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SMAPコラム「Map of SMAP」

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 世界に一つだけの花
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Clip! Smap! コンプリートシングルス【Blu-ray】
ミュージックビデオを大幅に追加収録。
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 世界に一つだけの花
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Clip! Smap! コンプリートシングルス
収録曲:シングル55作品の両A面曲を含む全63曲の映像を収録予定
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 世界に一つだけの花
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世界に一つだけの花
TV:CX系ドラマ『僕の生きる道』(2003年1月〜)主題歌収録のシングル。
2016.2.2更新

悪趣味でなければ取調べはできない──『スペシャリスト』3話考


プライドのアリバイ

 レギュラーメンバーが交替するのではなく増員されたことによって、このドラマのタッチはスペシャルドラマの頃に較べてグッとシャープな色彩を帯びるようになりました。
 地盤となる登場人物が多くなると、以前とは別の省略技法が必要になるからです。チームとしての親密さよりは、サバサバした関係性が際立ち、キャラクターひとりひとりの自立性が試されているようにも思えます。ざっくりした表現になりますが、もはや「入門編」ではなく、「応用編」。みんな、もういい大人だよね、いちいち手取り足取りは教えないから、勝手にやってね、というような距離感が、作り手と視聴者のあいだにも存在しているのではないでしょうか。このあたりは、ある程度の年月で培ってきたシリーズものの強みと言えるかもしれません。
 先週放映された第3話は大変に見応えがありました。それは、作品が、キャラクターや、わたしたちオーディエンスを「甘やかしていない」からです。先ほど申し上げた、勝手にやってね、というような、ある種の放任が、いい感じで為されているのです。ここまでやらないとわからないよね、と言わんばかりの「馬鹿丁寧さ」が、そこには見あたりません。それは、ドラマが、キャラクターやオーディエンスを、きちんと信じているからだと思います。誤解をおそれたり、空気を呼んだりすることが最優先課題になりつつあるネット以後の「ものづくり」とは、軽く一線を画したノリが、ほんとうに心地良い。それは、「いい店」で、飲んだり食べたり話したりすることに近い。つまり、居心地こそが「味」なんです。
 ご覧になった方はおわかりだと思いますが、鶴田真由さん演じる犯人像には、非常に一貫性がありました。「非情に」と言ったほうがよいかもしれませんね。あの女性が保ちつづけた一貫性は、頑な性格ではなく、己を律する非情なまでのルールこそが支えていたと考えられますから。犯罪者には犯罪者のプライドというものがあるはずで、それはもしかしたら、フィクションの世界にしか存在しないプライドなのかもしれませんが、わたしなどはフィクションが描く人物像に、そのようなプライドを求めがちで、その意味で、この犯人はとても説得力がありました。
 あえて第三者的に眺めるならば、彼女の行動原理は「私怨」と片づけられるたぐいのものかもしれません。妻子あるひとのことを愛することそれ自体が「犯罪」なのだと臆面もなく叫んでしまえる公明正大な人生を送っているひとびとにとっては、彼女がしたことはただの「逆恨みの結果」にしか映らない可能性もあります。
 しかし、フィクションとは、そうしたものではありません。なにが正しいとか、なにが間違っているとか、そんな、わかりきったラインを補強するために、フィクションは存在しているのではありません。
 人間が生きる過程においては、そうしたラインを超えてしまうこともある、その可能性を描くものが、フィクションだとわたしは考えます。フィクションは現実からの逃避場所ではありません。現実を、別な面から再考するために、フィクションはあります。現実を生きる上で、フィクションは必要なのです。
 この犯人がおこなったことは許されることではありません。しかし、彼女の罪にはスジが通っている。このスジが、わたしがプライドと呼びたいなにかです。
 この犯人にはプライドが感じられました。では、草剛さん扮する宅間善人は、彼女を前にどのように対処したか。
 この回でもっとも見つめるべきは言うまでもなく、宅間が彼女を取調べする場面です。密室でのふたり芝居というシチュエーションが、俳優、草剛の真骨頂を体感させてくれました。
 これは、彼が10年10ヶ月刑務所にいたことにも関係することですが、宅間は犯人と、ある意味対等であろうとするんですね。立場としては、取り調べる側と、取り調べられる側であるにもかかわらず、どこか相手を尊重しているように見える。刑事と犯人、ではなく、人間と人間、としてあろうとする。
 それは、犯人に対して、むやみに共感を寄せる、ということではありません。むしろ、「人情」みたいなゆらぎから、できるだけ遠くにいることで、しっかり対峙しようとする。「あなたの気持ちはわかるよ」という寄り添いではなく、「あなたにはあなたの気持ちがある」という肯定がある。草さんは、そんなふうに宅間を表現しているし、そのことが、第3回のシークエンスから、はっきりわかりました。
 トラップの、トラップの、そのまたトラップみたいな会話構造が下敷きにあるにもかかわらず、それら策を弄する者のテクニックに終始するのではなく、マントゥーマンの、おそらくこれが最初で最後になるであろう「つきあい」を成就させようとしている意思(意志、ではなく)が、見え隠れするのです。見え隠れする、というのは、逆に言えば、「見せるところは見せる」「隠すところは隠す」ということです。いつもそうですが、草さんの芝居は、このあたりの緩急が明瞭で、惚れ惚れします。一流の鮨職人の包丁さばきを想起させますね。
 自分に投げかけられたことばを自虐的に用いて、「おれ、悪趣味なんで」というようなことを口にするくだりがありますが、たとえば、あそこが「見せるべきところを見せる」表現です。
 宅間という男の、複雑なようでシンプルな属性が、あの演技で明らかになります。同時に、彼のなかに内在しているプライドもこぼれおちます。
 己のプライドこそが、相手のプライドを輝かせる。草さんも、宅間も、たぶん、そのことを知っているのです。 



相田★冬二

※このコラムは、楽天ブックスのオリジナル企画です。


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