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SMAPコラム「Map of SMAP」

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TV:CX系ドラマ『僕の生きる道』(2003年1月〜)主題歌収録のシングル。
2015.3.3更新

マジックリアリズムと半覚醒──草剛『スペシャリスト3』。


おかしな気持ちになるモノローグ
 こんにちは。みなさんお元気ですか。
 ああ、またかよ、お前は草剛の話をするときは、いっつもそれだねえ、と呆れられることを覚悟しながら、本日はお話しようと思います。そんなに長くはならないと思いますので、どうか最後までよろしくお願いします。ね。
 『スペシャリスト3』を観ました。前2作は観てません。観てない人間に言えることもあるかもしれませんので、なんだよ、不勉強だな、真面目にやれよ、とか野次は飛ばさないでください。どうか。結構、打たれ弱いタイプなんで。お手柔らかにお願いします。ね。
 前2作を観ていないので、冒頭の「これまでのあらすじ紹介」的なくだりが、非常に楽しめたんですね。そもそも、あれが、よく出来たダイジェストかどうか、わたしにはわからないんですが、わからないから楽しめたんだと思います。たとえば、前2作を観ていたとしたら、シーンによって何かよみがえっちゃうと思うんですよ。つまり、自分がかつてこの番組を観た記憶を「なぞる」ようなところが出てくるでしょう。しかし、わたしは、このシリーズを観るのが初めてなもんですからね、何も「なぞる」ことができないんです。あの役をやってる草剛を見るのが初めてですから、いたってシンプルに、まっさらな気持ちで、「あらすじ」シークエンスを眺めることができました。
 察しのよい方は、もうおわかりでしょうが、わたしが吸引されたのは、ここでの彼の声です。彼のモノローグと共に、前2作の映像がコンフュージョンされていくわけですが、主人公の設定がなかなかに込み入っているものですから、あ、それは前段だったのね、と軽く驚いたりなんかして。あら、シリアスなのか、明るいのか、よくわからないタッチのドラマだなあなどと、映像に対してはまずは呑気に構えつつ、その一方で、このモノローグの妙な距離感に、確実にヤラレてしまっていました。
 自分の話を、自分でする。よくあること、のはずなのに、何かとんでもないことが起きている印象があるんですね。あの声が、そういう現象を「起こしてしまっている」わけです。
 この「あらすじ」、第三者が語る分には全然おかしくない脚本なんですが、主人公が自ら語ることによって、メタフィクション(自己言及的な作品形態のこと)としての様相を呈しています。ただ、これはそう珍しい手法ではありません。特にこの『3』は、主人公の忌まわしい過去の背景に横たわっていたものを解明する、いわば「解決篇」ですから、自己言及的であっても、それは決して不自然ではないんです。むしろ、彼が自ら過去を述べる(つまり、「自己紹介」をする)ことは必然と言ってもよいくらいです。
 ただ。ここでの草剛の発声は、不思議です。おかしな気持ちになります。ある意味、ものすごくフラットな語り口なんですが、自分のことを客観的に述べているようには思えない。むしろ、彼は彼なりに、主観的に話していて、けれども、物事に対する向き合い方が、そもそも、このくらいの距離感だから、他人から見れば、波乱万丈と呼んでも過言ではない「自分という物語」を、ここまで淡々と「綴る」(ことばとして間違っているかもしれませんが、このひとの声は「綴る」、あるいは「編み上げる」というフレーズがふさわしいと思うのです)ことができるのではないか。なんてことを考えさせるんですね。そして、素っ気なさのなかに、妙なおかしみがあるのはどうしてなのだろう。とも思わせます。刑務所に10年入ってると、こうなるのかな、じゃあ、かつて、彼はどんなふうに話す人間だったのだろう。
 想像力を刺激する、というよりは、キャッチしてはいけない電波をキャッチしてしまったような感覚に陥る、確実にヤバいイントロダクションでした。


夢でも現実でもある「うつつ」の声
 おそらく、彼は、刑務所で、何かに「目覚めた」のだろう、と考えます。まあ、そのほうがドラマティックだし、この声によってもたらされた尋常ではない状態を、ひとまず落ち着かせることができるかもしれない、という淡い期待があるからです。つまり、己の動揺をなだめるために、わかりやすい理由を探すわけです。で、手っ取り早く、そうだ、きっと、刑務所で何かあったに違いない、などと「逃避」しようとするわけです。しかし、草剛の声の「不安定な安定感」(これも、ことばとしては明らかに間違っていますが、そういう特性がこのひとの声にはあって、これは他のひとにはないものなんですよね。いわゆる迫力がある、とか、不安にさせる、と言った、はっきりしたものではないところが厄介です。表現する上では)は、そう簡単に逃してはくれません。
 いちばんの問題は、このモノローグを聴けば聴くほど、この声は、主観でもなければ、客観でもないのではないかという疑念が、静かに、けれども、着実に、ふくらんでくるんですね。これは、間違いなく、草剛というひとが、自身の声の魔力を「操った」結果、もたらしているものです。
 この主人公は、それが不運であれ、不幸であれ、自身にふりかかった災難を「対象化」しているんです。10年間、冤罪で、人生が失われているにもかかわらず、そんなことがありましてね的な語りが継続し、それがぼくだから、などと言い出しかねない雰囲気さえ漂っている。
 諦念なのでしょうか。それとも、この出来事を完全に消化しきっているからなのでしょうか。装飾の一切ない、あのとりとめのない声を耳にしていると、あることばが浮かびました。
 半覚醒。つまり「うつつ」ですね。この主人公は、刑務所で覚醒したのではなく、あの事件をきっかけに、無間(むげん)地獄のような「夢」を延々みつづけているのではないか。自分が、起きているのか、眠っているのかわからない状態で「あらすじ」を語っている。そう考えると、しっくりきます。
 あの事件は解決していないわけですから、たとえ肉体的には「目覚めている」としても、彼の精神状態は、ある意味「昏睡状態」にある。この、夢と現実のはざまにある「うつつ」を、あの声は体現していたのではないでしょうか。
 昨年、ガブリエル=ガルシア・マルケスというノーベル文学賞受賞作家が亡くなりましたが、このひとの名をとりわけ有名にした『百年の孤独』という小説がかつて「マジックリアリズム」という概念を全世界に蒔き、発芽させました。「マジックリアリズム」とは、現実と幻想が同時にある表現形態のことで、そこでは日常も非日常であり、非日常もまた日常なのです。境い目がない。裏だと思っていたものが表だったり、表だと思っていたものが裏だったりします。そもそも、物事を峻別しないのです。すべてが同時にある。
 『スペシャリスト3』の草剛の声は、目覚めているのか、そうでないのか、判別しません。物語の終盤で、忌まわしい事件はほぼ解明され、「人生を前向きに生きるための殺人」などという非常に危険なことばもラスボスから飛び出すわけですが、そうした、わかりやすい危なさよりも、主人公の半覚醒の声のほうが、よっぽど危ういと思いますし、本作が追いかけてきた事件のはてしない不可解さとも、見事に呼応していると思うのです。
 すなわち、冒頭のあの声は、ある種の「予告」だったと考えるべきであり、草剛の発声は、その意味で、『スペシャリスト3』という作品のフェアネス(公平さ)であったのではないでしょうか。
 最後に。ラッキョウは、いくら剥いても、皮だけです。
 ご静聴ありがとうございました。ではまた来週。お逢いましょう。



相田“Mr.M”冬二

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