TOP >「Map of Smap」TOP > vol.52

SMAPコラム「Map of SMAP」

楽天ブックスが、SMAPやSMAPメンバーの旬な情報を、コラム形式でお届け!
Infomation
 世界に一つだけの花
MUSIC
Clip! Smap! コンプリートシングルス【Blu-ray】
ミュージックビデオを大幅に追加収録。
Infomation
 世界に一つだけの花
MUSIC
Clip! Smap! コンプリートシングルス
収録曲:シングル55作品の両A面曲を含む全63曲の映像を収録予定
Infomation
 世界に一つだけの花
MUSIC
世界に一つだけの花
TV:CX系ドラマ『僕の生きる道』(2003年1月〜)主題歌収録のシングル。
2014.7.15更新

格調のある無頼──『HERO』が明るみにする木村拓哉の本質。


カメラを完全に無視するということ。
 おはようございます。相田☆冬二と申します。今日から相田★冬二をやめて、相田☆冬二をはじめることにしました。はい、冷やし中華みたいな感じで。
 えーっとですね、わたし、7年前に、映画『HERO』の劇場用パンフレットで、キャスト・スタッフのインタビューを担当させていただいたんですよ。そのなかで、児玉清さんがこんなことおっしゃってました。
 「検事がひとつの無頼である、というこれまでになかった設定を『HERO』は突いている。しかも、格調のある無頼。これは木村さんでなければできなかったんじゃないかな」
 児玉さんっていうか、鍋島利光さんっていうか。 
 「木村さんには感動したことがあってね。彼はカメラを意識してない。完全に無視してる。無視してないようで無視してる。その見事さ。僕らの世代はカメラがどこにあろうが、どうしてもある程度意識してしまう。彼はカメラがどこにあろうが、まったく自由に振舞ってるね。だから、観ている人は彼の動きに納得できるわけだよ」
 鍋島さんっていうか、児玉さんっていうか。
 まあ、つまり、そういうことなんです。
 自由っていうのは、なにかを無視することなんです。しかも、無視してないようで無視してることが大事なんですね。無視してるようで無視してない。これじゃあ、駄目なんです。わたしたちの普段の生活のことを考えると、そんなんばっかりですね。ネットとかに対する態度、特にSNSにはそういうことが多くないですか? あ、わたしは多いです。そういうの、おれには関係ねえよ、ってフリして、気にしてんの、いろんなこと。これがね、無視してるようで無視してないって状態ですね。それって、つまり、支配されてる、ってことなんですよ。現状に。現状に支配されてるほうがラクですもんね。人間。ほとんどの場合、無視してるようで無視してない、そういう状態に自分を置くことで、わたしたちは安心して、安全圏内で暮らすことができるんですね。

無視してないようで無視するということ。
 わたしたちは、自由っていうことばを、それこそ自由に使ったりしますが、自由がどういうことかと言えば、それは不安になる、っていうことなんです。自由は不安ですよ。めちゃくちゃ不安です。いま、こうして書いてても、やっぱり不安ですもんね。
 『HERO』のなかで、木村拓哉さんっていうか、久利生公平さんは、やはり何かを無視している。昨夜、そのことを思いました。それは、児玉さんっていうか、鍋島さんっていうかがおっしゃっていたように、まずカメラ、ではあるでしょう。しかし、カメラに留まることではないような気がしました。カメラに象徴される何かを、木村さんっていうか、久利生さんっていうかは、無視してると思うんですよね。で、それって、すごくヘンなことなんですよ。ヘンって、つまり、自由ってことなんですけどね。
 『HERO』というドラマには独特のテンポがあって、それは主に、被写体たる登場人物たちの掛け合いのスピードによって決定されているんですね。でも、木村さんっていうか、久利生さんっていうかは、この速度とかリズムをまず無視している。それは、多くの場合、久利生ってマイペースだから、という彼の言動をめぐるパーソナリティの規定で、ついわたしたちは納得してしまいがちなんですが、そうではないと思うんですよね。久利生って、決してゴリ押しするタイプじゃないし、そこにいるひとたちのノリを疎外しているわけではない。案外溶け込んでるんですよ。ちゃんと会話は成立している。絡むし、絡ませるし。すべてを、完全に無視していたら、こういうことにはならない。だけど、本質的には、無視してないようで無視してる。大きなものを無視している。その大きなものがなんなのか、わたしたちはわかるようでわからないのだけど、それが、無視されている、ということだけは、からだのどこかで感じている。だから、木村さんっていうか、久利生さんっていうかの、動きに納得しちゃってるんですよね。
 この、無視してないようで無視してる状態が、昨日の『HERO』では、前のドラマにも、前の映画でもなかったような、大らかで、緻密なやさしさによって、達成されているように感じました。で、ぶっちゃけ言うと、これが、木村拓哉というひとの演技の本質だと思うんですね。

目の前の時間を無視するということ。
 具体的にみっつ例をあげますね。
 まず、ひとつ。
 久利生さんが、雨宮舞子の真似をするところがありますよね。しかも、雨宮のことを知らない女性の前で。あれ、すごくないですか? あれがね、木村さんっていうか、久利生さんっていうか、ならではの無視なんですよ。無視というのは、たとえば、そこにいるのに、そこでは生きていないということです。別な時間を生きること。すなわち、目の前にある時間を無視しているんですね。これは設定とか、台詞によるものではありません。わたしは何度も繰り返し再生しましたが、木村さんっていうか、久利生さんっていうかは、ただずまいそのもので、時間を無視しているんですね。
 時間と言えば、クライマックスで、こんな台詞がありましたね。
 「おれ、さっきから、すごく大事な話してるんですよ。時計ばっかり見てますけど」
 あの目、すごくないですか? カメラ目線とは違うんですよね。アングル的にはカメラ目線なのに。言うまでもなく、木村さんっていうか、久利生さんっていうかは、カメラを無視してるんだけど、じゃあ、その無視はなんのためにおこなわれているか、ということを、ほとんど理由もなく、わたしたちは納得しているんですね。否応無く納得していると言ってもいい。これが、ふたつめ。
 で、みっつめは、クレジットが流れはじめてからの、最後のところ、「つきあってたんですよね」と言われたときの無言の表情です。あの顔、すごくないですか? あれがですね、あれこそがですね、格調のある無頼、ということだと思います。格調とは自由、ということです。そして、無頼とは無視する、ということです。
 木村さんっていうか、久利生さんっていうかが、何を無視しているか。どうして無視しているのか。それを追いかけることこそが、『HERO』を見つめることだと思うのです。
 木村拓哉という俳優は、自由を表現しています。不自由を生きることが当たり前の、不自由であることが安心できる世界のただなかで、いささかたりとも不安を感じさせずに、自由を体現すること。わたしたちが、彼に惹きつけられるのは、おそらく、彼が不安を無視しているからです。自由は、人を不安にさせます。しかし、同時に、その不安を無視するちからが、自由には含まれている。そのことを、わたしたちは、木村拓哉を通して、発見しつづけているのです。



文:相田☆冬二

※このコラムは、楽天ブックスのオリジナル企画です。
前週のコラムを読む
翌週のコラムを読む
HERO
HERO

木村拓哉主演の「HERO」が新ヒロインに北川景子を迎えて復活!毎週月曜21時放送。

「Map of Smap」バックナンバー

2017.1.5更新
2016.12.21更新
「Map of SMAP」TOPにもどる