかなというきっかけになりますね。
 やはり、辰巳さんも子育てを通じてこういう視点をお持ちになったのですか? お子さんとの生活はどんな感じですか?

辰巳さん 日々、つい怒ってばっかりですけど……。でもやはり、子どもから学ぶことはたくさんありますね。私自身、これまでマーケティングというところから、暮らしや生き方を大きなテーマとしてもっていたのですが、子どもが生まれたことでわかったことがたくさんあります。
 子どもが生まれると、私たち自身がかわるということもあるけれど、子どもとともにかわっていく、伝えていくということがあると思いますね。
 モンテッソーリという人が、「子どもは大人の生産者である」と言っているのですが、その言葉も、ひとりの時はわかりませんでしたが、子どもをもってはじめて実感しました。
 
 そういうものを、そういう時期にあるおかあさんや、お子さんに、その時期だからこそのことを伝えていきたい。実はそれは、その時期だけのことではなくて、一生に関わることなんです。


辰巳渚さん−−一生の視点を、自分の人生に持つというのは、すばらしいことですね。
 そうしたら、辰巳さんの理想の暮らしというのはどんな暮らしですか?

辰巳さん  当たり前の答ですが……。具体的な行為ひとつひとつは、人それぞれだと思いますが、毎日、ああ、今日もいい一日だったと思って過ごせることでしょうか。朝起きた時、今日もがんばろうと思い、家族が元気に過ごす……家族というのは、子どもということだけではなくて、自分より大切にしたいだれかという広い意味で。そして、体を動かすことで、心や感情が動く……身体と心を使って生きていくということですね。

 ……できれば、テレビもあんまりつけないで、とか、細かいことを言い出すといろいろありますけど……(笑)。


−−「足るを知る」みたいな感じでしょうか。

辰巳さん  「足るを知る」と近いかどうかわかりませんが、自分の身体が発していることに、きちんと目と耳を向けると、自分の求めている範囲というのがわかってくるのだと思います。
 頭で考えている欲望というものは、いくらでも持てる。けれども、お金がいくらあっても、現実的に自分が持てる量というのは限度がありますね。これ以上多いと忘れてしまうとか、覚えきれないとか、生活できないぐらいあふれてしまうとか。手は二本しかないので、コップは二個あっても同時には使えない。そういった、欲望にも限度というものがあって、このぐらいで幸福なんだということがわかってくる。
 だから私は、「捨てましょう」と、書いてきたんです。必要なものだけ使っていれば、それがあなたの適量なんですよ、と。それは身体が自分の生き方に対して、どういう反応を示しているかということに敏感であれば、わかることなんです。


−−よくわかります。辰巳さんを見習って、自然にシンプルに日々、暮らしたいと思います。
 シリーズを出されてきて、手応えや反響、活動が広がってきたことはありますか?

辰巳さん  読者の方々からお手紙や声をいただくことも多いですが、講演活動だけでなく、お手伝いできる現実の場を設けたいという提案もたくさんいただいています。たとえば、親子でやる手作業や、地域の伝統的な生活習慣を伝えるといった企画でも、行政や学校、企業が企画すると、そのままでは義務感になってしまったり、教えるだけの活動になってしまいがちです。
 そこに、『お手伝い』や『手仕事・力仕事』などの本にあるように、基本は生きることにあって、生活を楽しくする、豊かにするということで関わっていけば、広がりができると思います。もちろん、当たり前のことをお伝えしているわけですから、だれがやっても同じことですが……。


−−でも、お伺いしたような生活を、お子さんと実践されている辰巳さんに伺うということが、大事なんですね。
 大人になって忘れてしまったこともたくさん書かれているこのシリーズ、ぜひ4冊そろえて、家の中のあちこち……トイレとリビングと、子供部屋なんかに、置いておきたいと思います!
今日はありがとうございました!










『捨てる!技術』を読んだ時に、ちょっとショックを受けたのを思いだしました。こういうことから自分の生活を考えることができるんだ……と思ったのです。でも、まだ家の中は片づいてないのですが……。今回の4冊
を読んで、ああ、片づかないのもあたりまえ、ここから『捨てる』生活がはじまるんだ……と、深いテーマに触れた気がしました。ちなみに我が家でも、このインタビューのあと、さりげなく本を身近に置いておいたところ、ある日表紙のかわいいイラストにひかれたのか、娘が『読んでいい?』と本を持っていきました。さすが辰巳さんのアドバイス!ですね。
【インタビュー 波多野絵理】


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