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 世界に一つだけの花
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Clip! Smap! コンプリートシングルス【Blu-ray】
ミュージックビデオを大幅に追加収録。
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収録曲:シングル55作品の両A面曲を含む全63曲の映像を収録予定
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世界に一つだけの花
TV:CX系ドラマ『僕の生きる道』(2003年1月〜)主題歌収録のシングル。
2014.5.13更新

DVD化!『人類資金』の香取慎吾が体現する「理想」と「告白」


横顔だけのオーラ
 映画『人類資金』のDVD/Blu-rayがリリースされています。決して難解な内容ではありませんが、少々込み入った設定であり、また登場人物も多様で、映画ならではの見せ場も盛りだくさんのため、ただ漫然と物語の推移を追いかけているだけでは、作品そのものの旨味を逃す可能性もあります。こうした作品こそ、DVD/Blu-rayでの視聴が必要だと思われます。
 阪本順治監督が所属する事務所にとって締めくくりの一本でもあり、また阪本監督自身、デビュー当時から念願の企画だったことから、「これが自分が監督する最後の作品になっても構わない」と断言しています。
 阪本監督は本作の最も重要な人物に香取慎吾さんを起用しました。言うまでもなく阪本監督と香取さんは『座頭市 THE LAST』で組んでいるわけですが、阪本監督は文字通り「ラストになるかもしれない」この作品を香取さんに託したとも言えるでしょう(ちなみに、かつて勝新太郎さんに出演交渉したこともある阪本監督は大の「座頭市」ファンでもあります。阪本監督にとって香取さんがどれだけ大切な存在か、おわかりいただけるのではないでしょうか)。
 阪本監督は、俳優たちに、とりわけ男性の俳優たちから、特別な信頼を寄せられている監督です。阪本作品の常連であり、『人類資金』の主演でもある佐藤浩市さんは、もはや日本映画の顔と呼んでもさしつかえない演じ手ですが、その佐藤さんも、阪本監督の作品に登場したときは、他の作品とはまるで違う顔つきでいます。
 いったい、阪本監督が、俳優にどのような演出をしているのか、何度か撮影現場を見学しているわたしにもわかりません。ただ、いずれにせよ、阪本順治という男は、男たちに愛される監督なわけです。
 物語は割愛しますが、この映画は「M資金」と呼ばれるある種の埋蔵金をめぐる、新しいかたちの経済エンタテインメントです。ここで香取さんは「M」なる男を演じています。
 彼はなかなか登場しません。初めて姿を現したときの第一声は「違う」。左半分の横顔だけで、そうきっぱりと宣言した香取さんもまた、これまでとは明らかに「違う」オーラを、わたしたちに感じさせます。

一緒に世界を救ってみませんか
 「一緒に世界を救ってみませんか」。香取さんは、このシーンの最後に、そう言います。佐藤さん扮する詐欺師の主人公にとって、これは最良の口説き文句となるわけですが、香取さんはこの言葉をどのように口にしたか。
 ほとんど感情を感じさせないイントネーションで発しているんですね。そこに媚びはない。誘いもない。「あなたにとって、これは得な契約ですよ」というネゴシエイトは、あっさり放棄されています。言ってみれば、空っぽのたたずまい。そうして、わたしたちは気づくんですね。彼が、この映画のなかでもっとも大切だと思われるこのことばを、決して歌舞伎で見得をきるようには言わなかったことの意味を。おそらくこれは「理想」というものの「告白」です。
 ほんとうの「理想」とは、善意の押し売りじゃないんですね。そして、真の「告白」は、見返りを求めません。
 そもそも「理想」とは、たったひとりで信じるものです。集団を動かすための道具ではないんですね。ひとりから、ひとりに向かって手渡されなければいけません。また、「告白」についても同様のことが言えると思います。異性への「告白」のことを考えてみてください。「好き」という気持ちを伝えるのは非常に勇気のいることです。しかし、もし、その「好き」が、「わたしのことも好きになって」と同義であったらどうでしょう? はたして、それは「告白」と言えるでしょうか。「好き」という想いは、ただことばにするだけで「告白」になるのです。それ以上を求めたとき、「告白」は、「打算」へと堕してしまいます。だから、「告白」は難しいのです。
 しかし、このときの香取さんは、「理想」と「告白」とを同時に成立させるような清冽なありようで、そこに一切の雑念を紛れ込ませないようにしています。空っぽであることの潔さが、そうした比類なき説得力を与えています。

いちばん大切なひと
 説得力と言えば、この映画における香取さんの歩行が素晴らしい。たとえば、空港などの場面で、彼がどんなふうに歩いているかで、この人物の背景が伝わってくるのです。最初に申し上げた通り、登場人物の多い映画ですので、ひとりひとりのキャラクターを説明している時間的な余裕が作品にはありません。だからこそ、ただ、そこに立っているだけで、観客を説得させてくれる存在感を有した俳優だけがキャスティングされているわけですが、香取さんは歩行によって、「M」という人物固有のスピードを体感させてくれます。彼が、どんなふうに育ってきたか。彼はいま、どんなふうに生きてきたか。映画のなかで、ひとが歩くということは、そのような「人生の速度」を表現することに他なりませんが、香取さんは毅然と悠然のはざまをぬうようにして歩いてみせます。そして、この「スピード」があるからこそ、彼は「理想」の「告白」ができるのだと、わたしたちを説得させてくれるのです。
 「M」の台詞は多くはありません。しかし、香取さんのまなざしは雄弁です。彼が森山未來さんを何度か、さり気なく見つめるシーンがあります。その情感もまた、この「スピード」によってもたらされているのだと思います。
 わたしがもっとも好きな場面は、最終盤、観月ありささんに付き添われながら、階段を降りていく香取さんの姿です。
 ある雑誌で、SMAP俳優論を書いたことがあります。そのとき、香取さんの項目で、取り上げたのは、観月さんと共演したある連続ドラマでした。幼い頃から、共にこの世界で生き抜いてきたふたりはきっと、互いが「戦友」と呼びうる存在だと思います。そんなふたりにしか生まれ得ない情緒がこのシークエンスにはあって、とてもすこやかな気持ちになるのです。まるで、新しい一週間が始まることを祝福するように。



文:相田★冬二

※このコラムは、楽天ブックスのオリジナル企画です。
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