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収録曲:シングル55作品の両A面曲を含む全63曲の映像を収録予定
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TV:CX系ドラマ『僕の生きる道』(2003年1月〜)主題歌収録のシングル。
2016.5.31更新

中居正広友情出演映画『手をつないでかえろうよ』は必見である!


フィクションとは、真新しい自然を作り出すこと。

 中居正広さんが出演しているという情報を、ある方の個人ファンブログを通して、あのタイミングで知ることがなければ、観ていなかったかもしれません。映画『手をつないでかえろうよ〜シャングリラの向こうで〜』。2016年5月29日、東京のTOHOシネマズ錦糸町で本作に出逢えたことを、わたしは誇りに思います。そのブログ主の方にまずは感謝したいです。
 この映画は、今井雅之さんが原作・脚本・主演を務めた同名舞台を映画化したもので、当初は今井さん主演で進められていた企画です。しかし今井さんは2015年5月28日、急逝。今井さんと親交の深かった川平慈英さんを主演に、映画は完成しました。
 まず、川平さんが素晴らしい。川平さんと言えばミュージカルなど、舞台俳優としての印象が強いのではないでしょうか。またテレビ番組での明朗快活なイメージがインプットされている方も多いかもしれません。かく言うわたしもそうで、川平さんが、これほどまでに、映画にふさわしいお芝居をされる方だとは想像していませんでした。大変失礼ながら、映画俳優、川平慈英を発見した想いでいっぱいです。
 川平さんはここで軽度の知的障害がある男性を演じています。個人的には『レナードの朝』のロバート・デ・ニーロや『レインマン』のダスティン・ホフマンのかたわらに置いてもまったく遜色がないどころか、ほとんどの場面において互角に渡り合い、ある瞬間においてはデ・ニーロやホフマンの演技を超越しています。
 川平さんの芝居は症状の模倣ではなく、尊真人(タケル・マコト)という主人公の固有の動きを「新たに作り出す」ことに注力しています。周囲のひとびととは、どこかがズレている。しかし、違和感を中心において「他者」として演じるのではなく、違和感とは別種の「個性」をじっくり浮き彫りにしていくことで、観客のなかに居る「無数のわたしたち」の神経と共振するような場を創造する。簡単に言えば「他人事ではない」状況を、明らかに、わたしたちとは異質の動きのなかから見つけ出し、提供しています。
 かといって、感情のみに傾倒したドラマティックな演技ではない。むしろ、尊真人の癖を丹念に積み重ねることで、「彼の日常」を醸成し、それを、わたしたちが見つめるにふさわしい距離感で、そこに存在させる。知的障害を持つキャラクターを演じるとき、多くの演じ手が陥りがちな、過度な「他者性」、あるいは行き過ぎた「感情露出」が、川平さんの表現にはありません。だからこそ、この映画の主人公に向けるわたしたちのまなざしは、安易で都合のいい共感や親しみや同情ではなく、まっさらなやさしさに塗り替えられることになります。逆に言えば、わたしたちは、わたしたちの内部にある、まだ名づけられていないやさしさの根源にふれるのです。繰り返しになりますが、このやさしさは、共感やら親しみやら同情やらと言った思い上がった感情ではありません。きわめて無防備で無垢な、自分の身体のどこかにずっと放置されていた、忘れかけていた、やさしさです。
 『レナードの朝』にしろ、『レインマン』にしろ、相手役が重要だったわけですが、この映画では、すみれさんが、鮮やかな演技を披露しています。彼女扮するシングルマザーの竹内麗子が、尊真人のルックスをアメリカ人だと勘違いし、英語で話しかけるくだりから、わたしたちは一気にこの物語に引き込まれます。沖縄生まれの川平さんとハワイ生まれのすみれさんの共演は、まさに「シャングリラ」な奇跡を映画に呼び込んでいます。
 麗子が真人の車に軽やかに同乗、初対面のふたりは一緒に伊勢神宮を目指します。それぞれ別の目的を抱きながら。そうして、真人の胸に去来する、過去の出来事も、映画は並行して描いていきます。この、いま進みつつある旅と、よみがえる過去との、調和が見事で、この映画の最良の美徳はここにあると言っていいでしょう。映画ファンの方なら、エミール・クストリッツァの作品にもある、理屈を超えた活気が映画の推進力になっている、と記せばわかっていただけるかもしれません。
 中居正広さんは、過去のパートに登場します。ある意味、真人の人生を変えてしまう存在。詳細はあえて書きませんが、組織に属する人間で、暴力的な行為も見せます。わたしは、彼が最初に語り出した瞬間、胸ぐらをつかまれる気持ちになりました。ゆっくりゆっくり、諭すようになだめるように語るのですが、とにかく語りの速度のコントロールがハンパない。
 中居さんは、余計なことを一切しません。この人物がどういう人物なのかをまったく説明せずに、語りのスピードだけで、相手を威圧し、瞬く間に鎮圧する。人物のキャラクターはそこにはありません。まったくないのです。語りだけがある。語ることだけで、そのシーンに「真新しい自然」を生み出す。
 わたしたちがかつて体験したことのある怖さの模倣ではない。生まれたての凄み、圧力に、完敗することの心地良さがそこにはあります。
 中居さんの出演はわずか2シーンですが、この映画が一貫して作り出している「自然」に、風を吹かせ、雨を降らしています。そう、言うまでもなく、風や雨もまた「自然」の一部です。
 川平さんやすみれさんが、草や花だとすれば、中居さんは気象としてそこに居ます。
 ラストシーン、数奇な、けれども、どこまでもナチュラルな物語は、魔法のように終わりを迎えます。その、かつてなかった感動は、わたしたちが抱きつづけてきた、あらゆる先入観や偏見を消し去ります。パチンと指を鳴らすように。
 中居さんと今井さんがドラマ『味いちもんめ』で共演していたからこその奇跡の出現。決して見逃してはいけません。



相田★冬二

※このコラムは、楽天ブックスのオリジナル企画です。


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