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シリーズ化望むジャッキー快作とイランの鬼才ファルハディ新作

文=添野知生

ジャッキー・チェンが「ポリス・ストーリー」シリーズに還ってきた、と喜ぶのは早計だが、原題にも「警察故事」とあり意気込みを感じずにはいられない。「ポリス・ストーリー/レジェンド」は、六〇歳を前に大アクションを封印したジャッキーの次なる一手で、シリーズ五作で演じた香港警察のチャン刑事ではなく、初めて中国本土の刑事を演じた現代アクション。北京の撮影所で製作された北京語映画で、繁華街とナイトクラブの大セットを作り込み、大半のシーンをそこで撮影している。



 監督・脚本にこれも傑作だった「ラスト・ソルジャー」のディン・シエンを再起用。立てこもりの密室劇で、犯人の目的を探るミステリで、シチュエーション・スリラーの趣向もあり、絞り込んだアクション場面では、総合格闘技風の闘いを見せる。「誰も死なせない」と言うベテラン人情刑事の役はよく合っているし、ひとり娘、特殊部隊長、本部長もレギュラーにして、ぜひシリーズ化してほしい。
ある過去の行方」は、「彼女が消えた浜辺」「別離」で評価を確立したイランのアスガー・ファルハディ監督の新作。フランスとの合作、パリが舞台、仏スター女優の起用でも、強靱な個性は揺るがず、凄みがある。



 パリの空港に到着した男を、女(「アーティスト」のベレニス・ベジョ)が出迎える。二人はイラン人とフランス人の元夫婦で、離婚手続きのための四年ぶりの再会であることが、話の進行の中で徐々に判ってくる。そうやって少しずつ過去にさかのぼり、一枚ずつ薄皮を剥ぐように真相を明らかにしていく脚本が鮮やかで、やがてすべては、再婚相手の妻をめぐる二重の謎に収斂していく。



 主人公の男がそうであるような、温和で粘り強い個性が根底にある。そしてとにかく演出が巧い。エリック・ロメールを思わせるごく普通のカットが、なぜこうもスリリングなのか。叙述スタイルそのものに力がある。



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