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Artist Voice ― CRAZY KEN BAND インタビュー

2014/09/30掲載

「瞬間瞬間をスパークして前に進んでいきたい」――クレイジーケンバンド待望の新作『Spark Plug』が登場

クレイジーケンバンドのニュー・アルバム『Spark Plug』が届けられた。バンド史上最もメロウかつビターな芳香を漂わせることとなった本作ではあるけれど、その根底に流れているのは、あるがままの今を見つめ、瞬間瞬間を完全燃焼して明日へと繋がるエネルギーを生み出そうという、すこぶるソウルフルなエネルギーだ。バンドを取り巻く現状について、そして本作に込めた想いについて剣さんに話を訊いた。

――アルバムのお話に入る前に、少し前の話題になってしまうんですが、7月20日に越谷のイオンレイクタウンで行なわれたシングル「スパークだ!」の実演販売会にお邪魔させていただいたんですけど、あの日の会場の雰囲気がとにかく素晴らしくて。

「ありがとうございます。北関東では越谷と土浦でやらせてもらったんですけど、どちらも素晴らしかったですね。会場周辺も郊外の車社会特有の空気感があって、グッとくるものがありました」

――お客さんも、CKBファンはもちろん、それこそ普通に買い物に来ていた地元のおじさんおばさん、ヤンキーカップルに子供とか、いろんな人種が入り混じってて。いわゆる大型CD店のインストアとは明らかに客筋も違いますよね。
「僕は小学生のときに中古レコード屋さんの手伝いで、路上でレコードの実演販売をしてたことがあったんですけど、当時の記憶が蘇ってきました。全く興味のない人たちを引き込んで、いかにレコードを買ってもらうか。昔から演歌歌手やアイドルが、よくサイン会とかやってますけど、実は、ああいう売り方ができないものか数年前から考えていたんです。自分も子供の頃、近所のスーパーとかに歌手が来るとよく観にいってましたから。今でもよく覚えてるのはインド人チャダ(笑)。”本物のチャダが来た!”って別に好きでもないのにレコードを買っちゃって(笑)」

――実演販売は何年前から始められたんですか?

「2008年ぐらいですかね。それぐらいから周りの人たちが”CDが売れない”って頻繁に言うようになって。”売れない売れない”って言うだけじゃ何も始まらないから、だったら角度を変えて違う売り方を試してみればいいんじゃないかと思ったんです。実演販売って、ある意味、ワイルドな売り方ではあると思うんですけど、メンバーと一緒に一生懸命良い作品を作ったという自信がありますから。そこに関してはカッコつけなくてもいいかなと」

――しっかりとしたキャリアと実績を重ねられてる剣さんみたいなアーティストが、率先してお客さんと触れ合いながらCDを売ってる姿がほんとにカッコいいなと思って。

「今の時代においては、こういう売り方のほうが、かえってカッコいいんじゃないかと思うんです。以前、台湾に行ったとき、向こうでは漢方薬を売るために歌謡ショーをやるパオジャンフーって人たちがいるんですけど、歌謡ショーをやってる横で司会者がマイクを持って、歌手より大きな声で何か言ってるんですよ。通訳さんに聞いたら、”おっと! パンツが見えそうだ!”とかクダらないことを言ってるみたいで(笑)。あの感じもすごく良くて。寅さん然り、実演販売って、ある種、ジャマイカのサウンドシステムとかにも繋がるような、ストリートなエンタテインメント性があるっていうか。そういう意味でも、やってて面白いし、何より自分にとって刺激にもなりますし」

――ある意味、消費者とガチで向き合うわけですからね。
「そう。で、何回かやってると反応が濃い曲、薄い曲っていうのがわかってくるんです。その反応を見て、”ラジオOAはこっちの曲にしよう”とか決めたり。いくら自分が気に入ってる曲でも、お客さんに気に入ってもらえなきゃ単なる自己満足になっちゃうんで。僕は大衆音楽を作っているという気持ちが強いので、そういう意味でも、実演販売は、楽曲の反応をダイレクトに知ることができる大切な場でもあるんですよね。音楽マニアを唸らせるような隠し味を入れつつ、いかに多くの人に楽しんでもらえるような曲を作れるか。ここ数年、そういう気持ちでいたら『NHKみんなのうた』から楽曲依頼がきたり、徐々にいい感じになっています」

