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DVD Collection 「鍵のない夢を見る」

直木賞受賞作品を映像化

取材・文=塚田泉

辻村深月[原作]インタビュー 「輪郭をもって5人を生かしてもらった」

自分のそばにある、加害者と被害者

“経験したことのない、身に覚えのある話。”
 実に謎めいた一文だが、連続ドラマW『鍵のない夢を見る』を見た後では、本ドラマのキャッチコピーであるこのフレーズに、膝を打ちつつ深く感じ入る人も多いのではないだろうか。


「このキャッチ、本当に素晴らしいですよね。“実際に経験してはいないんだけど、その気持ち、わかる気がする……”というふうに、この物語の中に自分を感じてもらえるかどうかが核だろうと、原作者としても思っていましたから」


 そう絶賛するのは、このドラマの原作者である辻村深月。地方に生きるごく普通の30代前後の女性それぞれを主人公に、端からみればありふれた事件の被害者に、または加害者になる瞬間を描いた5篇からなる短篇集。それが直木賞受賞作でもある『鍵のない夢を見る』だ。


「原作は、独立した5つの話で構成したものですし、5本すべてそろっての映像化は難しいだろうと思っていたのですが、連続ドラマWというこれ以上ない枠での映像化に加え、自分が書きたかった部分を魅力に思ってくださった方が舵を取ったことがすごくわかるような仕上がりで。そのうえ、恐縮するくらい原作に忠実ながらも、細部の設定その他を豊かに膨らませていただいていて。ですから、“私はここまで書かなかったけど、彼女は絶対こんな部屋に住んでこんな癖があったりする女性だ”と、はっきりした輪郭をもって5人を生かしてもらった感じがして、嬉しかったです」


 『鍵のない夢を見る』は、デビュー以来“青春もの”を得意としてきた辻村が、真っ向から自身と同年代の女性を扱った作品。このことから、当時は“辻村深月の新境地”とも言われたわけだが、そもそも彼女が“大人の女性たち”を描こうとしたきっかけとは何だったのか。


「30代ぐらいになると、友だちも大きく変化したり身近に亡くなる人もあったりで、それまではどこか隔たりがあったメディアで報じられる事件や出来事も、自分の生活の延長線上にあるという実感をもってとらえられるようになってきたんです。そうなると……メディアでは被害者、加害者と報道される人たちも、それまでは普通に生きていたはずだし、その事件にしても、被害者自らそこに飛び込んだものや、加害者と呼ばれている人が被害者にそうせざるをえないところまで追い込まれたケースもあるかもしれないし……と、いろいろな可能性を感じるようになりました。そういう人たちを、自分のそばにあるものだという感覚で、書いてみたいと思ったんです」



女優たちと相手役の力量のすごさ

 稚拙な夢を大真面目に語る“純粋”な男に幼さを感じながらも、自身を差し出さずにはいられなかった教師(倉科カナ)を描いた第1話。典型的なDVパターンに陥りながら彼と離れられないフリーター(成海璃子)の2話。プライドと寂しさを同時に抱える地方の未婚OL(木村多江)が、徐々に勘違いを暴走させていく3話。小学生時代に深く刻まれた、同級生とその母の“小さな罪”が忘れられない教師(高梨臨)の葛藤を追った4話。そして、順調に人生の階段を駆け上がってきた女性(広末涼子)が、我が子を見失う“事件”によって陥るエアポケットを描いた5話……。確かにこうして内容を書いただけでも、殊に女性ならば誰しもが、琴線に触れそうなひとつ、ふたつがありそうだ。


「彼女たちはありふれた人物とはいえ、私とはタイプの違う人たちなので、5人のことを自分でもはっきりとはわからなかった部分もあるんですが、そこをドラマで補足してもらったような気がしています。それは脚本や演出はもちろん、女優さんたちの力量によるところが大きかったのだろうなと。あと、彼女たちの相手役の役者さんたちも……すごかったです(笑)」


 殊に1~3話は、いってみればダメ男に翻弄される女の話。演じた順でいえば、林遣都大東駿介大倉孝二のそれぞれが、“女を萎えさせるイタさを無自覚にまき散らしつつどこか憎みきれない人物”をまさに怪演。


 このように、各話の主人公のみならず登場するどの人物にも、絶妙なリアリティを持たせたこのオムニバス。観る者それぞれの心に直接触れてくるような“身に覚えのある”話や人物は異なるだろうが、前述の辻村の言葉にもあるような「自分の生活の延長線上にあるという実感」は、どの話からも感じられる仕上がりなのは確か。その理由として、この5話が“地方の話だ”ということも大きなポイントといえるのかもしれない。


「この短篇集、直木賞を受賞したあたりから“地方都市に生きる女性たちが……”というキーワードで語られることが多くなって、自分でも改めて気づいたんです。考えてみれば、大都市で生きる人よりも地方で生きる人の方が圧倒的に多いわけで、そういう人たちの生活や価値観の方がスタンダードだといえるのかもしれない、と。そんな、はっきりと意識しないまま原作に内包させていたものが、今回の映像化でさらに明確になったという印象がありました。そういう意味でも、このドラマにはとても感謝しているんです」


つじむら・みづき/1980年山梨県生まれ。2004年『冷たい校舎の時は止まる』でメフィスト賞を受賞しデビュー。11年に吉川英治文学新人賞を受賞した『ツナグ』は、翌12年に映画化された。同年、『鍵のない夢を見る』で直木賞を受賞。他の著書に『島はぼくらと』『水底フェスタ』『オーダーメイド殺人クラブ』など。

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