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Artist Voice ― OGRE YOU ASSHOLEインタビュー

2014/12/05掲載

細緻だがスカスカで、構築されているが厚みを持たない。ミニチュアでミニマルだが、見る者の視点を通じることでロマンチックにふくれあがりもする。夢の実現のようでも、廃墟のようでもある紙の建造物。あるいは、そんな現実。
 まったく、『ペーパークラフト』ほど、ORGE YOU ASSHOLE(以下、オウガ)が新作でやろうとしたこと、なしとげていることを言い当てている単語はないかもしれない。プロデューサー石原洋、レコーディングエンジニア中村宗一郎という、ゆらゆら帝国を手がけていたコンビに身を託して6年。より緊密な共同作業を求めて、バンドの音が解体されてしまうほどのサウンド・プロダクションによって周囲をあっといわせた12インチ・シングル「浮かれている人 TWILIGHT EDITION EP」と、その衝撃に続いたアルバム『homely』から約3年。当初は知らない同士でしかなかったバンド対プロデューサー / エンジニアだが、現在は「“こんな感じ”という程度の石原さんの言葉を聞いても、お互いに同じものを見てる感覚がすごく強くなってきてる」(馬渕 啓 / g)と公言できるほど、チームとしての呼吸も完成度もあがってきている。
 「これを言いたい」や「こう感じてほしい」からどこまでも遠くに行った結果、感情の輪郭だけが残って、そのかたちを見て「きれいだな」と思ったりする。人間はいないはずなのに人間味だけがあるとでもいうような、奇妙な温かみがアルバムをすっと浮き上がらせている。
 LIQUIDROOMで森は生きているとのライヴを終えた翌日、オウガの4人に話を聞いた。


ミニマムとメロウの両立

「“次はミニマルでメロウなものをやろう”という単語が出たのは、去年の年末でしたね。ロック・バンドで、ミニマルとメロウの両方やってるのってあんまりないかなと思って、ちょっとチャレンジしてみたんです。メロウな曲を作ってみて、普通だったらそこに歌うようなベース・ラインとかリフで説明していくようなアレンジがあるのが演奏してみても気持ちいいんですけど、そこの対極にあるミニマルって要素を加えると、上モノとリズム隊に距離感があるまま詰めていくことになる。いいものができそうな予感もありつつ、演奏としてはちょっと気持ち悪いみたいなのはありましたね」(出戸 学 / vo, g)

「その前のアルバムに“サイケデリックAOR”っていうような流れがあって、そこに“メロウ”ってキーワードが付くことで筋が通った感じだと思うんです」(勝浦隆嗣 / ds)

  「〈見えないルール〉と〈誰もいない〉はもともと先にあって、ミニマル・メロウって話になってから最初にできたのは〈他人の夢〉でしたね。でもできあがってみたら、あんまり“ミニマル・メロウ”でもなかった(笑)」(出戸)

  「でも、その感覚は意外とみんな共有してると思うんですよ。いわれたときに“え? どういうこと?”とは思わなかったし、〈他人の夢〉を持ってきたときにも“おお、ミニマル・メロウだな”と思ったし」(勝浦)

 たしかに、オウガの近年のサウンドを指して、“サイケデリックAOR”という単語が使われることはあった。重層的なギター・サウンドやメランコリックなメロディと、現代的な意味でのファンク・グルーヴを意識したリズムの融合が醸し出す酩酊感は、レコーディング作品、ライヴの双方でそれぞれの魅力として昇華され、高い評価と熱量のある動員を作り出してきた。
  「次はもっとエクストリームでノイズまみれの、どっちかというとライヴでやってることに近くするかという発想もありましたよ。でも、なぜかミニマルでメロウな要素が加わっていった」(出戸)
 
  じっさい、新作を聴いた誰もが感じるであろうことは音数の少なさだ。それも、研ぎすまされたというより、最初から音がない。そういう感覚の獲得。
 「引き算じゃないよね。足したらこうなった、みたいな」(清水隆史 / b)
 
  「初めはもっとなにもなかった(笑)。それで“これくらいだったら成り立つかな”というところでとめたという感じですね」(出戸)

音と私

 出戸作のクレイ・アニメを使ったMVも秀逸な「ムダがないってすばらしい」の異様な音構成にも象徴されるように、これくらい音があれば成り立つというそのぎりぎりが、ここにはある。その世界観は、アルバム前のシングルでもあった「見えないルール」でも出戸が予見していたように、膨大な情報や法律が人を縛り付けているわかりやすい危機ではなく、巨大な無意識があらゆる方向から人をやわらかく包み込み、ふわふわとした甘さで人を圧迫する地獄みたいな世界に現代が近づきつつあることへの反応でもあるように思えた。
  「でも、僕らは“時代を見てこの手を指してきた”という感じはないんですよ」(出戸)

   「やりたいことの中心が最初にわかってるわけじゃないんです。やってくうちに、ああ、こういうものがありそうだというのが逆に見えてくる。それがたぶんおもしろいんですよ。それが、こうして続けることでかたちになりやすくなっているんです。ライヴとCDの違いにしても、どっちも目的ではなくて手段なんです。言葉ではいえないやりたいものがあって、それを表に向ける窓口がCDだったりライヴだったりする。中心になるものはあって、それをフォーマットに合わせて出してるんです。何かが目的になっちゃうと、そこに吸い寄せられちゃって別のものになっちゃうから、その自由さみたいなものはすごく大事な気がします」(勝浦)

   「ライヴって普通だったらバンドとお客さんの一体感みたいなのがあって、そこが求められたりするじゃないですか。でも、僕らとお客さんのあいだには壁まではいかないですけど薄い何かがある。僕らが盛り上がってるのを見て、ばらばらのお客さんがひとりひとり何かを感じてるというか。暴れたり踊ってる人もいれば、寝ながら聴いてる人もいる。そういう振れ幅のある感じになってきてるんですよ」(出戸)

   「お客さんでも目を閉じてる人が多いんですよね。もはや“バンドと私”とかじゃなくて、“音と私”みたいな感じになってる。でも、それでいいんだったらいすごくうれしいというのはありますよね」(清水)

 

 『homely』『100年後』から『ペーパークラフト』への流れを、モダン・サイケデリック三部作の締めと見る向きもある。だが、新作『ペーパークラフト』にあるのは、ひとつの円環の帰結や、なんらかの結論の提示というよりむしろ、さらにその先への結論の解放だと思えた。“音と私”以外には何もない。それが信じられる世界に鳴るであろう音を、もしかしたら僕は垣間見ているのかもしれない。

取材・文/松永良平(CDジャーナル12月号)

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NEW ペーパークラフト


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収録曲
[Disc1]
1.他人の夢[7:34]
2.見えないルール[5:45]
3.いつかの旅行[5:32]
4.ムダがないって素晴らしい[6:35]
5.ちょっとの後悔[6:32]
6.ペーパークラフト[5:16]
7.誰もいない[4:56]

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