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SMAPコラム「Map of SMAP」

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 世界に一つだけの花
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Clip! Smap! コンプリートシングルス【Blu-ray】
ミュージックビデオを大幅に追加収録。
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収録曲:シングル55作品の両A面曲を含む全63曲の映像を収録予定
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 世界に一つだけの花
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世界に一つだけの花
TV:CX系ドラマ『僕の生きる道』(2003年1月〜)主題歌収録のシングル。
2015.10.20更新

脳がこころに敗れ去るとき──香取慎吾『一千兆円の身代金』


Do the Right Thing

こんな香取慎吾が見たかった。

こんな香取慎吾に出逢いたかった。

こんな香取慎吾を待っていた。


彼が、少女を立たせ撮影する際、指示する声が、ぶっきらぼうに響くとき、はっきりそう思った。

冷静と情熱がともにある声。

諦念と希求が隣り合わせにある声。

カモフラージュと剥き出しが渾然一体となった声。

そうだ、そうなんだ、香取慎吾はこれができる役者なんだよ!

全世界に向かって叫びたい衝動に駆られた。


この主人公は必ずしも、ものすごい頭脳犯というわけではないし、すさまじく冷酷非常というわけでもない。

ただ、前代未聞の犯罪をおこなうにあたって、己に負荷をかけているし、その必要があると確信していたのだ。

おそらくは、ごく普通の青年である彼は、かりそめのクールネスを鎧のように着込んで、カタカタと体内のハードディスクに向かって、一心不乱にキーボードを打ちつづけている。

そうしなければ、自分はなにもできない。

それは信念というよりは、自分を縛りつけなければ一歩も前には進めないと考える、愚直な挑発によるものだ。

その不器用な一途さを、決して泥臭くはなく、かといって、洗練された方向に向かうわけでもないスタイルで、香取は見せる。

エッジの立った、人間くささ。

アイデンティティにしても、パーソナリティにしても、多くの演じ手が、球体に向かうのが主流のなか、本物の手打ち蕎麦がそうであるように、キャラクターの角を際立たせることで、香りもコシも喉ごしもある、平明にして鮮烈な人物像を浮かび上がらせる。

香取は、鋭利な人間を演じているのではなく、人間を鋭利に演じている。

ジャックナイフと剃刀を、密やかに使いこなしながら。

大胆にして繊細なその芝居は、ふたつの要素を同時に味あわせながら、その決着の行方を明瞭に物語る。

最終盤の香取慎吾の演技には、冷酷が感情に、静謐が絶叫に敗れ去る瞬間が、ごく当たり前のように刻印されている。

この主人公は豹変したのではない。

ふたつの元素は、もともと彼の体内にあった。

その事実を、香取慎吾は、淡々と準備し、最後の最後に決壊させる。

その光景は、わたしたちに、ある現実を告げるだろう。

わたしたちは、感覚と情念に揺れ動くタイトロープの上を歩行している。

だが、あるとき、脳はこころに敗れ去るのだ。

必ずといっていいほど、脳はこころに負ける。

香取慎吾は、それを物悲しく体現するのではなく、むしろ、さわやかな現象、人間という生命体の、数少ない可能性のひとつとして、明滅させる。

陰影のグラデーションではなく、白と黒とが勝負をつけるように表現する。

脳はこころに必ず負ける。

どんなときでも負ける。

その、閃光のような潔さ。


だからこそ。


たったひとつの小さな善行が、巨悪に踏み潰された魂を救い出すことがある。


Do the Right Thing


それが、おまえの力になる。




相田冬二

※このコラムは、楽天ブックスのオリジナル企画です。
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