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Artist Voice ― John Patitucci

2015/7/13掲載

音楽と人が出会う場所、ブルックリンに生まれてジョン・パティトゥッチ インタビュー

ベースの第一人者、ジョン・パティトゥッチの待望の新作が6年ぶりにリリースされた。メンバーはギターにアダム・ロジャースとスティーヴ・カーディナス、そしてドラムにブライアン・ブレイド。アルバム・タイトルの『ブルックリン』は、彼の生まれ故郷である




音楽に囲まれていた少年時代



■ジョン「前作の『リメンブランス』をリリースしてからこれまでの間に、何もしてなかったわけではなく、曲も作っていたし、ブライアンとも何かアルバムを作りたいねと話してたんだ。このアルバムを作るきっかけは、従兄弟がぼくのドキュメンタリー映画を撮りたいと言ってきたことからなんだ。ま、映画も悪くないけど、それに合わせて新しいアルバムも作るという話があって、むしろ、ぼくとしてはそちらに興味があったんだ」

――このアルバムには、そうした背景がある。ブルックリンに生まれ育ち、一体その環境から何を得たか。

■ジョン「ぼくの少年時代には、たくさんの音楽が周りにあったんだ。ジャズもブルースもR&Bもファンクもポップスも。ぼくの中には、そういうたくさんの音楽が自然に入っている。もちろんクラシックもね。そして、イタリアのコミュニティ文化や家族も重要だった。兄がギターを弾いていて、ぼくも最初はギターを弾いていたんだけど、左利きだったこともあって、何か面倒になってね。それじゃあ、ということでベースに替えて、この楽器にはまったんだ」

――パティトゥッチはチック・コリアのグループで華々しく登場し、当時はエレクトリック・ベースの才人というイメージだったが、むろん、アコースティック・ベースの達人でもある。

■ジョン「本格的にベースをやるなら、アコースティックもやったほうがいいと言うので、クラシックの先生について基礎を勉強したんだ。もともとクラシックも好きだったから、音楽大学で勉強を続けた。先生たちはクラシックの世界に進むだろうと確信していたようだが、あらぬ方向で活動を始めたから、ビックリさせたようだ。ジャズやほかの音楽に関心があったなんて、ぜんぜん言ってなかったからね(笑)」

――そんなわけで、自然にパティトゥッチは、両方の世界の名手なのだが、これらの訓練が双方にいい結果をもたらしたこともあるだろう。

■ジョン「クラシックのアコースティック・ベースは、いかに楽器を響かせるかということが重要だけど、それだけじゃなく難しい運指もたくさんあって、そういったことを懸命に勉強したんだ。それがジャズの演奏でも役立っているだろうし、エレクトリック・ベースの演奏にも影響してるかもしれない。また、その逆もあるだろう。ひとつの世界で得られないものがたくさんあるんだ」

人と人が出会って世界が生まれる

――この新作では、アコースティックは弾いていない。そういう意味でも、彼がこの道を目指したブルックリン時代を振り返ったアルバムということになる。

■ジョン「さっきも言ったけど、当時のブルックリンにはたくさんの音楽があったんだ。後になって共演したジャズ・ミュージシャンと話していたら、家のすぐ近くにたくさんのミュージシャンが住んでいたことを知ってびっくりした。まだほんの子供だったんで、そんなことも知らず、ライヴハウスにも行けなかったけどね。でも、そういう環境にいたことはたしかなんだ。」

■ジョン「たくさんの音楽に親しんでいたのは、参加してもらったブライアンも同じ。彼がすごいのは、いろんな音楽の歴史をとてもよく知っていることなんだ。ジャズ・ミュージシャンがジャズの歴史を知っているのは当然だとしても、彼はギターも弾くし、歌もうたう。彼がユニークなのは、そうした貪欲な探求心なんだよね。まさに、トータルな音楽の先生なんだ。ブライアンを最初に知ったのは、ジョシュア・レッドマンのアルバムを聴いたときだった。こいつは誰なんだ? とビックリしたね。正式に会ったのは、ダニーロ・ペレスのトリオが最初で、その後、ウェイン・ショーターのグループでも一緒に演奏したんだ。当時、ショーターが新しいことをやりたいというので、ダニーロとブライアンを呼んだんだ」

――このアルバムはブレイドの存在も重要だが、もっと印象的なのは、なんと言っても2人のギタリストの存在だ。影響を受けた兄がギタリストということもあるが、パティトゥッチにとって、ギターは特別な楽器のようだ。

■ジョン「今回は、ピアノやキーボードを避けて、あっさりとギター・アンサンブルにしたいと思った。なぜギタリスト2人かというと、ビル・フリゼールとジョン・スコフィールドの共演が大好きで、あれが重要なヒントになった。アダムとスティーヴは昔からの仲だから、当然こころよく引き受けてくれた」

――アルバムには、なぜか2曲のセロニアス・モンク曲がある。カーディナスはモンクの研究者で本も出しているが、この選曲は彼のアイディアなのかと聞くと、

■ジョン「いや、これはぼくのアイディアなんだ。ぼくもモンクが大好きだからね。ぼくはジョン・コルトレーンが大好きで、よくモンクとの共演盤を聴いていたんだ。それでモンクにも夢中になった。その後、ロイ・ヘインズとかいろんなミュージシャンと共演したけど、みんなモンクが大好きでね。たくさんのモンクの曲を演奏してきたよ。モンクは本当にオリジナルの人で、メロディもユニークだけれど、強烈なリズム・アタックがあって、とても素晴らしい」

――さて、モンクも天才的だが、パティトゥッチとブレイドとなると、やはりもう一人の天才と言ってもいい、ウェイン・ショーター・グループでの演奏が話題になった。

■ジョン「ショーター・グループの演奏は素晴らしい。でも、その先の未来はと問われると、これは誰にもわからない。ただ言えることは、それは絶対、一人ではできないということなんだ。このアルバムは、たしかに回顧的なところがあるけど、本当のメッセージは音楽の未来についてなんだ。さまざまな音楽が混交し、さまざまなミュージシャンが出会って、新しい時代が開かれる。人と人、新しい才能が出会って、そこに誰も予想ができない世界が生まれる。その得体の知れない不思議なものを共有することが、先に進むということだと思う」

取材・文 青木和富 撮影 米田泰久(写真提供 COTTON CLUB)CDジャーナル 2015年7月号掲載

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発売日
2014年05月24日

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収録曲
[Disc1]
01. IN9-1881 / The Search 8:28 (John Patitucci)

02. Dugu Kamalemba 5:52 (Oumou Sangare)

03. Band of Brothers 5:40 (John Patitucci)

04. Trinkle Trinkle 6:07 (Thelonious Monk)

05. Ugly Beauty 6:25 (Thelonious Monk)

06. JLR 6:46 (John Patitucci)

07. Do you? 4:01 (John Patitucci)

08. Bells of Coutance 3:01 (John Patitucci)

09. The Thumb 4:35 (Wes Montgomery)

10. Go Down Moses 4:52 (John Patitucci)

11. Tesori 3:57 (John Patitucci)

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