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TV:CX系ドラマ『僕の生きる道』(2003年1月〜)主題歌収録のシングル。
2013.10.29更新

『安堂ロイド』の木村拓哉が見せた3つの寝顔について考える

木村拓哉はアンドロイドを眠らせる
  木村拓哉の寝顔について。
 木村さんは過去にもドラマで寝顔を見せてきました。ただし、あのときのあの寝顔がよかった、とかそういう話をしたいのではありません。というか、そういう話にはまったく興味がありません。今日は、木村拓哉、最新の寝顔についての話です。
 わたしたちはこのドラマで、少なくとも3つの寝顔を目撃しているわけです。まだ3週目ですから、これからもっといろいろな寝顔を見ることができるかもしれませんが、とりあえず現時点で確認できた3つの寝顔について。
 まあ、それを寝顔と呼んでいいか、ちょっと躊躇してしまうんですけど、アンドロイド、品番はなんて言いましたかね、あのアンドロイドがチャージするところがあります。ベッドを、あれは充電器にしているという設定でしたね。あの充電中の顔を、まずは寝顔と呼んでみましょう。
 そして第2話で登場しましたが、安堂麻陽の記憶のなかで再現される沫嶋黎士(これは松本零士先生のお名前からの引用なんでしょうか)の寝顔があります。これは間違いなく寝顔ということになると思います。
 さらにこの回でもっとも美しかった瞬間――アンドロイドがベッドに横たわり、口元から下の身体をすっぽり隠している状態。いえ、これは寝ているわけではありません。あくまでも寝たふりです。しかし、この顔こそがおそらく現時点でもっとも重要な寝顔ということになると思います。わたしたちは、あの顔を寝顔と呼ぶべきだと思うんですね。あの顔を寝顔と呼ぶところから、わたしたちにとっての物語がはじまると言ってもよいかもしれません。そもそもアンドロイドに寝顔はあるのか、もしあったとして、それは必要か否か、という問題があります。しかしながら、このドラマを観たほとんどのひとはこう答えるのではないでしょうか。
 それはある。それは必要だと。
 大掴みな断定をしますが、それが木村拓哉という俳優の力です。

木村拓哉はわたしたちを嘘の天才にする
 ベッドを充電器にしている設定には、おそらく意味があります。必然性と言ったほうがよいかもしれません。ベッドは安堂麻陽が、沫嶋黎士の記憶を取り出しやすい場所なんですね。これは特別セクシャルなことではなく、回想したり夢をみたり(夢というのは記憶の整理である、という考え方もあります)といったことを容易に可能にする、それがベッドなわけです。ふたりのベッドに、安堂麻陽がひとりで寝ているという状態は、不在の感覚をより鮮明にする器、と言い換えることができるかもしれません。寝ぼけまなこで、安堂麻陽がアンドロイドを沫嶋黎士と錯覚する描写がありますね。あれは、夢のなかでの、沫嶋黎士の再生が、目覚めてもなおつづいていた、そんなふうに受け取ることも可能だと思います。
 つまり、充電中のアンドロイドの顔、あえて寝顔と言い切りますが、あの寝顔には、沫嶋黎士の寝顔が投影されているわけです。あらかじめプログラミングされていたのではありません。安堂麻陽が、アンドロイドに沫嶋黎士を投影しているのです。そもそも、アンドロイドの寝顔を見ている人間は、いまのところ安堂麻陽ただひとりですからね。彼女しか、アンドロイドの寝顔を見てはいない。アンドロイドは、何度も自分には感情がない、と言います。そして自分は嘘はつけない、と繰り返します。
 安堂麻陽は第3話で「ほんと? ほんとに感情がないの?」ということをアンドロイドに問いかけます。今後どのような展開になるのかはわかりませんが、しかし、明らかに安堂麻陽は、沫嶋黎士を投影している。感情を付与している。そして、そのことはアンドロイドの論理で言えば、嘘、ということになります。
 嘘の天才、というようなことをアンドロイドは安堂麻陽に対して言いますが、逆に言えば、木村拓哉の寝顔は、見ているわたしたちを嘘の天才にしてしまうんですね。これが木村拓哉のすごいところです。

