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SMAPコラム「Map of SMAP」

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TV:CX系ドラマ『僕の生きる道』(2003年1月〜)主題歌収録のシングル。
2015.5.19更新

SHINE A LIGHT ──映画『HERO』撮影現場レポートepisode2


木村拓哉は出迎える
 木村拓哉は、誰よりもはやく、撮影現場に到着している。これは、わたしの主観ではなく、共演者が証言していることなので、間違いのない事実である。だが、はやく現場入りしている、という意味ではない。
 映画の現場というのは、スタッフワークから言えば、準備、撮影、準備、撮影、準備、撮影の繰り返しである。演者にとっては、待機、本番、待機、本番、待機、本番のリピートだ。待機のあいだ、「役になりきって」いたら、精神はもちろん、肉体がもたない。日没が生じるロケなどではそうではないが、セットでの撮影は朝から深夜まで、ということも少なくない。一日中、「その役」に同化していたら、人間としての生活は壊滅してしまうだろう。もちろん、そこまでクレイジーなアプローチを選択する俳優がいないわけではない。のめり込み型の役者は確かにいる。しかし、ほとんどの、と言ってよいと思うが、多くのキャストは、待機と本番を切り替えながら、現場という時間を過ごしている。俳優にとって、現場は「職場」である。「職場」の空気は、仕事に影響する。「職場」の空気を、周囲のひとびとといかに作り上げるかも、社会人には必要なことである。
 前置きが長くなった。木村拓哉もまた、現場でずっと久利生公平として生きているわけではない。待機のあいだは、木村拓哉として、たとえば、城西支部メンバーを演じる共演者たちと談笑している。そして、その和やかなムードは、『HERO』という作品の、どこかスマイリーな感触にも反映されている。同化、ではない。スムーズな移行がそこにはある。
 助監督が「お待たせしました」と、待機中の出演者に準備が整ったことを知らせに来る。八嶋智人が「あいよ!」と応じ、他の面々もそれに続く。そして、現場に到着すると、木村拓哉は既にそこに居る。さっきまで、みんなの和のなかにいたはずなのに、いつの間にか移動しているのだ。
 木村拓哉は、待機という「ベンチ」をみんなと一緒に温めているだけではなく、本番という「フィールド」でみんなを出迎える。もちろん、わたしは木村拓哉の真意は知らない。けれども、出演者たちが、撮影現場に赴くと、そこに木村拓哉が居る、という現象は、そのように映った。木村拓哉は、共演者を出迎えることで、久利生公平を、その都度、スタートさせているのではないか。あくまでも仮定にすぎないが、これは主演俳優=座長としてチームを引っ張る、ということとは別の、もっとパーソナルでストイックな「俳優術」に思えた。


木村拓哉は帆船である
 しかしながら、木村拓哉から久利生公平への移行がいつ行なわれているかは、何度見つめてもわからなかった。いつの間にか現場に木村拓哉が居るように、久利生公平もいつの間にか居て本番がはじまる。
 一瞬だけ、待機「ベンチ」から本番「フィールド」に向かう木村拓哉を目撃したことがある。まず印象に残ったのは、その姿勢の良さだ。歩いているのに直立不動、特に上半身がまったく揺らいでいない。肩で風を切るのではなく、上半身という面全体で風を受けとめ、ビクともしない肉体がそこにはあった。その様は、強靭な帆船を思わせた。
 待機場所で、共演者たちとテーブルを囲んでいるときも、木村拓哉はすこぶる姿勢がいい。座っていても、やはり上半身がまったく崩れていない。
 木村拓哉はかつて剣道をやっていたと聞くが、彼の上半身は武道の心得を感じさせる。抽象的な言い方になるが、志が立っている。だから、待機と本番との境い目が見えない。志が立ちつづけているから、吹く風を受けとめ、それを動力に変換し、前に進むことができるのかもしれない。わたしは、木村拓哉を船になぞらえ、そんな妄想をしていた。
 言うまでもないが、木村拓哉と、久利生公平は、まったくの別人格である。そして、彼は、待機を待機として、本番を本番として全うしている。ガチガチに「役になりきったり」はしていない。シームレスに移行する。
 揺らぐことのない上半身と、いつの間にかの移動。この交錯こそが、木村拓哉が独自に獲得した極意なのではないか。そして、こうも思う。彼の体内では、待機と本番が、ほとんど結びついている。待機、本番、待機、本番ではなく、待機本番待機本番と、ひとつながりなのだ。だから、本人から役への移行が見えないし、彼はいつの間にか「そこに居る」のである。
 そして船は行く。



相田“Mr.M”冬二

※このコラムは、楽天ブックスのオリジナル企画です。
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