楽天ブックス 著者インタビュー

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街を歩けば、ヨガマットを抱えた女性にぶつかる――というのは少々大げさですが、最近のヨーガブームには目を見張るものがあります。「美しい身体を手に入れたい!」という女性を中心に注目を集めるヨーガ。そのブームの火付け役となったのが、綿本彰さん。ハリウッドのセレブたちを虜にした、“パワーヨーガ”専門のスタジオを日本で初めてオープンし、日本ヨーガ界の第一人者のひとりでもある綿本さんの最新刊は、これまでのボディメイクを目指したヨーガから一歩進んだ『Yoga<ヨーガ>ではじめる 瞑想入門』。実は、「瞑想」こそがヨーガの本質であり、新たな自分に生まれ変わる秘訣でもあるそうです

プロフィール

綿本彰さん (わたもと・あきら)
日本ヨーガ瞑想協会総師範。綿本ヨーガスタジオ主宰。大阪生まれ。幼い頃より、父であり、同協会の名誉会長の故綿本昇師からヨーガを学ぶ。神戸大学卒業後インドに渡り、ヨーガ、アーユルヴェーダを研修。帰国後、同師に師事しながらヨーガの指導をスタート。また、ロサンゼルスやニューヨーク、ロンドンなど世界各地でヨーガの研修を重ね、2003年、東京銀座に日本初のパワーヨーガ専門の「綿本パワーヨガスタジオ」(現「綿本ヨーガスタジオ」)を開校。現在は同スタジオで指導にあたるほか、テレビや雑誌を通してヨーガの普及に努める。著書は『シンプルヨーガ』 『パワーヨーガ』 『ヨーガ式 呼吸レッスン』 『DVDで覚える シンプルヨーガ』(以上新星出版社)、『瞑想ヨーガ入門』(実業之日本社)、『ヨーガの奥義』(講談社)、『綿本彰のDVDレッスン パワーヨーガ本格エクササイズ』(双葉社)など多数。
綿本ヨーガスタジオ公式HP :http://www.yoga.jp/

