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森田修平『東京喰種トーキョーグール』監督インタビュー

オスカー候補監督が裸一貫で挑んだ新天地

取材・文=増當竜也

初となるTVアニメへの挑戦

「九十九」(13年公開のオムニバス映画「SHORT PEACE」内収録)が第86回アカデミー賞短篇アニメーション部門候補になるなど、国内外で注目を集め続ける森田修平監督。そんな彼が次に挑んだのは、TVアニメ『東京喰種トーキョーグール』。石田スイの漫画を原作に、人の姿をしながら人を喰らう種族グールの内臓を移植され、半人半グールと化してしまった青年・金木 研(カネキケン)の運命を描いたダーク・ファンタジーである。
「昨年12月に依頼があり、すぐに原作を読んで二つ返事でやらせていただくことにしました。ちょうど自分がTVアニメという、お客さんがより多い場所に挑みたいと思っていた時期でしたし、グールというマイノリティな人々が、実はより人間らしかったという原作の面白さが自分の中にすんなり入ってきたので、それをどう映像で表現するかにこだわってみようと」


 題材的に残酷描写も多いが、それらはショーアップされたものではなく、あくまでもドラマに肉薄した表現であり、その手のものが苦手な人でも思わず引き込まれてしまう不思議な魅力を備えている。
「自分自身、映画でも小説でも単に『残酷でかっこいいでしょ』みたいなものは少し苦手で、やはりそこに意味というかドラマがあり、想像力を沸き立たせてくれるものに魅かれるんですね。『東京喰種』の原作にもそれがありました」


 監督自身が絵コンテと演出を担当した第1話のハイテンポな流れ。そこでカネキがグールになってしまうまでを一気呵成に魅せていく。
「テンポにはこだわりました。また自分が昔サンライズにいたとき、富野由悠季監督が『ロボットものの第1話は主人公がロボットに乗るまでではなく、乗って何かを感じて降りるまでを絶対やれ』と仰ったことを思い出しまして。では第1話でカネキくんがグールになってしまって何を思うか? そこでこの作品のテーマが、見てくださる方にわかっていただけるのではないかと」


 これは森田作品の常ではあるが、今回も声優陣のチョイスがいい。
「今回はオーディションで、たとえばカネキ役(花江夏樹)には3分間ずっと叫んでくれとオーダーしたんです(笑)。第1話で彼を襲うグールの女性・神代利世役(リゼ/花澤香菜)には、1分半ほどアドリブで彼を『美味しそうね』と追いかけてくれと。彼女をアニメで描くとエロくなりがちですが、僕はエロの先にある恐怖が欲しかったので(笑)、あくまでも素で、自然に妖艶に感じる演技を求めてみたんです。また、そういうものを要求すると声優それぞれの構成力の巧さとか、何よりも本人の生っぽさが見えてくるんですよ」


CGIエキスパート、森田作品の軌跡

 では、ここで主な森田監督作品を振り返ってみたい。まず05年、アジアン・テイストの中でかくれんぼをする子どもたちが次々と鬼に襲われていく短篇アニメ『カクレンボ』。
「10年以上前、当時20代前半だった頃の自分の好きなものを注ぎ込んだ作品です。口べらしの要素など、日本の昔話ってどこかダーク・ファンタジーで、そういうものは今でも好きですね」


 月に移住して久しい人類と、絶滅したと思われていた地球の人々とのコンタクトを描いたOVAシリーズ『FREEDOM』(06~08)では、特に後半、主人公たちが地球に降り立ってからの描写に魅せられた。
「そう言っていただけると嬉しいです。僕はどこか地に足が着いてない感が好きではないので、月の若者たちが地上に着いたら思いきりはっちゃけましょう! と。そこはすごくこだわったところです」


 森田監督作品の特徴として、場所や空間のユニークな切り取り方も挙げられる(『東京喰種』の舞台となる20区も、実に魅力的に描かれている)が、700年後の古都・奈良を舞台に「ローマの休日」に倣った少年少女の短篇SFラブコメ「コイ☆セント」(10)はその筆頭。個人的には、もっとも愛してやまない森田作品である。


「80年代って、ああいうはっちゃけたボーイ・ミーツ・ガール作品が多かった気がするんですけど、最近ないなと思ってやってみたんです。自分が奈良県出身で、仏像も好きなので、単純に趣味嗜好の愛をぶつけた作品でした(笑)」


 そして「九十九」で一気に世界中の注目を集めたわけだが……。
「アカデミー賞にノミネートされて一番の恐怖は『これで俺は固まってしまうんじゃないか!?』ということでした。ちょうどサンライズを抜けて、これからはっちゃけよう! と思っていた矢先でしたが、少なくとも周囲はこれで構えちゃうだろうなと」


 つまりは固まらないように、裸一貫になって初めて挑んだのがTVアニメというハードなジャンル。そもそもはCGIのエキスパートでもある森田監督だが、今回は不思議とそういう意識にとらわれずに見ることができた。
「せっかく初めてTVアニメを監督するのだから、今まで身に纏っているものは全部捨てて臨もうと思ったんです。また今回はコンテを描く人と演出を毎回一緒にしようということになりまして、それが非常にうまくいきました。僕以外の4人の演出さんや作画チームのおかげですね」


 さて、『東京喰種』は来年1月から2クール目の放送も決定し、現在制作真っ最中の森田監督だが、短篇やOVA、TVときたら、次はやはり長篇映画を望みたいものだ。


「実は『FREEDOM』の後から、ずっと長篇映画は目指しています。もちろん形にこだわる気はないので、いろいろ挑戦していきたいですし、TVアニメが終わったら、また全然違うものをやってみたいですね」


もりた・しゅうへい/1978年生まれ、奈良県出身。01年、京都造形芸術大学在学中にデジタル映像制作グループ、神風動画の立ち上げに参加。03年、制作ユニットYAMATOWORKSを設立する。05年に監督・脚本・演出・3DCG・編集を務めた短篇アニメ「カクレンボ」を発表、東京アニメアワード優秀作品賞などを受賞し注目を集める。その後もCMとの連動企画OVA『FREEDOM』(06~08)の監督に抜擢されたほか、「コイ☆セント」(10)「九十九」(12)の監督・脚本を務める。「九十九」は13年、オムニバス作品『SHORT PEACE』として公開、アカデミー賞短篇アニメーション部門にノミネートされた。

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