トップ > キャンペーン・特集 > DVD・ブルーレイ > 楽天ブックス: 新作映画N@VI

DVD Collection 「HANNIBAL/ハンニバル」

あのハンニバル・レクターの若き日を描く迫力の海外ドラマ

文=池田敏

 寡作の人気作家トマス・ハリスが、小説『レッド・ドラゴン』で生み出した怪物的犯罪者、ハンニバル・レクター博士。大胆不敵にもレクター博士を主人公にした海外ドラマが『HANNIBAL/ハンニバル』だ。


 時代は『ハンニバル・ライジング』よりずっと後で、『レッド・ドラゴン』の3年前(但し21世紀の現在)。後に『レッド・ドラゴン』で再会する、レクター博士とウィル・グレアムの奇妙な関係を炙り出していく。


 ある猟奇殺人事件の捜査でFBIのクロフォード(ローレンス・フィッシュバーン)は殺人犯の心理に詳しいグレアム(ヒュー・ダンシー)に協力を依頼。精神的ダメージが大きいグレアムは精神科医レクターマッツ・ミケルセン)との面談を受けるが、レクターはむしろグレアムを翻弄。続けて起きる数々の連続猟奇殺人の背後でも時に暗躍する。


 まず最初に触れねばならないが、猟奇殺人という題材に欠かせない残酷描写は圧倒的。見る者を選ぶレベルであると同時に、ホラー映画ファンも感心するのではないかというほど斬新でスタイリッシュ。全米で地上波のNBCネットワークが放送したことに驚く。


 スリリングな展開、殺人犯になりきるグレアムの心象シーン、レクターの読めない真意にじらされつつも楽しめるが、レクター役のミケルセンが光る。「偽りなき者」(12)でカンヌ国際映画祭の男優賞に輝くなど映画好きにも人気だが、レクター役の定番アンソニー・ホプキンスとも異なる優雅な佇まいだ。


 本作の意外な見どころは、グルメのレクターが作る手料理の数々。有名シェフのホセ・アンドレスが監修し、目を楽しませてくれるが、レクターなので肉料理の材料はひょっとして……とつい背筋が寒くなるのも憎い。


 第1話の監督はデイヴィッド・スレイド。デビュー作「ハードキャンディ」(05)も主役のエレン・ペイジが怖かったので適材。他の監督も撮影監督ギレルモ・ナヴァロ、ジェームズ・フォーリーなど映画界でも実績のある面々がずらり。シーズン2はピーター・メダックヴィンチェンゾ・ナタリまでが参加。


 クリエイターのブライアン・フラーは本作を、何と7シーズンも続けることを計画しており、時系列ではシーズン4で『レッド・ドラゴン』、シーズン5で『羊たちの沈黙』、シーズン6で『ハンニバル』と重ね、シーズン7を独自の最終章にしたいと願っているという。実現の可能性は高い、と断言する。


