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SMAPコラム「Map of SMAP」

楽天ブックスが、SMAPやSMAPメンバーの旬な情報を、コラム形式でお届け!
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 世界に一つだけの花
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Clip! Smap! コンプリートシングルス【Blu-ray】
ミュージックビデオを大幅に追加収録。
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 世界に一つだけの花
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Clip! Smap! コンプリートシングルス
収録曲:シングル55作品の両A面曲を含む全63曲の映像を収録予定
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 世界に一つだけの花
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世界に一つだけの花
TV:CX系ドラマ『僕の生きる道』(2003年1月〜)主題歌収録のシングル。
2013.7.30更新

リリースから8週間、あらためて「Joy!!」について考える。

SMAPは、いまこそ始まろうとしている。
 SMAPは、時代心理をうつしだす、現代日本においては稀有な存在である。
 1995年、わたしたちの国はふたつの大きな出来事に遭遇した。そしてわたしたちは否応無く変化せざるをえなくなった。変化とはなにか。次の段階に進むということである。「次」がなんであれ、進まなくてはいけない。それはときに混乱を招き、ときに恐慌すら呼び起こすだろう。そんなとき、うたが必要になる。わたしたちの荒れ果てた精神をなだめ、ざらざらしたこころを撫でるうたの力が必要になるのだ。
 あのときSMAPは、地震によって疑心暗鬼になったわたしたちに「たぶんオーライ」と語りかけた。オウムによって隣人に対してコミュニケーション不全に陥ったわたしたちに「しようよ」と誘った。わたしたち日本人はあのとき、無意識のうちにSMAPのうたに救われていたのである。
 2013年6月5日、SMAPは通算50枚目となるシングル「Joy!!」をリリースした。しかしそれはいわゆるメモリアルではない。メモリアルなら、自分たちの曲タイトルを織り込む「Smac」(2001)でとっくに済ましている。「Joy!!」はSMAPにとって「はだかの王様〜シブトクつよく」(1996)以来となる、正々堂々たるメッセージソングである。
 曲調の明るさ、愛くるしさは、一見、原点回帰を思わせる。アルバムで言えば『SMAP 006〜SEXY SIX〜』(1994)以前の世界観を。だが、それはこの曲を飲みやすくするカラフルなオブラートにすぎない。
 これはリ・スタートではない。SMAPの真新しい出発だ。SMAPはいま、始まろうとしている。いまこそ、ここから始まろうとしているからこそ、わたしたちは感動している。

SMAPは、わたしたちの「術」を肯定する。
 たとえば「あの頃の僕ら」というフレーズに宿っている初々しさ。これが結成四半世紀を迎えたグループの発語だろうか。ここにあるのは、あの頃はよかった……という後ろ向きなエコーではない。「思い出せ出せ 勿体ぶんな」という言葉にノスタルジーはない。「思い出す」ことが現在進行形の行為であることが、うた全体によって証明されている。
 SMAPはこれまでも日常を肯定するうたを紡ぎ出してきた。「たぶんオーライ」(1994)はさえない日々への讃歌だったし、「ありがとう」(2006)は見過ごしがちな奇跡への感謝だった。「Joy!!」でも「ごくろうさん」「おつかれさん」という社会生活者へのねぎらいは健在だ。しかし、かつてとは肯定の意味が違っている。
 これまでは、ひとの外側、つまり社会や世界を肯定してきた。あるいは、人間を外側から肯定していた。「世界に一つだけの花」(2003)はその顕著な例だろう。オンリーワンとは、外側から肯定する言葉に他ならない。「夜空ノムコウ」(1998)では「あれから」から今日までの時間を肯定していた。
 だが、「Joy!!」において歌詞は外側に向かっていない。ひとの内面に向かっている。
 中居正広が口にする「自ら」。香取慎吾が言う「術(すべ)」。つまり、ここでは「自らの術」が肯定されている。その肯定の力が、サビの「忘れかけてた魔法」の一語に集約される。わたしたちはまだ忘れたわけではない。忘れかけていただけだ。これがSMAPの流儀である。SMAPはいつだって、なにかを断定したりはしない。可能性としての余白を残す言葉遣いをする。
 「矛盾に寄り添う」というきわめて過酷な現実を稲垣吾郎はとてもスウィートにうたう。
 わたしたちには「それ」ができる――願いや祈りが、間接的表現に託される。人間は喜怒哀楽に振り回されているだけの存在ではない。SMAPは感情のみのうたをうたったことがない。知性だけのうたをうたったこともない。人間が感情と知性のはざまでジタバタしていることを体現しながら肯定する。

SMAPは、「他の誰でもない」鼓動を奏でる。
 わたしたちは、辛(から)い現実を甘やかに受け取ることだってできる。たとえば、それを潜在能力や治癒力と言ってしまったら、途端に押しつけがましくなる。SMAPは透明だ。「White Message」(2008)というシングル・タイトルのように。
 5人一緒に声が放たれるとき、SMAPは最も透明になる。「無駄なことを一緒にしようよ」というユニゾンは、楽曲中最もやさしく響く。
 自らの術を駆使しても、それは無駄なことになるかもしれない。この無常といえばあまりに無常な普遍を、どこまでも前向きにうたうのが、新しいSMAPの新しいスタートだ。
 勝ち/負け、成功/失敗、うまくいく/いかない、そんなことよりも大事なことをわたしたちは知っている。それは草剛によって届けられる「他の誰でもないのさ」というテーゼ。SMAPならではのカジュアルでセンシティヴなフォーメーションも、本作のPVでひとつの極みに達している。PVでは木村拓哉が先陣をきる。そうして、瞳から瞳へとなにかが手渡されていく。5人のアイコンタクトが、新生SMAPの船出を祝福する。
 「Joy!!」がなにを意味するかは、わたしたちひとりひとりに預けられている。PVのイントロにある環境音は、その大きなヒントになるだろう。足音、ざわめき、シェイク音、ミックス音、うがい、食べる音、ドアが開く音、閉まる音、チリリン……それらはすべて、外側の音ではなく、わたしたちの内側の音、体内の音、つまり鼓動のようなものではないだろうか。
 「他の誰でもない」鼓動こそが、311以後を生きつづけるわたしたちの、ささやかで確かな道標(みちしるべ)だ。

文:相田冬二

※このコラムは、楽天ブックスのオリジナル企画です。
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「Joy!!」


2013年06月05日発売

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