木村拓哉は観る者の脳を万華鏡化する
 ドラマにしろ映画にしろ、人物が眠るシーンはたくさんあります。そこで俳優は瞳を閉じて、寝たふりをするわけですが、わたしたちはそれなりにドラマや映画を観てきているので、これは寝ているということなのだ、という理解を自分自身に施します。設定を与える、設定を確認する、そう言ったほうが正しいと思います。これはフィクションを眺めるときの約束事のようなもので、演じ手も観客も、このルールにのっとって、付き合っていく。従順とも言えますが、ぬるい、とも言えますね。
 木村拓哉の寝顔には、こうしたぬるさがありません。あらかじめ設定された規則を、わたしたたちが受け入れるのではなく、わたしたちが逆に新しい規則を設定していく、そのことを実現するようなよろこびがあるんですね。もちろん、木村さんだって寝たふりをしているわけです。しかしながら、どうも他の俳優とは違う。それは、木村さん自身が、既存の寝顔にあるイメージに頼っていないからではないでしょうか。見ているこちら側を、ある意味、まったく安心させてはくれない。しかし、そうした緊張感によって、わたしたちは新しい可能性、新しいイマジネーションを獲得していくわけです。
 ここにいるみなさんは、誰かの寝顔を見たことがありますか。両親の寝顔、子供の寝顔、祖父母の寝顔、兄弟姉妹の寝顔、友達の寝顔、そして愛するひとの寝顔などを、たぶん見たことがあると思います。あと、ペットも寝顔を見せてくれますね。
 誰かの寝顔を見たときのことを思い出してください。そのとき、愛おしさだけではなく、ちょっと不思議な感覚がありませんか。そのひとは眠っていて、自分は起きている。このことが、自分のいる世界をどこか変容させている、そんな気ににはなりませんか。不安と、懐かしさと、甘さと、切なさと、その他いろいろなものが混じった気持ちになりませんか。わたしはなります。木村拓哉の寝顔は、そのときの自分の精神状態を再現するなにかがあるんですね。
 おそらく、この異世界にいるような感覚は、寝顔というものが、眠りというものに宿っている「小さな死」ともいうべき何かを感じさせるからだと思うんですね。木村拓哉は、寝顔が持つ、そうしたスピリチュアルな何かを、表象していると考えられます。単に、人物が寝ているという状況を寝たふりで表現するのが多くの俳優がしていることなのですが、木村さんは、わたしたちが目撃してきた無数の寝顔を増幅するような豊かな寝顔を提示しています。
 アンドロイドは寝ているわけではありません。しかし、わたしたちはそこに寝顔を見る。さらに、このアンドロイドは、寝たふりまでするわけです。ちょっと、目眩がしませんか? 眠るはずのないアンドロイドが眠り、かつて人間として眠っていた沫嶋黎士の寝顔がそこに投影され、寝たふりをしている俳優が寝たふりをしているアンドロイドを演じている――わたしなどは、そのことを考えただけで、脳内が万華鏡化して、くらくらしてきます。
 なぜ、そんなことが起こるのか? それは、木村拓哉が、3つのの寝顔を、まったく別個のものとして提示しつつ、わたしたちには、この3つを溶け合わせることができるのではないか、と思わせてくれるからです。
 木村拓哉の寝顔はシンプルです。だからこそ、多様な解釈を受容する。そう、わたしたちを嘘の天才にしてくれるのです。

文:相田冬二

※このコラムは、楽天ブックスのオリジナル企画です。
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木村拓哉が天才物理学者とアンドロイドの2役で、時空を超えた愛に挑む!毎週日曜21時放送。

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