DVD Collection 「オールド・ボーイ」

エリザベス・オルセンが魅せる、韓国映画イチの怪作のリメイク「オールド・ボーイ

文=服部香穂里

 ハリウッドの窮状を露呈するかのように相次ぐ、リメイク企画。しかし、そのお題が、日本の漫画に韓国流の味つけを施した問題作「オールド・ボーイ」(03)とあれば、しかも、メガホンをとるのが、骨太な鬼才・スパイク・リーと聞けば、マンネリへの倦怠感も、期待感へと一変する。
 平凡な男が、何者かに監禁され、妻殺しの容疑までかけられる。長く苦しい拘束期間を経て解放された彼は、数々の疑問の答えを探しながら、正体不明の犯人に復讐を誓う――という基本の筋立ては、オリジナル版を踏襲しつつ、舞台をアメリカに移し、9.11同時多発テロからオバマ政権誕生まで、歴史が大きく動いた波乱の20年間を背景に置く。時代の激流から完全に取り残された独房のような一室で、3歳で生き別れた一人娘への愛と、真犯人への憎しみを募らせながら、トレーニングに没入する男のやるせない孤独が、圧巻の肉体改造を実現させたジョシュ・ブローリンのストイックな名演と相まって、より切実に伝わってくる。
 多くの映画ファンを震撼させた本家ゆえ、驚愕の真相に到る衝撃が弱まるのは必然だが、スパイク・リーは、そんなハンディは百も承知の上で、解放後の主人公を献身的に支える若い女性との間に芽生える愛が、あまりに残酷な運命に呑まれる様を、濃密に描く。二人のため、新たに用意されたエンディングは、えげつなさに悶絶した韓国版とは対照的に、メロドラマ性を帯びた、切ないカタルシスをもたらす。
 そんな豊かな情感に、大いに貢献しているのが、鮮烈な劇場映画デビューを飾った「マーサ、あるいはマーシー・メイ」(11)以降、オファーが引きもきらない新星・エリザベス・オルセン。あのオルセン姉妹の妹……というキャッチフレーズは、もはや不要の活躍ぶりだが、セレブな姉の間近で、幼少期より磨き上げてきた人間観察眼が、現在の地に足ついた演技の礎となっているであろうことは、想像に難くない。「GODZILLA ゴジラ」(14)の医師、本作のソーシャル・ワーカーと、一見どこにでもいそうな(実際はいないのだが)親しみやすさで、日常に根差す職業へナチュラルにハマるのも、女優然としていない彼女の強みである。凛々しさと脆さが共存する澄みきった瞳の成せるわざか、今回体当たりで挑む濡れ場であれ、清潔感は損なわれぬまま。注目の『アベンジャーズ』最新作でも、その眼力が如何なるきらめきを見せるか、楽しみに待ちたい。


DVD Collection 「そこのみにて光輝く」

何処(どこ)にも行けない彼ら 「そこのみにて光輝く

大木 萠(映画「花火思想」監督)

 達夫(綾野剛)と千夏(池脇千鶴)が、惹かれ合うことに理由などないとことさら強調するかのようにお互いを求め合う海のシーンが印象深い。そしてその二人の関係を知って、千夏に泣きすがる全裸の中島(高橋和也)の哀れさも。だがこれは男と女のラブストーリーではない。行き場のない人々の物語だ。日本中あちこちに彼らのようにそこでしか生きられない人々が、今日も泣き笑いながら暮らしている。私は故郷を思い出していた。画面に映る景色や海の音がそうさせたのではない。何処にも行けない彼らの姿がそうさせたのだ。


 主人公・達夫は、パチンコ屋で粗暴だが気のいい青年・拓児(菅田将暉)と知り合う。ついていった拓児の家はバラックで、そこには寝たきりの父親とその介護に追われる母親、そして姉の千夏が暮らしていた。次第に惹かれ合っていく達夫と千夏だったが、千夏は拓児の勤める会社の社長である中島との関係を切れずにいた……。


 終盤、「家族を喜ばせたかっただけ」と泣く拓児を見て愚かだと笑う人がいる。過去に縛られ何もできない達夫を見てだらしないと呆れる人がいる。千夏の自らの父親に対する行動を見て軽蔑する人がいる。それしかない筈はないのに、それしかなす術を持たない人々が多すぎるのだ。この映画は、その現実を残酷なまでに正面から見つめながらも、我々に考える時間をくれる。


 思い出したのは同級生のT君のこと。彼は父親が失踪したため高校卒業後すぐ大工になるも直後に母親が病死、という世間が言う幸せとは遠い場所にいた。かつてT君に、他所(よそ)の土地に行く気はないのかと尋ねたことがある。彼は「俺は此処(ここ)でいいや」と言った。なぜこの街に居続けるのか、私には理解できなかった。しかし、では今の私自身は、広いだけの土地の中の狭い社会を飛び出し閉鎖的な街の中に広がる虚飾の社会に入り込んで、果たして何が変わったのか。それは今でもわからない。何処まで行っても此処は此処でしかなく、いつでも隣にいるのは貧困と虚無感である。


 千夏が達夫に向けた、此処に縛られるしかない女としての悲しい独白は、千夏の父親がこの世でたった一人の人間の名前を呼ぶことで全て赦され、孤独な彼らを明日へと誘うのだ。達夫の背後に沈んだ夕陽は、またなんでもない顔で昇るだろう。T君は結婚して、北海道の片隅で今も大工を続けている。私には、彼らがとても眩しく見える。


 でも、もしT君にこのDVDを送ったら、池脇千鶴ばっかり観るんだろうなあ。

おすすめキャンペーン・特集

このページの先頭へ