インタビュー

−−今回のテーマは「瞑想」ですが、日常生活にここまで「瞑想」を取り入れることができるとは知りませんでした。これまでにも数多くの著書を出されていますが、「瞑想」にポイントを絞られたのはなぜですか?
綿本さん今までの本は、「どうしたらお腹の肉が取れるのか」といった、ヨーガの用途を取り上げたものが中心でしたが、ヨーガの本質は瞑想にあります。これまで、いろいろな先生方とヨーガを広めるために活動してきましたが、ヨーガブームと言われている今、いよいよヨーガの本質を伝えたい。単に汗をかいてスッキリして終わるのではなく、「瞑想」の良さを、ぜひ多くの方にご紹介したいと思ったからです。
−−「瞑想」と聞いても、正直なところ、座禅ぐらいしか思い浮かばないのですが……。
綿本さん禅も実は広い意味でヨーガなんですよ。大昔のヨーガというのは、まったく動きがなくて、座っているだけのものでした。それが進化し、身体を動かす形になったのですが、本来のヨーガは瞑想そのものです。そうした、ヨーガが誕生したときの形を引き継いでいるのが禅です。そして私たちのいる世界の成り立ち、自分が何であるかを探求できるぐらいに精神統一した状態が「瞑想」です。そう聞くと、ものすごく鍛錬しないと得ることのできない境地に思えます。事実、人間である以上、100%の瞑想状態になるのは無理なのです。山奥にこもり、200年生きて……なんて仙人ではなければできません(笑)。とはいえ50%でも、たった数%でも瞑想のエッセンスを手に入れることができれば、それだけの恩恵があるんですよ。
−−具体的には、どのような効果があるのですか?
綿本さんひと言でいうなら、生きていく上で必要なことのすべてを助けてくれます。まず、精神安定効果があります。ほとんどの人が「瞑想」からイメージするのは、このメンタル面の効果でしょう。次に健康です。医学が発達した今、身体と心は別々ではなく、ひとつのセットとして考える東洋的な思想が注目されています。自律神経などを介して、さまざまな病気や不調が心の状態と密接に関わっていることに、多くの人が気づき始めたんですね。フィジカル面での健康を突き詰めればつめるほど、食事や運動だけでは解決できない問題が出てくる。結局、心身ともにととのった状態が本当の健康なのですから。最後に美しさ。これは「瞑想」とは最もイメージがつながりにくいものですが、「食べ過ぎて太ってしまう」というとき、なぜそうなるのかを考えてみる。お腹がいっぱいであれば、それ以上は食べたいと思わないはずなのに、必要以上に欲するのは、心の機能が弱まっているからなんですね。だからこそ、メンタル部分を調整することで、食べ過ぎることもなくなり、太り過ぎを防ぐことができるのです。
−−「身体に良くない」と思いつつ、ストレスが溜まっていたりすると、つい食べ過ぎたり、飲み過ぎたりすることって、確かに……あります(苦笑)。
綿本さんもちろん、そうして一時的にストレスを解消することも必要です。でも、根本を解決しないかぎり、また同じ状態に戻ってしまいます。大切なのは、ストレスの根を断つこと。そのためには、物事の受け止め方を変える必要があります。コップに水が半分入っていたとして、半分しか入ってなかったと思うと残念な気分になり、逆に半分も入っていたと思うと得した気分になります。また、スポーツでも勝った試合と負けたときでは、疲れの感じかたが違います。物事の捉え方を変えれば、ストレスが根本から解消されて、その結果、過食の原因がなくなるだけでなく、姿勢も美しく、表情もイキイキとした、内面から美しさを引き出すことができるようになるわけです。
−−気分が滅入っていると背中が丸まってしまうなど、心身をワンセットにする考え方が面白いと思ったのですが、瞑想の手がかりとして“チャクラ”という言葉が出てきます。チャクラとは一体何なのでしょうか?
綿本さん言ってみれば、ツボのようなものですね。ツボというと、そこを押せば腰痛が治るといった、スイッチのように思っている人が多いかもしれません。でもその逆で、ツボもチャクラも、さまざまな身体の機能が交差しているために気が滞りやすく、身体の不調の原因になる場所なんです。裏を返せば、そこの流れを良くすることが、健康を保つためには欠かせないのです。
−−腰のチャクラは意欲や集中力に、骨盤底のチャクラは自信につながる……というように、身体には主要なチャクラが7つあるんですね。
綿本さんチャクラを「心と身体を結ぶポイント」と呼ぶこともできます。東洋には心と身体はバラバラではないという考え方がありますが、心と密接につながっている場所が身体に地図のように描かれている、それがチャクラです。たとえば、やる気が満ちているときは、いつでも行動できるように下腹のチャクラに力が漲ってきたり、爽快な気分のときは呼吸がゆったりとしているので、胸のチャクラが中央から広がってリラックスしています。このように、心と身体は密接に結びついているので、前向きな思考のためには、ポジティブな身体が備わっていなければダメなのです。身体と心の足並みを揃えることで、本当に前向きな気持ちになれるのです。
