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2014.12.10 更新

モーニング娘。'14 道重さゆみ卒業公演(2014.11.26)レポート

 今回は横浜アリーナで行われたモーニング娘。'14の道重さゆみ卒業公演について。

 詳細なライヴレポートはあちこちで見られるので、僕は主に道重さゆみについて、印象に残ったところをピックアップしたいと思います。
 この日は新生スマイレージのお披露目や、モーニング娘。の新リーダーとサブリーダーの発表、道重が鞘師里保のくちびるを奪う(!)シーンなど、色々なトピックがありますが、何と言っても、この日のために用意された長尺メドレーを歌った中盤以降があまりに劇的でした。
 メドレー序盤に、道重が少しだけ足を触れました。その時に、「あれ?」とは思ったのですが、足を痛めたとはっきりわかったのは、メンバーがメイン・ステージからアリーナ中央のセンター・ステージに移ったにも関わらず、道重だけがメイン・ステージに残って歌った時でした。演出にも見えましたが、フォーメーションのピースのひとつが欠け、“穴”が空いたので気付きました。
 2年前に道重へインタビューした際、激しいダンスが増えていく一方で自分の体力が落ちていることを自覚し、「意外と切実な悩みなんですよ」と半ば冗談混じりに話していたし、ツアーの裏側を切り取ったDVDマガジンでは、足がつってしまうことへの悔しさを語っていました。近年のライヴでは、他のメンバーと比べるとヒールの低い靴を履くことが多くなっていました。おそらくは足への負担を軽くするためでしょう。

 道重は、横浜アリーナ当日に可愛さのピークを持ってきたと言いましたが、体力に限ってはそうではなかったんだと思います。しかしそれでも、よりによって卒業ライヴでこんなことが起きようとは……。そこからはドラマティックな展開になりました。トラブルが発生したからこそ見えてきたものもありました。
 “穴”に気付き、トラブルを察したメンバーたちは、何も起きていないかのようにそこをサッと埋め、9人でのフォーメーションを描きました。昨年秋のツアー最終日に道重が「後輩たちが頼もしくなっていた」と語っていた映像がフラッシュバックしました。見事なリカバーだったと思います。メイン・ステージに残った道重も凛とした表情で屹立し、メドレーを続けたのも鬼気迫るものがありました。

 そして何と言っても「好きだな君が」には胸を打たれました。道重と譜久村聖によるデュエットで、センター・ステージで歌う予定だった曲(後日行なった譜久村への単独インタビューで確認しました)。しかし2人は2〜30メートルは離れた位置にいるわけです。道重は足のトラブルで動けない。そこで譜久村は、「好きだな君が」が始まる直前にメイン・ステージ道重のもとに駆け寄り、無事にデュエットを歌い切ったんですね。アイドル史に刻まれる名シーン、名ダッシュだったと思います。譜久村はコンサート序盤にグループの次期リーダーに任命され、自らを「モーニング娘。史上最も頼りないリーダーと思われてしまうかもしれませんが」と言ったその数十分後に、機転を利かせた大仕事。頼りになりまくりでしょう! 近づく譜久村を見て安堵した道重の表情も忘れられません。毅然とした態度を取っていたものの、やはりものすごく不安だったんだなと。
 やがてメンバー全員がメイン・ステージに戻り、道重は、鈴木香音・飯窪春菜・佐藤優樹・工藤遥・小田さくらが「青春コレクション」を歌っている間に一旦ステージをはけたのですが、全員曲になるとまたすぐに戻ってきました。意地でも役割を果たそうとするのが伝わりました。個人的にはこのメドレーを止めてほしい、どうにか無事でいてほしいと願うのと同時に、そのエモーショナルな流れに痺れしっぱなしでした(残酷なものですね……)。

 そこからの道重はステージ中央の階段に座ってのパフォーマンスになりました。履いていたブーツもスニーカー(おそらくは練習用のもの)に変わりました。晴れの大舞台で、衣裳の一部が纏えないという哀しみは想像に及びません。自分の歌割りをまっとうしながらも、歌パートがない場面では悔しさで涙する瞬間もありました。アイドルとして裏側を見せずにパーフェクトにこなそうとする側面と、ついこぼれ出てしまう人間らしい感情の同居が道重さゆみの魅力だと思っているのですが、卒業コンサートの後半では、その両方が極端な振れ幅で見られたと思います。「シャボン玉」で膝をついて歌うパートがあるのですが、そのまま立ち上がれずに歌い続けるのはすさまじかったし、「Password is 0」で懸命にジャンプする姿に肝を冷やしました。
 本編終了後、アンコール一曲目は「見返り美人」。道重以外のメンバーが歌う演歌調の曲で、ここで歌われる“見返り美人”とはもちろん道重のこと。12期メンバーもパフォーマンスに参加する中、着物姿の道重が登場。ただ歩き、振り返るだけの超シンプルなパフォーマンスなのに、どうしても目が離せない。あらためてこの曲の中心は道重さゆみなんだなと感じました。常日頃から歌もダンスも取り柄ではないと語ってきた彼女がすべてを取っ払い、自らの人間力だけで勝負するという曲。9人がかりの歌すらをも伴奏にしてしまうほどの迫力がありました。

 そして卒業セレモニー。しかし道重は立つのも辛かったのか、ステージで崩れ、「暗くしてもらってもいいですか」と言って照明を落とさせました。そんな時でもトラブルを見せまいとしていたのが涙ぐましかったし、暗い中で「さゆみん」コールを促したメンバーも素晴らしかったと思います。譜久村は、ここで応援するのは道重に無理させることにならないかという葛藤もあったそうです。そう考えたこと自体がとてもいい話ですよね。
 メンバー1人ずつの道重へのコメント、そして花畑をモチーフにした衣装に身を包み、手紙を読まずにファンに向けて送った道重のスピーチ内容の詳細に関しては、色々なところで報じられている通り。道重のメッセージは、悔しさをユーモアに変える軽やかさと12年という月日の重みを感じさせる感動的なものでした。ソロで「赤いフリージア」を歌い始めた時のファンからの歓声は、その日一番大きかったのではないでしょうか。愛あるメッセージに対する返答のようでもありました。

 ……と、あまりに怒涛の流れだったので、道重さゆみが卒業するということについて整理できなかったのですが、アリーナ席の外周を歩きながら歌ったラストの「Happy大作戦」で、客席に向かって努めて笑顔を振りまいていた道重が、一周が終わる直前に顔をゆがませて泣いたのを見て、いよいよその現実がやってきたんだなと実感しました。モーニング娘。'14の、ひいてはアイドル界のアイコンは、こうして去っていくんだなと。おそらくは一生記憶から消えることのないコンサートになったと思います。

最後に打ち上げられた銀テープには手書きの文字でこんなことが書いてありました。彼女らしいコメントですよね。

「さゆみ、みんなのことがだーーーーーいすき ……このテープ…ちゃんと持って帰ってねーーー!!(笑)」

コラム記事:南波一海

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