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SMAPコラム「Map of SMAP」

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 世界に一つだけの花
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収録曲:シングル55作品の両A面曲を含む全63曲の映像を収録予定
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 世界に一つだけの花
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世界に一つだけの花
TV:CX系ドラマ『僕の生きる道』(2003年1月〜)主題歌収録のシングル。
2013.9.3更新

最新作『人類資金』を前に、俳優、香取慎吾の謎について考える。

香取慎吾はなぜ「キャラもの」を演じるのか。
 俳優としての香取慎吾は、いまだにその正体をつかませない存在である。
 こと、映画に限定してみても、SMAP全メンバーとともに出演した『シュート!』(1994)をデビューと考えればキャリアは20年を数えるというのに、わたしは彼がどのような演じ手であるかを特定できずにいる。たとえば中居正広ならその目について、木村拓哉ならその声について、稲垣吾郎ならその息について、草剛ならその身体についての思考をよりどころにして、彼らの全貌を突き止めようと試みることが可能なのだが、香取に関しては「入口」が見出せない。それは彼が特殊な芝居をしているということではなく、中居や木村や稲垣や草とははっきり異なるアプローチで己の演技を捉えているからではないかと推測している。
 多くのひとが認識している通り、香取慎吾はキャラものを演じることが多い。ドラマであれ映画であれバラエティ番組であれ、それらのあいだには最初から境界などなかったかのように彼は振る舞い、当たり前に越境している。たとえば後に実写ドラマ/映画で自身が演じることになるアニメーション「こちら葛飾区亀有公園前派出所」のとある回で、彼は慎吾ママとして声の出演を果たしている。2000年のことだった。そこではいったいなにが起こっていたのか。
 おそらくそれは、アニメに紛れ込んだキャラクターでもなければ、慎吾ママでもなく、ましてや香取慎吾そのひとでもなかったはずだ。アニメのなかで、自身の分身でもある女装キャラを体現すること。それは、どこにも属さない「だれでもないだれか」を演じることに他ならない。

「だれでもないだれか」を体現するということ。
 香取慎吾は「だれでもないだれか」を演じている。まずは、そう仮説を立てることからはじめてみよう。
 そう考えると、彼が既に漫画やアニメ、過去のドラマや映画に登場しているキャラクターを新たに演じ直している事の次第が、おぼろげながらに見えてくる。既に別の世界に存在している者を「いま、ここ」で表現するということは、異界からの来訪者を迎え入れることを意味するのではないか。あえてSF的な言い方をするなら、それは一種の「交信」と呼びうるかもしれない。つまり「いつか、どこか」という彼方にいる存在を呼び寄せること。
 香取は漫画やアニメのキャラクターを実写で再浮上させるが、彼の演技が「漫画的」であったり「アニメ的」であったことはこれまでに一度もない。彼は、芝居にデフォルメを一切施さない。香取がだれかを演じているときの表情を見つめていればたちどころに理解できるが、彼は「顔」に力点を置いた表現をしていない。また、立派な体格の持ち主であるにもかかわらず、そのアクションは最低限に抑えられている。たとえばわたしたちが『西遊記』における孫悟空の躍動を記憶しているのは、香取がここぞというときにしか活劇を稼動させていないからである。役どころは劇的であるにもかかわらず、香取は決してオーバーアクトに陥らない。それは、ストイックな美学による抑制というよりも、「だれでもないだれか」を演じるという覚悟によってもたらされているのではないか。
 そのことは『座頭市 THE LAST』(2010)の阪本順治監督との再会を果たした最新作『人類資金』において、より鮮明なかたちとなって立ちあらわれている。

「ペルソナ=仮面」がもたらす光と影。
 香取慎吾はここで既存のキャラクターを演じているわけではない。阪本順治と福井晴敏によるオリジナルストーリーによるオリジナルキャラクターに扮している。阪本は最初から香取をイメージしていたというから、一種の「当て書き」と解釈していいだろう。
 敗戦直前、旧日本軍が隠匿した金塊などの財宝。約10兆円分とも言われるこの「M資金」は極秘裏に日本の復興などに運用されてきたらしい。この伝説に挑んだのが映画『人類資金』である。香取がここで演じている人物の名は”M"。つまり、彼こそが本作のキーパーソンだ。
 たとえば、わたしはこう思った。香取は一貫してペルソナ=仮面を体現してきたのではないか。"M"の正体はやがて明かされる。けれども、彼がだれであるかが判明してもなお、香取は謎の人物として画面のなかに存在しつづける。"M"の相貌は、あたかも能における面(おもて)を思わせる。光の加減や、わたしたちの心模様によって変幻するペルソナ=仮面である。
 ドラマティックな設定もあれば、エモーショナルな瞬間も用意されている。しかし、香取は「だれでもないだれか」として、「いま、ここ」に立ちつづける。まるで"M"が異界から映画の世界にやって来たかのように。
 佐藤浩市、森山未來、そして『座頭市 THE LAST』でも共演した仲代達矢、さらにはヴィンセント・ギャロといった面々と対峙してもなお揺らぐことのない香取慎吾の不動ぶりは、わたしたちをさらなる迷宮に誘い込むのである。

文:相田冬二

※このコラムは、楽天ブックスのオリジナル企画です。
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人類資金

香取慎吾出演。隠匿された財宝「M資金」をめぐる、経済サスペンス超大作。10/19(土)全国公開。

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