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SMAPコラム「Map of SMAP」

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TV:CX系ドラマ『僕の生きる道』(2003年1月〜)主題歌収録のシングル。
2015.4.14更新

歩きながらダンスする──稲垣吾郎「自分を信じた男」の表現


ありふれた奇跡
 今日は『世にも奇妙な物語 25周年スペシャル・春〜人気マンガ家競演編〜』のトリを飾った「自分を信じた男」の稲垣吾郎さんの芝居についてお話したいと思います。
 冒頭、ある曲が流れますね。この曲は物語の後半でもリフレインされますが、スクリーミン・ジェイ・ホーキンスというひとが1956年にリリースした「I PUT A SPELL ON YOU」という曲です。映画がお好きな方であれば、ジム・ジャームッシュ監督の出世作『ストレンジャー・ザン・パラダイス』の記憶と密接に結びついているのではないでしょうか。もしご興味があればYouTubeなどで検索すればすぐに予告編を見ることができますが、ジャームッシュのひらめきは、この曲を、大通りを横切るたった一人の歩行に合わせて流したことなんですね。この映画は、全編ワン・シーン/ワン・カット(ひとつの場面が、カットが切り替わることなく、映し出されること)で構成されているので、基本的にカメラは固定されていますが、この曲が流れるときは、人物を追って、カメラが横移動します。そうすることで、映像は際立ち、この曲はより強く、より深く、印象に残るというわけです。実現されたものを見れば、それはごくごくシンプルなアイデアの具現化に思うかもしれません。ただ、ひとの記憶に残るというのは、大抵の場合、そういうことなんですね。
 素敵な表現というのは、ハッとするひらめきを、ありふれた奇跡に変えるものなんですね。逆に言えば、ありふれたひらめきを、ハッとさせる奇跡に「見せかける」ものは、駄目な表現です。
 原作でどのように表現されているのかわかりませんが、存在感のない男が、通勤ラッシュの雑踏を逆に進んでいく冒頭場面で、稲垣吾郎さんは見事な歩行を披露しています。あれは、理屈じゃないんですね。そのひとの存在にまったく気づかないひとびとは直進する。しかし、この主人公は物体として透明人間というわけではないので、自分に気づかないひとびとをよけなければいけない。この設定を、説明なしで体現しています。まるで踊るように。もちろん稲垣さんは、演出上の意図に基づいてそうしているわけですが、その表現があまりにも自然なので、わたしたちは素直に納得してしまうんですね。こういうタイプの主人公を描くときのルールって、こんな感じだったよな、なんて、ありもしないルールを思い出したりするわけです。
 繰り返しになりますが、この男は厳密な意味での透明人間はありません。「通り抜け」とか、そういうことはできないわけです。透明人間のルールなら、わたしたちはなんとなくわかっていますが、ここまで存在感のない男のルールなんて、ほんとうは知らないのです。なのに、そのルールを知っていたように気にさせる。これが、先ほど申し上げた「ありふれた奇跡」ということです。知りもしなかったことを、以前から知っていたような気にさせる。稲垣さんの歩行は、まさにそのようなかたちで、ここに存在しています。ありもしない記憶をまさぐらせる、素敵な表現がここにあります。


それは「演技神経」
 どう歩くか。あるいは、どのように歩くことができるか。そのひとに、演技的な才能があるか否かは、ほぼ、歩行のありようによって決定しています。とても残酷なことですが、映像の場合、画にふさわしい「歩き」ができないひとは、いくら滑舌が良くても、感情表現に長けていても、演じ手として大成することはできません。そして、滑舌や感情表現は努力である程度どうにかなりますが、歩行は、持って生まれたもの、というより、そのひとが、それまで、どんなふうに生きてきたかによって決定されているものなので、なかなか意識で変えることが難しいんですね。
 たとえば、クリント・イーストウッド。あるいは、ロバート・デ・ニーロ。彼らがなぜ、世界的な名優として認識されているかと言えば、「ゆっくり」歩くことができるからなんです。「ゆっくり」歩いても、画が持つ術を彼らは身につけています。おそらく、そのように人生を歩んできたのでしょう。未来は変えられますが、過去は変えられません。
 さて、「自分を信じた男」の稲垣さんに話を戻しましょう。稲垣さんは短いこのシークエンスで、主人公の過去も、同時に表現しています。彼は、これまで、何度もこういう目に遭っている。だから、こなれた動きになっているんです。ひとびとをよけることが、彼にとっては、ごく日常であり、当たり前のことなんですね。わたしたちの目に、その動きがまるでダンスのように映るのは、つまりはそういうことなんです。物語の設定は、決して普通ではありません。しかし、主人公にとって、それは普通のこと。普通じゃない状況下における普通をスムーズにあらわすと、それは、第三者にとってはダンスに似た動きになる。おそらく、そういうことだと思うんですね。
 もちろん、これはミュージカルではありません。そして、スクリーミン・ジェイ・ホーキンスのあの曲は決してダンス向きの曲ではありません。そんななか、稲垣さんはダンスするように歩行していました。
 これは運動神経をこえた「演技神経」と呼んでいい能力だと思うんですね。しかも、稲垣さんの表現はいつもそうですが、「どうだ、すごいだろ」というような部分が一切ありません。ハッとするひらめきを、ありふれた奇跡に変えるというのは、つまりそういうことです。
 終盤、銀行強盗のシーンも、静かに凄かったですね。もはや、あそこでは歩行はおこなわれず、ただ止まっているだけなんですが、彼が地上から浮いてるように映る瞬間が何度かあって、もちろん、錯覚なんですが、そういう錯覚さえ出現させる「演技神経」を稲垣さんは有していると思います。
 面会室のエピローグ。あそこでは彼の足が映らないのも、想像力を刺激します。彼は、ほんとうの透明人間に、あるいは、幽霊にでもなってしまったのではないか。そんなことを妄想させてくれるんですね。
 そう、素敵な表現は、ルールで縛るのではなく、観客に自由を与えます。稲垣吾郎さんの「演技神経」は、まさにそのために行使されているのです。



相田“Mr.M”冬二

※このコラムは、楽天ブックスのオリジナル企画です。
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