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Artist Voice ― ハワード・ジョーンズ

2017/1/17掲載

待望の新作は、往年のヒット曲を彷彿とさせる最新型エレポップ!

2012年に日本でも行なわれた名作『かくれんぼ』と『ドリーム・イントゥ・アクション』の再現ライヴが大盛況。2010年に発表された9枚目のアルバム『オーディナリー・ヒーローズ』に続く新作に期待が高まっていたが、ついに10作目『エンゲイジ』を届けてくれた。新作では、前作でのオーガニック路線から一転、ハワードらしい最新型エレポップを展開している。衰えぬ創造性に貫かれ、日本盤には前述のライヴ音源も収める新作について話を聞いた。





発想の原点にあったのは“ライヴ体験”



――前作はピアノ&ストリングス編成による作品でした。アコースティックを中心とした音作りでしたが、新作ではあなたらしいエレクトリック路線に回帰しましたね。

■ハワード・ジョーンズ「前作は、書いていた曲が非常に私的なものだったので、アコースティックなアレンジが合うだろうと思ったんだよね。弦楽四重奏や、ギター&ベース、それとバッキング・ヴォーカルを使うのが、あの歌に込められた感情を伝えるのにいちばん適していると思った。僕自身はひとつひとつのアルバムを独立したプロジェクトとして捉えているんだ。その前にやったこととは違うことをつねにやりたいと思っている。だから、この新作がガラッと趣向の変わったものになったのも自然なことなんだ」

――ということは、新作が伝えたいメッセージや世界観に最適だったのが、エレクトリックなサウンドだったというわけですね。

■ハワード・ジョーンズ「そのとおり。電子楽器をまた使いたいと思ったのはたしかなんだけれど、今作の発想の原点にあるのは“ライヴ体験”だったんだ。だからアプローチも従来のスタジオで制作する作品とはまったく違う。むしろ、観客も参加するライヴ・イベントを企画する、という趣旨のものだったんだ。そこに、バレエ音楽や映画音楽の要素だったり、現代舞踊をさらに取り入れ、僕の好きな哲学者たちの言葉を引用したりもした。そうやって曲を書くのと並行して、その曲に連動させる映像も作っていたんだ。曲と映像を同時進行で制作していき、完成形が見えてきた段階でライヴを行なった。演奏と映像を融合させたそのステージの模様も撮影して、アルバム作りにいかしたんだ」

――ずいぶんと手の込んだ制作ですね。

■ハワード・ジョーンズ「そうだね(笑)。ライヴ後、ふたたびスタジオに入って、やっと楽曲が完成したんだ。なぜそういうプロセスを経たかというと、観客にも作品作りに参加してもらいたかったんだよね。『エンゲイジ』というタイトルのとおり、“関与する / 参加する”というのが趣旨で、観客に自分たちは単なる傍観者だと思ってほしくなかったんだ。だからライヴでは、観客が自分の服をカスタマイズできるものを用意したりした。会場に入ると、暗闇で光る手袋だったり、光るテープだったりを渡して、着てきた服を特別仕様にできるんだ。ほかにも、アプリを開発して、ライヴでそれを立ち上げると、ステージで繰り広げられている演奏に合わせた映像が見られたりするなんてこともやったよ。あと、ロビーにはメイキャップ・アーティストがいて、その日だけの特別なメイクをしてライヴを楽しんでもらったんだ」

――ライヴでの観客の反応や空気感をアルバムに取り込みたかったということでしょうか。

■ハワード・ジョーンズ「それもある。まずは作品に参加してほしいという気持ちだったけれどね。その反応を肌で感じて初めて見えてくる改善点もあって、できるかぎり完璧なものにするために、ライヴの後に手を加えた部分もあったよ。そういう意味では、アルバムを出してからライヴをやるのと真逆の発想だったね」



どんな楽器もパレットの絵の具のひとつ



――また、エレクトリックといっても、あなたの音楽の場合はすごく音色が柔らかく、有機的に聴こえます。曲が持つテーマや歌詞の内容によって変化すると思いますが、エレクトリックな楽器を有機的に扱うことを意識しているのでしょうか?

■ハワード・ジョーンズ「エレクトリックな楽器もほかの楽器と変わらないと僕は思っているんだ。大事なのは、それをどう使うか、どんなサウンドを組み合わせて、何を伝えようとしているかだと思う。だから僕にとってエレクトリックな楽器はピアノやチェロとなんら変わらない。僕の中で線引きはないんだ。音楽を作る時に使う音のパレットの絵の具のひとつでしかない。それをどう使うかは、作曲者とアーティスト次第なんだ。“有機的”という言葉はなかなかおかしな言葉でね。音楽というのは本来、人の感情に訴えるものであるべきで、僕はつねにそういうものを作ろうとしてきた。音楽を始めた時からそれは変わらない。1983年にデビューした時に苦労したのは、当時起きていた電子音楽の台頭に人々がまだ慣れていなくて、大好きになる人もいたし、それ以前の音楽と形態が違うというだけで拒否反応を示す人もいた。今でこそ、エレクトロニック・ミュージックも、その楽曲やそれを作るアーティストも理解されるようになったけどね。ある時期までは電子音楽というだけで、どこか劣っているものと思われていた。ピアノだって弾く人によっては機械的、あるいは無機質に演奏することもできるって僕は言ったことがある。同じことがほかの楽器にも言えるよね。肝心なのは、その楽器をどう使うかであったり、演奏の技量であったり、アーティスト側の感情に訴えたいという意図があるかどうか、ということなんだ」

――アルバムの曲は今を大切に生きること、冷笑主義に打ち勝つこと、すべての人を敬うこと、普遍的な兄弟愛 / 姉妹愛がテーマとなっていますが、現代社会において普遍的で当たり前なテーマでありつつも、なかなか実現ができていないと思います。この作品を聴く人にあらためて認識してほしかったということでしょうか?

■ハワード・ジョーンズ「活動を始めた時から、自分の作品を通じて、そういうことを伝えたいという思いはあったけど、今回のプロジェクトではとくにそれが顕著に表われていると実感している。この『エンゲイジ』は聴き手をいろいろな気持ちや感情の旅に連れていってくれる作品になったと思う。物事のなりゆきをただ見守る傍観者にとどまるのではなく、物事を変えて、状況を打破したいのなら、すべての人が関わりを持つようにならないといけない。みんながなんらかの行動をとらないといけない。それがアルバムの包括的なテーマなんだ。2017年1月に行なう日本のライヴでも、ぜひそのテーマやメッセージを感じて、触れてほしいと思うよ。それから“ジャパン・デラックス・エディション”に収められるビルボードライブでの『かくれんぼ』と『ドリーム・イントゥ・アクション』のライヴ音源もぜひ楽しんでほしいな。ちょうどこの週末に録音が大丈夫かチェックしながらずっと聴き返していたところだったんだけれど、我ながらいい演奏だと思うよ(笑)」

取材・文 油納将志 Photo by David Conn CDジャーナル 2017年1月号掲載

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発売日
2016年12月21日

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収録曲
[Disc1]

1.エンゲイジ[37:33]
2.シーズ・ザ・デイ[4:01]
3.ザ・ウォーク[3:33]
4.ファイヴ・ピアノズ[5:25]
5.シスター・ブラザー[2:43]
6.ジョイ[4:33]
7.ヒューマン・タッチ[4:16]
8.ホールド・オン・トゥ・ユア・ハート[7:14]
9.ザ・ムーン・オーヴァー・カマクラ[4:02]
10.ホールド・オン・トゥ・ユア・ハート (シングル・ミックス) <bonus track for Japan Only>[4:01]

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