今月はコレが買い

気になる新作・旧作・未公開をピックアップ

劇場公開作はアクション秀作2本 未公開ながら傑作仏製恋愛劇も

文=添野知生

 カーアクション映画のなかで公道レースものがどうしても好きになれないのは、遊戯のために公道を占領し、他者の危険を顧みない傲慢さが気になるから。ドリームワークスの新作「ニード・フォー・スピード」は、同名ゲームを原作に、世界のスーパーカーが対決する型破りの公道レースを描いているが、これが案に相違しておもしろい。



 ひとつには主人公の目的が復讐で、レース前に大陸横断しなければならないという「バニシング・ポイント」ばりの設定があるから。懸賞めあての刺客が次々に現れ、どう逃れるかが最大の見せ場になる。さらに、同乗者としてイギリス人のお嬢様を配したことで、気の合わない男女の喧嘩道中記になっているのがすばらしい。



 年平均三本の主演作が続くわりにアベレージの高いジェイソン・ステイサムだが、なかでも「ハミングバード」は異色の見ごたえ。ロンドンの暗黒街が舞台の、静かで口数の少ないフィルムノワールで、昔のジャック・ヒギンズの小説を思わせる。


 みすぼらしい外見のホームレスの男が、地回りのやくざに叩きのめされ、偶然逃げ込んだ無人の高級アパートを隠れ家に、酒を断ち、髪を切って髭を剃るとじつはステイサムだったという開巻がまず秀逸。やがて彼はある目的のために、中国人マフィアの下で働き始める。


 十月までという期間限定の物語なのも泣かせるし、格闘シーンの実用的で無駄のない動きにも惚れ惚れする。「イースタン・プロミス」の脚本家スティーヴン・ナイトの初監督を、クリス・メンゲスの撮影が支えた。


恋するパリのランデヴー」は、これが劇場未公開で映画祭上映もなしとは……と慨嘆したくなる傑作。いつになってもフランス映画にはかなわないジャンルがあると痛感させられる。つまり軽恋愛劇、ラブコメ、艶笑コメディなのだが、シリアスな人間ドラマとしても奥が深い。


「幸せは一人ではやってこない」の原題どおり、享楽主義で子供嫌いの男が年上の女と恋に落ちるが、彼女は三人の子を持つ人妻だったという物語。女はソフィー・マルソーで、十代のアイドルがいろいろあって007映画の悪役までやったのち、今でもラブコメの主役を演じて魅力的なのだからうれしくなる。大人向けの、カラフルで洒落ていて思慮深くて自由で軽快でエッチで笑わせてくれる、そんな映画が見たい人におすすめ。

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