楽天ブックス 著者インタビュー

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コンパクトディスクやAIBOなどソニーの大ヒット商品の開発に関わるかたわら、深層心理学などの研究に取り組み、人間とは何かを追求してきた天外伺朗さん。そんな天外さんが初めて書いたユニークなビジネス書が登場した。マネジメントの概念を180°ひっくり返す、その内容とは?

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『マネジメント革命』
「燃える集団」を実現する「長老型」のススメ!
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天外さんの本!

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プロフィール

天外伺朗さん (てんげ・しろう)
本名・土井利忠。1942年兵庫県生まれ。工学博士。元ソニー上席常務。フィリップスとのコンパクトディスクの共同発明、ワークステーションNEWS、エンターテインメント・ロボットAIBOの開発責任者を務めた。科学技術評論、人材開発論などについての著書多数。04年より「意識の成長・進化」を遂げることをお互いに援助するネットワーク「ホロトロピック・ネットワーク」を主宰。著書に『運命の法則』(飛鳥新社)、『人材は『不良社員』からさがせ』(講談社)ほか多数。

インタビュー

−−“天外伺朗”というお名前はペンネームだそうですね?
天外さん手塚治虫の『奇子』というマンガの主人公の名前です。語感が気に入って、会社のテニス部の部誌に書くときにペンネームに使っていたんですよ。著者名として使ったのはコンパクトディスクの開発秘話を書いたときです。編集者を通じて手塚治虫さんから使用許可をいただきました。

 その後に出した著書は、量子力学と深層心理と、それと宗教が言っていることの接点を考えるようなものを主に書いてきました。今回のようなビジネス書は初めてですね。
−−コンパクトディスクの開発秘話、というお話が出ましたが、天外さんがソニーで手がけられた仕事はコンパクトディスクの開発、コンピューターの分野でワークステーションの「NEWS」、そしてペットロボットの「AIBO」がありますね。いずれも開発責任者としてユニークで新しいチャレンジを成功させています。
天外さんそういうユニークな仕事をやるためには、そのためのマネジメントが必要なんですね。実際に、ぼくが関わってきた仕事の中にも、そういうマネジメントがあったわけです。  マネジメントというと、上司が指示を出して部下がそれをよく聞くという管理型が一般的ですが、ぼくが経験してきたマネジメントはそれとはまったく違うものでした。その違いをさまざまな角度から分析したのがこの本です。

 そのなかで、ひとつポイントとして言えるのが「燃える集団」です。昨年出した『運命の法則』(飛鳥新社)という本でもテーマの一つとして書きましたが、コンパクトディスクやAIBOの開発でぼくが実際に経験した現象のことです。どういうことかというと、みんなが一生懸命燃えて仕事をしていると、突然、スイッチが切り替わって運が良くなるという経験のことなんです。これがすごく不思議でね、ぼくは何度も経験していますから、一般原則としてあると信じています。では、運が良くなるという現象を起こすためにはどういうマネジメントが必要か。それがこの本で書いた「長老型マネジメント」なんです。

 実際にソニーの創業者の井深(大)さんがやっていたのがそういうマネジメントだったんです。ところが井深さんのマネジメントというのは、世の中一般で言われている経営とか管理とまっこうから対立するんですね。指示や命令は一切しない。しかし、与えられたテーマに対して、誰もが夢中になって仕事に取り組めるんです。それはなぜか? ぼくは、世の中全般の経営に対する考え方をひっくり返そうとしてこの本を書いたんです。
−−「長老型マネジメント」と真っ向から対立するものとして、いまの日本の企業で一般的な「成果主義」が取り上げられていますね。成果主義は本当に正しいマネジメント方法なのか、導入した現場からも疑問の声が上がっています。
天外さん 日本の多くの企業が成果主義を導入したことで経営に失敗しました。「成果主義マネジメント」は義務として歯を食いしばって仕事をやるか、それとも「長老型マネジメント」で仕事に喜びを見出すか。この違いは大きいですよ。アメとにんじんをぶら下げて、一方でムチで叩く。アメとムチで仕事をしてもぜんぜん楽しくないですね。楽しくないとクリエイティブな仕事はできないんです。
−−天外さんはご自身の経験をふまえつつ、深層心理学などからアプローチして科学的に実証しようとされていますね。
天外さん経営学として世の中に問う場合には裏づけが必要になるので、私が長年取り組んできた深層心理学に基づいて書いています。また、「燃える集団」になることで運が良くなるということの裏づけになりそうな、心理学のフロー理論を発見しました。そこで、フロー理論の提唱者であるチクセントミハイ教授に会って話すことができました。その顛末はこの本の中にも書いたんですが、夢中になって何かをやると運が良くなるということについては、教授は認めようとしなかった。しかし、そのときに教授がこれからする講演の中にソニー(設立当時は東京通信工業)の設立趣意書があったんですよ。これは教授自身もすごい共時性だって言っていましたけど。これからソニーの話をしようとしていたらソニーの取締役が来た、と。

