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Artist Voice ―GOMESS インタビュー

2014/07/25掲載

『高校生ラップ選手権』準優勝から2年
三つの基準で選曲した
ウワサのラッパー、待望のファースト・アルバム完成

障がいウンヌンってなったときに

第2回『BAZOOKA 高校生ラップ選手権』準優勝から2年、LOW HIGH WHO? PRODUCTION(以下LHW?)への所属が発表されてから1年。GOMESSのファースト・アルバム『あい』がいよいよ完成した。

僕が彼を知ったのは昨年7月のPOETRY FES。10歳のときに自閉症と診断され、引きこもっていたという“GOMESSといえば”な逸話も知らずに聴いたフリースタイルにぶっ飛ばされた。押韻とシャレのワード・プレイとは全然違う、まさにフリーなスタイル。心の深淵から掘り出した言葉の速射砲に涙と笑いが同時に出た。芸というより彼の人生そのもの。その片鱗が『あい』に収録された「笑えてた」で窺える。GOMESSのテーマ・ソング的な「人間失格」ともども、ぜひ聴いてほしい曲だ。

GOMESS


 「あれは完全なフリースタイルです。ネルさん(LHW?の総帥、Paranel)がその場でサビだけ書いて、ギターだけラインでつないで、たまたまそこにいた人にハンドクラップしてもらって。タイミングもアイ・コンタクトでなんとなく」

――あれはGOMESSくんの真骨頂だと思いましたよ。ラップを始めたきっかけは?
  「小6のときライムスターが好きになったんです。日本語ラップをいろいろ聴きながら、カラオケ感覚で一緒に歌ってるうちに“俺も歌詞書けるんじゃないか”と思って自然に始めた感じです。中2の春くらいですかね。最初は8小節くらいの、とりあえず語尾で韻踏んでみた、みたいな曲を何個か作って吹き込んでたんですけど、じきに自分でビートを組むようになって、1日1曲ぐらいのペースで作ってました。自閉症がウンヌンっていう曲は書いたことないんですけど、結果的にそれが原因で生活が変わって、そうすると日常会話に出てくる言葉も変わってくるじゃないですか。なので暗い歌詞ばっかでした。最初か2曲目に作った歌詞が〈いじめやめろ〉って曲なんですよ。3曲目が〈地球温暖化〉で、4曲目が〈さんぴんCAMP〉(笑)。影響を受けたことをそのまま歌ってたんだと思うんですけど」

――いじめられていたんですか? それともいじめっ子だった?
 「両方ですかね。もともといじめっ子っぽい気質だったんですよ。ケンカが多かったです。上級生にも向かっていって返り討ちにされてました(笑)。でも障がいウンヌンってなったときに、いま思えば被害妄想みたいなのもあったと思うんですけど、まわりの目がすごく気になっちゃって。障がい者っていうフレーズを耳にするだけで――それはたとえば親が“障がい者にいい施設があるんだって”みたいにいい意味で使った場合でも――その言葉だけが入ってきて、“障がい者なんだ、障がい者なんだ……”って頭の中を回っちゃうんです。中学に上がるときに養護学級みたいのに入るよう薦められたんですけど、すっごいゴネた挙げ句に一日だけ入って“無理!”ってなって拒否って、障がい者手帳も拒否って。受け入れられなかったんですよね」

GOMESS


――それはつらいですね……その経験が表現のベースになっている?
 「そうでしょうね。こんなに生きることや死ぬことを考えたり、人間の自分勝手さや長所短所、一個一個に意味があるみたいな考え方をするようになったのは、絶対つらい時期があったからだと思います。“死にたい”と思ってたこともやっぱりあって、その“死にたい”って思いのおおもとは何なのか、2ヵ月ぐらい部屋にこもって考えて考えて考えまくった結果、今みたいに落ち着いたんです。死ぬのもアリだけど、死んだ後のことはわからないので、わからないところに突っ込むよりかは、いま見えてるところで楽しんだほうがいいのかな、みたいな。苦しい思いをしたことは今は財産だと思ってます」

――そう思えるようになったのはいつごろ?
 「2年くらい前ですかね。ちょうど苦しみから抜け出した時期に『高校生ラップ選手権』に出させてもらって。気持ちが前向きになったところで“よし、やるか”って言ったらやれちゃって、今に至ってるんで。LHW?加入もすぐ決まったし、いろんなタイミングが重なってラッキーだったと思います」

――決勝まで進んで自信がついた?
 「いや、出れたことはうれしいけど、優勝してないんで“うわ〜、負けた〜”しかなかったです。ライヴも毎回やり終わった後に“うわ〜今日最悪だった〜”って凹むんですよ。映像を撮ってもらって、帰ってiPhoneとかで見て反省会します。お客さんが“そこがよかった”って言ってくれるときもあるんですけど、“そうなんですか”とは思っても、納得して自分に溶け込ませる言葉とは別のフォルダにいったん入れるんです。僕のなかで他人と自分には壁があって、外の世界からもらった言葉は食べていいものかどうかわからないから一回検査する時間がほしいんですよ。アルバムに関しても、今はやっちまった感しかないです。この本が出るときはわかんないですけど、発売前の気分としては(笑)」

GOMESS


韻ってもうよくないですか

――アルバムの制作期間はどれくらい?
 「2週間ぐらいです。意味わかんなかったですね(笑)。しかもいろいろ重なったんで。引っ越しとドキュメンタリー映画の撮影(太田達成監督の『遊びのあと』)と、あとライヴも客演もあったし、バンドもやり始めて……全部同時進行してたら精神的にやられちゃって、自閉症に対する負の感情が強くなって、つらくなっちゃって。その時期に歌詞を書いたりしてたんで、つらい曲はほとんど入れてないですけど、こもった生命が入ってるんじゃないかなって思います」

――GOMESSさんのラップって、韻を逸脱していくものが多いですよね。
 「そうですね。韻ってもうよくないですか、みたいな(笑)。言葉遊び的な日本語ラップにはもともと興味がないんです。面白いなとは思いますけど。ライミングの定義はわかんないけど、僕はひと文字でいいと思うんですよね。そこが合ってればいい、ってところがきっちり合ってればかっこよくて、なおかつそれをずらしてくるやつがもっとかっこいい。予想のつかないことをやるやつが面白いじゃないですか。『高校生ラップ』のときの映像を見ても、俺ヘッタクソだな〜って思うんですけど、なんでみんな好きなのかと考えたら、歌詞はほかのラッパーと違うんですよね、冷静に見て。たぶんそれだなと。スキルはここからつけなくてはならないなと。むかし作った曲を聴くと、“まわりのみんなはスキルを欲しがったけど、ずっとひとりでスタンスを固めた”みたいなこと言ってて、考え方がブレてないんです。よし、俺変わってない、って安心します」


取材・文 高岡洋詞(CDJournal 2014年8月号より転載)
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 あい


2014年07月16日発売 試聴はこちら
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収録曲 1.普通のことができないから feat.緑川マリナ[3:10]
2.ゴメスティック・バイオレンス[3:30]
3.雨傘[1:18]
4.路上戦争 feat.Leo(The John's Guerrilla)[2:30]
5.遺書[3:18]
6.月光 feat.Paranel[3:57]
7.バースデー[1:36]
8.伝説 feat.daoko[4:34]
9.人間失格[3:32]
10.笑えてた feat.Paranel[6:44]

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