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Artist Voice ― FAITH NO MORE

2015/6/1掲載

FAITH NO MOREインタビュー

再結成によるライヴ活動再開から5年。独特のミクスチャー感覚とメンバー個々の強烈なキャラ立ちで1980年代末 90年代のオルタナティヴな激重ロック界をあれこれ突っつき回し続けた知的な暴れん坊、フェイス・ノー・モアの18年ぶり新作『ソル・インヴィクタス』がついに登場する。慎重に準備された同作のプロデューサーを務めたビリー・グールド(b)に、変わり者クリエイター集団の現在と新作誕生までの道程について話を訊いた。






再結成からアルバム制作までこんなに時間がかかったのは…

――昨晩の日本公演初日のステージはキーボードの機材トラブルにもかかわらず、ロディ・ボッタム(key)以外の全員が何ごともなかったかのようにショウを進めていくのが面白かったというか、何というか……実際は焦ったのではないかと思いますが。

■ビリー・グールド(b)(以下ビリー)「もちろん最悪な事態だったけれど、ある意味、バンドにとっては最高の出来事になったと言えなくもない。とにかく頭を使って即座に対応しなけりゃならなかったし、実際そうできたので、えらく疲れたけれど刺激的な体験ではあった……かな(苦笑)」

――なんと逞しい。それもキャリアを積んだバンドならでは、そして再結成以来もう5年以上もライヴを続けてきた成果ですね。

■ビリー「演出も飾りもない素っ裸のバンドを目撃できたんだから観客にも貴重な体験さ(笑)」

――たしかに。フェイス・ノー・モアはそもそも決まりきった演出をツアーを通して繰り返すヒット曲再現マシンではないし、かといって自由気ままな即興集団というわけでもなく、その中間の位置でライヴに関心を抱かせてくれるようなバンドですしね。

■ビリー「ああ。たしかに俺たちには何故かよくハプニングが起こる。今じゃコンサートに来る皆がそれを期待してるところさえあるだろ?(苦笑) 実際にヘンなことが起こったほうがベターな結果につながることもあるんだよ。俺たちは運命に身を任せるだけ。慣れてる」

――そんな予期せぬ事態に対処していくとき、バンドのなかでいちばん頼りになるのは誰なのでしょう? ビリーなんですか?

■ビリー「一人の人間で確実に対処できるんだったら、それは全然チャレンジじゃない。たしかに俺は頭のなかが整理されてるほうだと思うけど、状況次第。いま、バンドは自信と信頼が固まっていると確信できる。どんなハプニングでも解決できそうな気分だ」

――昨晩のステージでそれがよくわかりました。でも、ことアルバム制作に関しては活動再開後もけっこう腰が重めでしたね。

■ビリー「お互いの信頼をここまで固めるまでにこれだけ時間がかかったということなんだ。俺たちは再結成後、もう長いことうまくやってきているけれど、アルバム制作はまた別のプロセスだから。新作を作れば新しいツアーに出なくちゃならないし、こうしてインタビューも受けなきゃならない……ああ、俺たちはもう20年もこういうバンドの将来について話すような取材を受けずにきて、それはそれでかなり快適だったんだけど(笑)」

――え?

■ビリー「いや、とにかくそういうすべてをバンド全員で一緒にこなしていけるのか、ということの確認も含めて、こんなに時間がかかった」

――アルバムを作るというのはそんなに簡単なことじゃないのですね。

■ビリー「俺たちの場合はとくにね。でも、いまじゃ聴いた人がたとえ“気に入らない”と言ったとしてもまったく気にならないくらいの心境さ。俺たちはこれでいい、ハッピーだと言いきれる。不安はまったくない」






長い付き合いのなかでつかんだお互いの心地よい落としどころ



――完成した新作『ソル・インヴィクタス』は、昔から聴いてきた人なら“まさしくフェイス・ノー・モア!”と実感できるような要素がちりばめられたアルバムだと思いますよ。

■ビリー「俺自身も本当のところ、フェイス・ノー・モア以外の何物でもないと思っている。メンバー一人ひとりが持ち込んでくるものはさまざまで変化している部分もある。でも俺たちがやることはすべてバンドの一部だし、そこに起こる化学反応、そこから浮かび上がる風景こそがフェイス・ノー・モアそのものなんだ」

――今回、プロデューサー役を務めたのもビリーだとか。外部プロデューサーが関わらないアルバムはバンド初ですが、化学反応のとりまとめ役というのはどんな仕事なのでしょう? メンバー全員、かなりクセの強い音楽家たちだと思うのですが、持ち寄ったアイディアやその結果にあなたがきっぱりゴー・サインやダメを出したりするのですか?

■ビリー「そういうこともあったかな。いつもそうできたらもっと早く完成したんだろうけど。いや、現実はもっとはるかに面倒だよ。最終的にはじっくり議論するしかないし、そうできる人間の集まりだしね。うまくいってると思うときには素直に伝えればいいだけだから簡単だけど、そうでないときはメンバー同士で解決していく。“なにやってるんだ”“黙れ!”“それだそれ!”みたいな言い方はしない。俺はもともとそういうタイプじゃない。“ちょっと考えてみようか”“クリエイティヴな側面からは悪くないと思うけど”……とか(笑)。結局はうまくいく。俺たちは長い付き合いのなかで、それぞれの心地よい落としどころをお互いよく知っているから」

――ミックスにはバンドの初期段階で定番プロデューサー / エンジニアだったマット・ウォレスも関わっていると耳にしましたが、もしや今回のアルバム制作には原点回帰の意図がもともと頭にあったのですか?

■ビリー「いや、録音から引き続きで俺がミックス作業をしてたんだけど、終わらないうちにツアーの準備が始まったので、その段階でマットに手伝ってもらうことにしたんだ。彼とは長い付き合いでバンドの一部みたいな存在だから、あれこれ話を詰めなくても俺たちと感じ方や考え方が共通している。おかげで作業がはかどったし、結果も良かったと思う」

――新作は曲の緩急、重さと躍動、暗さと快活さのバランスや流れが以前同様に練られていて、アルバムという形態の醍醐味が詰め込まれた作品だと感じました。その起伏こそがあなたたちらしさそのものであるような……。

■ビリー「たしかに!」

――でも、時代が変わって、世間ではアルバムというフォーマットの存在意義が揺らいでいるようにも言われています。この間のグラミー賞授賞式でプリンスが「みんな、アルバムって覚えてる?」とスピーチしたのが話題になったり。この点、どうお考えですか?
■ビリー「たんなる好みの問題にすぎないとも思うけど、確実なのは、俺たちが年寄りだってことかな(笑)。俺たちはアルバムを聴いて育った。だからアルバムという形で聴き込んだり、それをクリエイトしたりすることこそが大きな満足感をもたらしてくれるんだな」

――雑誌の特性からして、この『CDジャーナル』読者の多くは同じ感覚だと思いますよ。

■ビリー「オーケー、それはいい!」

取材・文 平野和祥 Photo by Dustin Rabin CDジャーナル 2015年5月号掲載

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NEW ソル・インヴィクタス


2015年05月13日
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収録曲
[Disc1]

1.SOL INVICTUS
2.SUPERHERO
3.SUNNY SIDE UP
4.SEPARATION ANXIETY
5.CONE OF SHAME
6.RISE OF THE FALL
7.BLACK FRIDAY
8.MOTHERFUCKER
9.MATADOR
10.FROM THE DEAD
11.SUPERHERO BATTAGLIA (JAPAN BONUS TRACK)

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