 なぜソニーの設立趣意書が出てくるかというと、そのーの設立趣意書にこうあるんです。

「一、真面目ナル技術者ノ技能ヲ最高度ニ発揮セシムベキ自由闊達ニシテ愉快ナル理想工場の建設」。

 この精神がフローに入るコツですよ、と博士は言うわけです。創業期のソニーは社員全員がフローに入っていた。当時のソニーは全社が「燃える集団」だった。そのことにはぼく自身も気づいていたんです。

 ただ、ぼくがそのときに思ったのは、心の狭い話ですけど、アメリカ人相手にそんな話を話してくれるな、ということなんですよ(笑)。

 ようするに、ソニー、富士通など、成果主義を取り入れた会社の経営が軒並みおかしくなって、日本の産業界がひっくり返っちゃうかもしれないという危機感があるときに、成果主義を輸出した本家本元の国で、成果主義と180°反対の経営のすばらしさを説いているわけです。しかもそのルーツがソニーだった。「そりゃ、ないだろう。毒薬を飲ませておいて」と思ったわけです。そのことへの怒りがこの本を書く動機のひとつになっていますね。
−−いわゆるビジネス書、経営学の本と『マネジメント革命』が異なるのは、人間とは何か? を探求しているという視点です。人間的に成熟した者だけが「長老型マネジメント」を実践できる。
天外さん 本当は、マネージャーは全員それがわかっていないといけないし、多くの優れたマネージャーは、それをわかっていると思うんですよ。

 経営学という学問では、人間は合理的に動く存在だと規定して論理を組み立てますから、結局はそれがぜんぶ間違いだということなんじゃないでしょうか。
−−マネジメントの世界でも、人間とは何か? への探求と、その探究心に加えて、自分自身と向き合って成長していくことが大事なのですね?
天外さん自分自身とちゃんと向き合わないとマネジメントなんてできないんですよ。でも、自分と向き合うことを放棄して、自分はOKと無理矢理納得して、部下だけを無理矢理変えようとする人が多すぎるんですよね。

 自分と向き合って自分を磨いていくことの大切さを語ってきた経営者は、井深大、松下幸之助、稲盛和夫……、私が知っている限り、それほどたくさんはいないんです。名も知れない経営者の中にはできている方もたくさんいるとは思いますが、哲学を持った経営者が減ってきているのは事実だと思います。
−−「長老型マネジメント」には徳を持つことが必要であるとあります。
天外さん昔は、経営者は徳を持たなくてはいけないというのは当たり前だったんですね。それがいつの間にか、経営者自身がコンサルタントを雇って、ロジックでやっていれば通用するという錯覚に陥ってしまった。自分と向き合えない経営者がすごく多いと思いますね。
−−天外さんの新刊がもう1冊出ています。『五十歳からの成熟した生き方』というタイトルで、「長老型マネジメント」の“長老”がテーマ。すなわち、成熟の仕方、年の取り方についてお書きになっています。
天外さん『五十歳からの成熟した生き方』でも、『マネジメント革命』と同様、人間の意識の成長・進化を書いています。とくに『五十歳からの成熟した生き方』では、成熟した自我に一歩前進しましょう、ということについて主に書いています。『マネジメント革命』と合わせて読んでいただければ、ビジネスマンの方にも参考になると思いますよ。
−−今年の6月にソニー・インテリジェンス・ダイナミクス研究所の社長兼所長を退任して、企業人としての生活を“卒業”されたわけですが、これからの活動について教えてください。
天外さん 「意識の成長・進化」をお互いが支援しあうネットワーク「ホロトロピック・ネットワーク」を中心に、医療や教育、ビジネスの現場に関わっています。この本に関わる部分でいえば、企業を対象にしたセミナーも予定しています。
−−ますますお忙しそうですね。
天外さん 人生最良の年ってありますよね?それを毎年更新してます(笑)。50代くらいからね。
−−今日はありがとうございました!

指示・命令をしない、というマネジメントの考え方からすれば仰天するような「長老型マネジメント」ですが、本書を読めば、その有効性がはっきりとわかるはず。“人間”に目を向けた天外さんのマネジメント論はとても刺激的だ。成果主義が結果を出していない今こそ、経営者、企業人が読むべき本!
【タカザワケンジ】


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