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SMAPコラム「Map of SMAP」

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TV:CX系ドラマ『僕の生きる道』(2003年1月〜)主題歌収録のシングル。
2015.7.14更新

『HERO』公開直前! 木村拓哉が発する言葉を、考えてみる。


「久利生方程式」は変わらない
 木村拓哉が『HERO』について語る言葉を聞くとき、感じること。木村拓哉は「を」を「wo」と発音する。多くのひとは「o」と発するし、わたし自身「o」ではあるのだが。
 このことは、彼が芝居しているときには意識したことがなくって、久利生公平ってどうだったっけ? と思っていま確認してみたら、映画『HERO』予告編には久利生の「を」は収録されていなかった。「目ェ見て話したいんです」だから「を」抜きなのだ。久利生って「を」抜きのひとなのかな。
 という前置きは、これから綴ろうとしていることには、特に関係ないと思う。
 
 木村拓哉の、特に印象に残った言葉を少し取り上げて、自分なりに考えてみよう。
 
 「久利生公平のキャラクターがすごくしっかりしてくれているので、ヘンな話、助かるというか。そのキャラクターと向きあう作業をさせていただいているときに、そこは固いですよね。あんまり悩む必要がないというか。自分も、観くださったひとたちと同じ時間、久利生と付き合ってきたので、「ここでどうするか?」って言われたときに、「いや、アイツだったらこうするでしょ」って。彼の「方程式」っていうものが変わってないので。相手が、中学生だろうが、それこそ今回みたいに、外交にも関係するような「治外法権」だったりしても。「y=x²」っていうような僕らが共通で、一時アタマに入れた、その変化形みたいな「久利生方程式」っていうものがあって。それに当てはめれば、「だって全部、答え出てくるじゃないですか」っていうのが、不変のものでもあるし、いつもそこに当てはめて考えることができるので」
 
 活字化の便宜上、8文にしてはいるが、実際は、一息で話している印象がある。木村拓哉のなかでは、これらのことはひと続きにあって、それぞれのファクターは同時に偏在していて、ぐるっとくっついて、円を描いている。
 「方程式」という、久利生の姿勢、信条についての単語は木村らしい比喩的表現だが、「y=x²」という具体を前置きしている点がミソだ。木村が用いる比喩は決して抽象的なものではない。ここで「僕らが共通で、一時アタマに入れた」と語っているように、だれにも覚えのあるなにか、つまりサンプルを提示した上で話す。
 たとえば、木村が「オレ、久利生、好きですね」とか「すごく身近に感じます」などと発言したのを、わたしは耳にしたことがない。彼は、そういう直裁な物言いをしない。
 はぐらかしているわけではないし、ごまかしているわけでもない。照れは若干あるのかもしれないが、カモフラージュとしてのことばではない。
 彼が、具体性のある比喩を用いるのは、おそらく、自分のことばを聴くひとが、あるいは読むひとが、想像する余地を残すための、丁寧な表現なのだと思う。
 言うまでもなく、比喩というのは、そのものズバリの表現ではなく、聴く者、読む者の脳内で、飛翔、昇華、発光、発酵していくことばのことである。
 ここで、さらに見逃せないのが、「自分も、観てくださったひとたちと同じ時間、久利生と付き合ってきたので」という、観客と自身の並列化である。『HERO』シリーズが辿ってきた「時間」を、このようにあらわすのは、彼にとってことばが聴く者、読む者とコネクト(接続)するものであることを証明している。


「ビストロ」を掲げる定食屋さん
 その後につづいたことばは次のようなものである。
 
 「そこに、まだはまってないのが、女性っていう存在(笑)。いまだに、どこにもまだ「入ってない」というか。(「方程式」を変えればいいとして)「計算式」が変わった瞬間に、それがすんなりいけばいいんですけど。たぶん、円周率並なんじゃないですか。どこまで行くの? っていう」
 
 ここで、わたしは、「(円周率だったら)割り切れないじゃないですか」と合いの手を入れたのだが、それに対して、木村は即座にこう答えたのだった。
 
 「うん。じゃあもう面倒くさいから「π(パイ)」で表現しちゃおうよ、みたいな、そういうことになりかねないんじゃないかなと思いますけどね」
 
 木村は「久利生は恋愛感度が低すぎる」「(女性に対する)アンテナの電源が入っていないのではないか」といったことばを既に発しており、それを受けた上で「久利生方程式」に当てはまらないのが女性だ、としている。
 ここで「π」という一語をもってくるのも、木村ならではだ。無論、「円周率=π」ではあるのだが、「π(パイ)」という音を使うことで、久利生のパーソナリティの内部に横たわるある種の単純性(「もう面倒くさいから」が如実にそれを伝えている)が明瞭に浮かび上がる。
 これは、理屈に還元されないニュアンスであり、「y=x²」という堅苦しい比喩が、実は前フリだったのではないかと思わせる、爽快さがある。意味を超えた響きのある「π」が、やりとりを経て、ぽんと提示される。こうした鮮やかさは、インタビュー時における木村拓哉のオリジナルな所作である。
 つまり、彼は、こんなふうに、自身が演じてきたキャラクターへの想いを語るのだ。
 それは『HERO』という14年半連れ添ってきたシリーズに対しても同様。「とても思い入れのある作品です」とか「これからも忘れることはないでしょう」といった紋切型(クリシェ)には絶対陥らない。
 
 「(吉田)羊ちゃんも言ってくれたんですけど。今回、雨宮(松たか子)が城西支部に還ってきて。で、久利生と何年か振りに鉢合わせたときの(ふたりの)会話を言ってるのを見て、「鳥肌が立ちました。『HERO』そのものだと思いました」って。この『HERO』という言葉、その響きとかたちが、実はなんでもない定食屋さんなのに、「ビストロ◎◎◎◎」みたいな看板を掲げているようで。でも、入って頼んで食べてみると、「確かに美味いよね」っていう。そういうものを提供できてるんじゃないかなって思いますけどね」
 
 カジュアルで、フラット。その分け隔てのない語り口は、木村拓哉と久利生公平の共通点ではある。だが、ダイレクトで真っ直ぐな久利生とは反対に、木村には、どこかやわらかくカーヴしていく奥ゆかしさがある。
 このひとが、『HERO』の主人公を生み出していることを、あらためて不思議に思う。



相田冬二
HERO

HERO

それは、究極の集大成にして比類なきマスターピース。

日本には『HERO』がある。
この夏、わたしたちは『HERO』が『HERO』を更新する瞬間に遭遇する。

2015年7月18日 全国東宝系にてロードショー

© 2015フジテレビジョン ジェイ・ドリーム 東宝 FNS27社
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