トップ > キャンペーン・特集 > DVD・ブルーレイ > 楽天ブックス: 新作映画N@VI

DVD Collection 2つ目の窓

宇宙を感じた命の繋がり

文=千浦僚



  監督河瀬直美に発する女系母系の絆と包容力が女性キャスト陣の松田美由紀渡辺真起子吉永淳らに行きわたり、キャパシティの狭い生き物としての男を捉え、あるいは守り、その様が物語の構造であり同時に映画そのものであるという作品、それがこの「2つ目の窓」だ。



  奄美大島に暮らす16歳の少年界人(ルビ:かいと)(村上虹郎)と同級生杏子(吉永淳)を中心に、女手ひとつで界人を育ててきた母親、岬(渡辺真起子)、東京で暮らす界人の父(村上淳)、島の人々の信望篤いユタ(シャーマン、口寄せ巫女)であったがいまは病により死に瀕している杏子の母イサ(松田美由紀)、そんな妻を優しく支える父、徹(杉本哲太)、島の古老亀次郎(常田富士男)らが厚みのある存在感をひたすらに、観せる。物語としては、離れて生きる父親にどういう風に母さんと出会ったの、なぜ別れたの、と尋ねに行き、母親に新しい恋人があることが我慢ならず、自らを慕う少女にセックスしようと言われても渋ってしまう少年の生硬な抵抗感を、逝く母親を毅然として送り、その強さで少年を愛する少女が解いていく、というようなものだが、言ってしまえば娯楽映画的な恣意的なお話の要素は薄い。だが、スタッフとキャストが1カ月以上ロケ地で暮らしながら撮影した映像と俳優各個人のドキュメントとも思える写り方、記録のされかた(特にそれは村上虹郎において顕著)は、本作の根底、企画の発端に最愛の養母の死去と自らのルーツである奄美大島への思いを据え、画期となる作にしたいという監督の意図どおり、映画でしか表現できない大きく深いものを湛えている。界人と杏子が自然のなか初めて結ばれ裸で海のなかを泳ぐ、そこに亀次郎のエールの声がかぶさるとき、観ていて産まれなおすような心持ちになる。 



 余談だが昨年まで筆者が働いていた映画館に村上淳さんがお客様としてよくいらっしゃり、いつとなく懇意になり会えば言葉を交わすようになっていたが、六月ごろ私の妻に子が産まれその際出産に立ち会ったという話になって、年齢は少し上なだけだが父親としてはるかに先輩の村上さんが「俺も、昔立ち会ったよー」と言い、そこでまたグッと距離感が縮まったと思ったのも束の間、続けて「あれは、宇宙を感じたね」と言われ、凡俗の徒の哀しさ、ただやきもきするばかりの立ち会いでそこまで感じる余裕のなかった身としてはまた突き放されたような気がしたが、本作を観た時、やっとそれを少し感じることができた。セルBDとDVDはそんな村上淳虹郎の親子対談も特典映像として収録されている。

おすすめキャンペーン・特集

このページの先頭へ