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TV:CX系ドラマ『僕の生きる道』(2003年1月〜)主題歌収録のシングル。
2014.10.14更新

稲垣吾郎連載『シネマナビ!』を、ガチでレビューする。


敬意、経験値、そして具体
 稲垣吾郎さんが雑誌「anan」で連載している『シネマナビ!』を初めて読みました。
 わたしは、ライターです。それも映画が主戦場の。ですから、多少は「映画の見方」について語ることができます。その観点から、稲垣さんの「映画の見方」についてレビューできれば、と思います。
 まずお断りしておかなければならないのは、大部分の方がわかっていらっしゃるはずですが、これは稲垣さんが執筆したものではないということ。稲垣さんがお話になったものをライターの方が構成したものです。わたしもかつて、似たようなかたちで(映画をめぐるものではありませんでしたが)ある俳優さんの連載をそれなりに長い期間、構成していたことがありますので、ライターという人種が、タレントさんの談話をどのように構成するか、その生理はわかっているつもりです。ですから、文章そのものではなく、文章の先に存在する稲垣さんその人の着眼点を指摘していきますね。
 わたしが読んだのは、「男のセクシー。」がメイン特集である10/15号(通算1925号)。取り上げている作品は『トム・アット・ザ・ファーム』。わたしも、試写で拝見しています。
 まず、導入に映画の解説みたいなものがあり、それに続いて物語の紹介があります。これは映画紹介記事の基本ルールのようなものですから、おそらくライターが選択した流れにすぎません。
 ただ、最初の段落で指摘しておかなければいけないことは、稲垣さんが、この映画の元になっている戯曲を褒め、自分もその舞台を観てみたいとおっしゃっていることですね。
 これは、演劇人でもある稲垣さん自身の興味というよりも、彼が映画の「原作」に敬意を表するひとであることを物語っていると考えられます。
 確認のために前の号も読んでみましたが、そこでは『悪童日記』のやはり原作小説を1991年に読んでいたこと、今回再読したということを語られています。このときは小説そのものに対する言及もかなり多く、また最終的には小説を読むことを読者に薦めてもいらっしゃいます。
 もちろん、映画には原作がある場合とない場合があるのですが、稲垣さんには、どのような作品づくりにおいても、無から有が生まれることなどない、という確信に近いものがあり、それをクリエイターのひとりとして大事にされているということが、この文章化された語りから伝わってきます。
 そして、それは、クリエイターの気持ちがわかる──というような「気分」を拠りどころにしたものではありません。ここでは、『トム・アット・ザ・ファーム』が一組の兄弟の主従関係のゆらぎを描いていることにふれ、稲垣さんが主演された舞台『ヴィーナス・イン・ファー』を引き合いに出されています。クリエイターとしての「具体」があるんですね。『悪童日記』のときも、舞台『象』で演じたときの「感覚」を提示しながら、主人公の感情のありようを描出していました。
 『シネマナビ!』の説得力は、クリエイターに対する敬意と、それを裏打ちするクリエイターとしての自負(体験、と言い換えてもよいかもしれません)によって支えられています。いずれにしろ、稲垣さんは「なんとなく語る」ということが皆無で、とても論理的です。
 わたしも含めて多くのライターは映画を「気分」で綴ってしまいがちなので、これは、見習いたい点です。

コラムやエッセイではなく、批評
 さて、ここから先、文章で言えば、後半から稲垣さんの本領は発揮されます。
 三段落目で、この映画の解釈の余地がある世界観の提示を肯定し、その延長線上で作品としての色気を語り、四段落目では出演者を讃えます。いずれも「具体」的であり、論拠がしっかりしています。そして、五段落目では、シーンの「具体」を描出しながら、演出上のテクニックについて、好感を抱いたことを示します。このあたりの論理性は、ライターの構成でどうにかなるものではなく、稲垣さんが、彼独自の目線で、この映画を捉え「再構成」していることが、如実に感じられます。
 ひとりのライターとして断言させてもらえば、このくだりで、稲垣さんは完全に担当ライターを「支配」しています。「恐怖を伝えるこうしたテクニックは好きですね」と稲垣さんがライターに語ったとき、文章全体の構成は「決定づけられた」と言っても過言ではありません。
 そして事実、その後の展開は、映画評として秀逸です。
 「まだ若い監督だな、という感触がある」と、稲垣さんはつぶやくのですが、その理由を的確に、述べています。この映画を、曖昧な作品だ、と論じるのではなく、作品としての曖昧さを、やはり「具体」によって検証してみせるのです。「それが魅力なのかもしれませんが」と前置きしながら、音楽の使い方が「分かりやすすぎる」「感情を煽りすぎている」と稲垣さんは言います。
 稲垣さんの独創性は、こうした指摘が、「ところどころちゃんと意味を考えているのか怪しい」監督の「若さ」の説明になっている点です。つまり、音楽が「分かりやすすぎる」のは、シーンすべてを吟味することを怠って、どこか流している部分もあるからではないかと、述べているんですね。
 わたしもまた、この映画に不満を抱きましたが、もし、執筆するとしても、稲垣さんのような「具体」を提示する自信がまったくありません。
 稲垣さんの「映画の見方」は、作品全体を俯瞰した上で、「具体」を挙げていく方法によくあらわれています。これは、映画コラムやエッセイではなく、クリティーク(批評)と呼ぶべきものだと思います。
 『トム・アット・ザ・ファーム』は、いま、世界的に高い評価を得ているグサヴィエ・ドランという、まだ20代半ばの監督の作品です。今年のカンヌ映画祭では最新作で、あのジャン=リュック・ゴダールと同じ賞を分け合ったというのですから、現在の映画界における注目度は相当なもの。しかし、稲垣さんは、こうした「権威」にはまったくなびかない。自分自身のオリジナルな「映画の見方」を有しているから、時流に流されることがないんですね。
 さて、最初に、稲垣さんにはクリエイターへの敬意があると言いました。それが証明されているのが、最後の二文です。
「もっと静かに、ジワジワとくる恐怖を味わいたかった。それだけ、音楽に頼らなくても怖さが伝わってくる作品なんです。」
 音楽の過剰な演出の弱さを指摘しながらも、作品そのものの可能性には、きちんと目を向ける。まさに、完成された論評と呼べると思います。



相田“Mr.M”冬二

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