――今回のアルバムも、そうした大衆性を当然意識して制作されたわけですよね。
「そうですね。とはいえ、作為が強すぎると逆に届かなくなってしまうんで。大事なのは天然であることだと思うんです。天才馬鹿になるというか(笑)。だから曲を作るときは天然が起こりやすいような、無意識過剰な状態に自分を置いとかないとダメなんですね」

――今作は全体の雰囲気がすごくメロウですよね。これも無意識の中で自然と導かれたような感じだったんでしょうか?
「毎回アルバムのレコーディングは、曲が出来た順にどんどん録っていくんですけど、いつも3、4曲録ったあたりで、なんとなんく全体の雰囲気が見えてくるんですよ。今回は作ってる最中に割とネガティヴな雰囲気になるんじゃないかと思ったんですね。悲しみや哀愁の漂う曲が多めになるんじゃないかって。ここ数年、あえてネガティヴな匂いがする曲を自主規制してたところがあったんですけど、歌謡曲が輝いていた70年代とかを思い起こしてみると、当時、僕が好きだった曲って、ネガティヴな曲ばかりなんですよね。ちあきなおみさんの〈喝采〉とか、ユーミンの〈ツバメのように〉とか」

――確かに当時のヒット曲って悲しい歌ばかりですよね。
「別れとか悲しみってエモーショナルな感情を刺激するんです。ポジティヴなものから得られる興奮とはまた違う興奮が得られるというか。細胞が暴れて元気になるんですよ。今回はそっちの方向にフォーカスした感じがあるかもしれないですね。もうちょっと少なくてもいいかなと思ったんですけど、もう手遅れで(笑)。結果として、それが作品のカラーになったから、ま、いいや、と」

――最初に聴いたとき、過去の作品でいえば『777』に近い印象を受けたんです。でも、今回のアルバムには『777』ともまた違う、独特な胸苦しさみたいなものが作品全体に色濃く流れていますよね。
「そう。まさに胸苦しい感じ。僕はその感覚を味わいたくて、映画を観たり音楽を聴いたりすることがあるんですよ。ハッピーエンドじゃない、救いようのないまま終わるヨーロッパ映画とか昔から大好きで。そういう映画を観ては、”これで終わり? ……よし、仕事しよう!”とか元気になったり(笑)。人間の心理って複雑だから、悲しい気分のときに、あえて悲しいものに触れることで元気になったりすることもあるんですよね」

――今作でいえば「ハートブレイクBBQ」や「モータータウン・スイート」といったラヴ・ソングにも、どこか諦念めいた、やるせない気分が漂っていますよね。
「歌詞はメロディに影響されて出てくることが多いんですけど、楽曲のメロウなムードに呼び寄せられたところがあるかもしれませんね。曲調が哀愁を帯びてると歌詞も自然とそういう雰囲気のものになって。逆に明るい曲調なのに歌詞が暗いっていうパターンも好きなんですけどね。トム・ジョーンズの〈よくあることさ(It'sNot Unusual)〉とか。太陽が弾けるような明るいメロディなのに、歌詞がめちゃくちゃ暗いっていう(笑)。〈モータータウン・スイート〉は、デトロイトじゃなくて日本の郊外にあるショッピングモールとかのテイストですね。夕暮れ時にバカデカイ駐車場で地元のカップルが喧嘩をしてるイメージで」

――越谷レイクタウンの実演販売でも、この曲を流しながら、そういうお話をされていましたよね。
「そうなんですよ。シチュエーション的にも、あの曲のイメージとぴったりで。そうしたら、まさにそういう感じのカップルが客席にいて(笑)。向こうのKマートとかにいそうな人相の悪いチカーノが、実はスウイートソウルとかドゥワップを好んで聴いていたりするような、西海岸のサンセット感とかパームツリー感を日本的に解釈すると、僕の中ではこんな感じになるんですね」

――確かに不良って昔からメロウだったりスウィートなものが好きだったりしますよね(笑)。
「不良は毎日がヘビーだから、娯楽に関してはスウィートなものを求めるのかもしれないですね。僕が若い頃で言えば、スタイリスティックスとか好んで聴いてる人は大体不良でしたしね。でも、みんなすごく悪そうなのに”しょうちゃん帽”っていうボンボンが付いた可愛い帽子をかぶってたり、喫茶店に入ったらフルーツパフェを頼んだり(笑)。ディスコで踊ってるときも、めちゃくちゃダンスが可愛いかったり。不良がスウィートなものやファンシーなものを好む感覚って、古今東西、時代を問わず共通してるのかもしれませんね」