−−こうして伺っていくと、自分の心や身体のことなのに、知らないことがたくさんあって面白いですね。
綿本さんそうですね。特に心というのは自分のものなのに、なかなか思い通りにならない存在なんですね。食べないでおこうと思っても食べてしまったり、考えないでおこうと思っても考えてしまったり。だから瞑想を行う必要があるんですが、そのためにチャクラを介して身体から働きかけていくというのがヨーガの面白い考え方です。私自身も、ただ座るだけの瞑想はあまり行わず、ポーズをとりながら身体を調整し、チャクラに働きかけながらポーズ中に瞑想を行うようにしています。瞑想的な精神状態になると、逆にポーズの完成度も高くなる。そうした意味で、この『瞑想入門』は、ヨーガをやっているすべての人にぜひ読んで頂きたい本ですね。
−−起きたときはもちろん、電車で移動中に姿勢を定めたり、揺れを感じてみたり、また人と接しているときにも相手の目を見て、聞くことに徹することを通して瞑想を深めていく、“瞑想生活”の提案が興味深いですね。
綿本さん人と話している間に瞑想するのは、私にとっても難しいことですが(笑)。でも、瞑想への意欲を持つだけでも効果はあります。電車に乗っている間、何もすることがなくて、ボーとしていてネガティブな思考になるのだったら、立ち姿勢、座り姿勢をととのえて、瞑想の練習をしてみる。効果を求めすぎるのも良くありませんが、瞑想のための瞑想であって欲しくないのです。瞑想を通して物事のとらえ方が変わり、生き方が少しでも良い方向に向かえばいいのだと思います。ある決まった時間だけ瞑想するのではなく、24時間のうちで、寝ている間以外は瞑想している、そんな感覚を持てるのが理想ですね。
−−お父様がヨーガの先生ということで、幼い頃からヨーガや瞑想は常に暮らしの中にあったのでしょうか。
綿本さん子どもの頃からヨーガに触れてはいましたが、今思えば、ストレッチ体操みたいなものでした(笑)。それに中学から大学卒業までは、まったくやりませんでした。ヨーガが嫌になったのではなく、「なぜやらなくてはいけないのか?」と疑問を感じたからです。父も「続けろ」とは言いませんでした。その一方で、小学生の頃から“死”に対する恐怖があって、「死とはどういうものなのだろう?」ということに、とても興味がありました。それが「どう生きるか」ということにつながり、次第に人生のテーマになっていきました。でも、考えても答えが出るものではなかったんですね。ところが、社会人になったある日、ヨーガに関する本を読んだとき、「ヨーガの哲学の中に、自分の求めているすべてが集約されている」と感じました。気づけば、親がヨーガをやっていたわけです(笑)。本格的にヨーガを始めたのはそれからですね。
−−今後、やっていきたいこととは?
綿本さん実は高校時代は長髪で、ドラムを叩きながらミュージシャンを目指していたんですよ(笑)。その頃から形はどうであれ、何かを表現しながら生きる、ということに憧れを抱いていました。ですから、今後はどんどん表現していきたいですね。自分の中に、瞑想で深めた、さらに今後もっともっと深めていくべきヨーガ的な世界観があって、それをヨーガという既存の枠組みにとらわれずに、音楽や写真、絵、詩、ストーリーなど、様々な方法をとって表現したいと思っています。つまり、ヨーガは私にとっての「表現の場」なんです。また、そうした発想から、そこに行けば元気になれる、ヨーガ的な哲学をベースにしたテーマパークを作ってみたいですね。その試みのひとつとして、ピュアネスという、代替医療ポータルサイトをプロデュースしました。ヨーガの指導者だけでなくヒーラーやカウンセラー、アロマセラピストや整体師などによる約1万人のネットワークを通じて、多くの人の心身の不調を解消する、橋渡し的な役割が果たせればうれしいですね。
−−最後に、瞑想を楽しむ秘訣とは?
綿本さん瞑想に対する知識がない方にもわかりやすいように、できるだけいろいろな方法を紹介したい、という思いでこの本を作りました。自分のイメージを使って瞑想に入る人もいれば、身体を動かすのが得意で、ポーズから入る人もいるはずです。目的に向かう方法は人それぞれで構わない、というのはヨーガの考え方のひとつですが、自分なりに少しずつ瞑想に取り組みながら、ぜひその効果を日常生活に役立ててみてください。

インタビュー後、撮影用にポーズをとってくださった綿本さん。その姿の美しさにすっかり魅了されてしまいました。「瞑想」には何やら難しいイメージがありますが、「100%で極めなくても、その効果は得られますよ」の言葉に、「気軽にトライしてみようかな」という気分に。心と身体の密接な関係を聞けば聞くほど、人間という存在に神秘を感じてしまいます。『ヨーガではじめる瞑想入門』付属のCDは、綿本さんの選曲による気持ちのいい音楽とナレーション入り。美しい姿勢から放たれる清々しい声で、瞑想の世界に導いてくれますよ。 
【インタビュー 宇田夏苗】


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