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SMAPコラム「Map of SMAP」

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 世界に一つだけの花
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Clip! Smap! コンプリートシングルス【Blu-ray】
ミュージックビデオを大幅に追加収録。
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 世界に一つだけの花
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Clip! Smap! コンプリートシングルス
収録曲:シングル55作品の両A面曲を含む全63曲の映像を収録予定
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 世界に一つだけの花
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世界に一つだけの花
TV:CX系ドラマ『僕の生きる道』(2003年1月〜)主題歌収録のシングル。
2016.10.5更新

さらけ出さないということーー映画『少女』の稲垣吾郎について


吐露しても、それがすべてではない

湊かなえさん原作の『少女』という映画を観た。
そこには稲垣吾郎さんが不思議な役で出ていて、この俳優さんはほんとうに得がたい個性を有しているなぁと、あらためて感服した。
あらすじ紹介というやつがとにかく苦手で、それは自分自身が映画の物語なんてどうでもいいじゃんと思っているからなんだけど、一応説明すると、これはふたりの女子高校生が主人公で、親友同士であった彼女たちは、ひとが死ぬ瞬間を見るために、ボランティアを開始する。本田翼さん扮するひとりは、難病の子供たちがいる施設で、山本美月さん扮するもうひとりは老人ホームで、働きはじめる。
で、稲垣さんは山本さんの先輩としてあらわれる、ある意味、正体不明の人物だ。同僚たちからは前科持ちらしいと噂されている。
考えてみれば、ひとはだれもが正体不明で、どんな親しい相手に対しても、自分のすべてをさらけ出しているわけではないし、そもそも、すべてをさらけ出すなんてことはたぶん不可能だ。
考えてみれば、ひとはだれもが正体不明で、どんな親しい相手に対しても、自分のすべてをさらけ出しているわけではないし、そもそも、すべてをさらけ出すなんてことはたぶん不可能だ。
笑ったり、ときどき怒ったり、ごくまれに泣いたり、そんな姿を見せられる相手はいるかもしれないってだけのことで。そんな姿を見せられたほうは、それなりに受容してくれるのかなと期待なんぞはするけれど、それが自分のすべてではないし、すべてと思ってもらっちゃ困る、という部分も少なからずあって。みんな、そんなものだと、どこか折り合いをつけて生きていて、見せたくないものは見せなくていいよ、という、ある種、赦しの世界のなかで、適度な曖昧さとともに日々を過ごしているはずなのに、なにか事が起こると、途端に、すべてをあからさまにしようとするひとびとが登場したりする、もっともらしい正義をふりかざしながら。で、そういう輩は、絶対自分が正しいと思いこんでいるから、始末に負えないわけだけど、稲垣さんが演じた人物からは、そういう、日常にはびこる不条理を、点滴のように無理矢理注入された挙句、おのれの感覚を麻痺させるに至った、最末端の諦念が感じとれて、だけど、鬱とか、人格崩壊とか、そういうことではなく、生きる理由を、どこかでさがしている、延命のための希求みたいなものが横たわっていて、その、まったくウザくない、静かな、微かな欲望が、とても愛おしかった。
遮断したり、壊れてしまうのではなく、非日常を通過したあとも、やっぱりつづいている日常というもののなかに、とりあえず自分を置いておく。シンプルだからこそ、簡単ではないことを、この人物はおこなっていて、それを、稲垣さんは、山本さんとのやりとりを通して、ことばではない領域で、たとえば、歩行とか、立ち止まること、なにかを言いかけてやめること、一瞥、沈黙などで、伝えている。
たとえば、なにかを吐露したところで、それが、自分のすべてではない。
そんなデリカシーをたずさえたまま、なんとか、とりあえずの今日を暮らそうとしている男の現在進行形を、稲垣さんは、あからさまなデコレーションを排して、かといって、大仰な抑制の美にも傾かず、微細な揺れだけを底辺に響かせながら、存在していた。
映画を筋でしか観ようとしないひとがどう受けとるのかはわからないけれど、人間という生きものを堪能しようとするひとであれば、稲垣さんが作り上げた、人物の余白に、きっと真実を見いだすに違いない。





相田★冬二

※このコラムは、楽天ブックスのオリジナル企画です。
※「Map of Smap」は、8月24日より毎週水曜更新に変更となりました。


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映画『少女』
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