――作品の流れとしては「2CV」「ごめんね坊や」「リトラクタブル」と続く中盤の、とめどなく悲しみが押し寄せてくるような展開にもすごくグッときます。
「今回は、あえて散らさないで、切ない曲は切ない曲、悲しい曲は悲しい曲という感じで、アルバムの中にまとめて入れるようにしたんです」

――「ごめんね坊や」は勝新太郎の隠れた名曲のカヴァーですが、今回どういうきっかけで、この曲をカヴァーしたんですか?
「前からずっとカヴァーしたかったんです。大好きな曲なんですけど、カラオケにも入ってないし、歌える機会もなかったので、だったら自分たちでやっちゃおうって。勝さんは、この曲に強い思い入れがあったみたいで、生涯に2回レコーディングしてるんですね。勝さんの実の娘さんが、僕らのライヴをよく観にきてくださるんですけど、彼女からも、勝さんがこの曲を運転しながらよく口ずさんでいたとか教えてもらって」

――破天荒なイメージがある勝さんが、こういう心温まる曲を歌ってるところにグッときます。
「破滅的なところと家族思いの優しいところが同居してる。僕の大好きな勝さんの魅力がすごく詰まった曲だと思います」

――それに続く、のっさん(小野瀬雅夫)作のインスト「リトラクタブル」も作品中盤のメランコリックな雰囲気を絶妙に彩っていますね。
「この曲を聴いたときは、『傷だらけの天使』とか『太陽にほえろ』の挿入歌を聴いたときに感じたような、何ともいえない物悲しさみたいなものを感じました。のっさんは、いつもアルバムの制作がある程度進行したタイミングを見計らってインスト曲を書いてきてくれるんですけど、今回もばっちりでしたね。特にサビに向けて押し寄せる強烈な孤独感たるや。のっさんの中では、70年代のスーパーカーをイメージしたみたいです。たしかに流線型のフォルムを感じるんですよね。本当に凄い曲だなと思います」

――14曲目の「もうねえ」は、「てんやわんやですよ」「ま、いいや」と続く”口癖シリーズ”ですね。
「”もうねえ”っていうのは和田アキ子さんの口癖でもあるんです(笑)。この曲では、スモーキー・テツニくんと野郎同士のデュエットをしていて。イメージとしては男泣きみたいな感じですね。同じ女に痛い目に遭った男同士みたいな(笑)。これもまた、どうしようもない悲しみがテーマになっていますね」

――続く「本牧は午前零時」では、HPに掲載されたセルフライナーノーツによると「意味のない言葉でどれだけ人間は元気になるかっていうこと」を試みられたそうですが。
「台湾と日本の間にある1時間の時差をモチーフに、ジム・ジャームッシュの『ナイト・オン・ザ・プラネット』風のパラレル・ワールドみたいな世界を描こうと思ってたら途中から具体的なことがどうでもよくなっちゃって(笑)。いかにして、意味のない言葉を入れ込んで”偶然完全”を呼び込むかという方向に意識が向いて。一見、無駄に見えるようなものも、見てて見ぬふりをしないという」

取材・文 / 望月 哲(CDJournal.comより転載)

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NEW Spark Plug (初回限定盤 CD+DVD)


2014年9月3日 試聴はこちら
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収録曲
[Disc1]
01:ドライヴ!ドライヴ!ドライヴ!
02:血の色のスパイダー
03:ハートブレイク BBQ
04:龍鳳閣
05:あせだく
06:モータータウン・スイート
07:というわけで
08:あ、すいません。
09:2CV
10:ごめんね坊や
11:リトラクタブル
12:サーフィン・ウィズ・チキンカリー
13;続・あ、すいません。
14:もうねぇ
15:本牧は午前零時
16:踏切シャッフル
17:あ、すいません。 <LP version>
18:世界、西原商会の世界!
19:スパークだ!

【DVD】
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NEW Spark Plug


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02:血の色のスパイダー
03:ハートブレイク BBQ
04:龍鳳閣
05:あせだく
06:モータータウン・スイート
07:というわけで
08:あ、すいません。
09:2CV
10:ごめんね坊や
11:リトラクタブル
12:サーフィン・ウィズ・チキンカリー
13;続・あ、すいません。
14:もうねぇ
15:本牧は午前零時
16:踏切シャッフル
17:あ、すいません。 <LP version>
18:世界、西原商会の世界!
19:スパークだ!

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