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「電子書籍であの絶版本にもう一度出会いたい」

 

本を読むことは予防注射を打つようなもの
――物語を書き始めたのはいつごろですか?――最初は漫画だったんですよね。大好きだった手塚治虫さんのマネをして、SFちっくな漫画を3歳くらいから書いていました。そのころ博多から東京へ引っ越してきたんですけど、荷物の整理のときに天井まで届くくらいの手書きの漫画のノートの山が出てきたのを覚えています。当時はただ物語を書くのがおもしろいというだけで、人に見せようという気はまったくなかったです。小学校の高学年ごろまで漫画を描いていたんですが、我ながら絵が下手くそだなと思うようになってしまって(苦笑)。そうなると描いていても楽しくないんですよ。そのころ新潮文庫から出ていた「シャーロックホームズの冒険」を読んで感激し、漫画から小説に移行していったという感じでしょうか。つまり、15歳くらいから50年くらい小説を書き続けているということになりますよね。
赤川次郎さん
――当時から変わらない、本に対する赤川さんの「軸」を教えてください。――

僕のベースは、ドイツやフランス文学など海外にあるんですよね。今なんて日本の名作とか電子書籍でタダで読めるでしょ。でも僕は、日本文学ってほとんど読んだことがないんですよ。漱石ですら3冊くらいしか読んでない。一番読書力がある中高生のころはヘルマン・ヘッセが大好きでしたし、トーマス・マン、ロマン・ロランなど、どんな長い本でも飛びついて読んでいました。今はもう、長い本を読む時間がとれないのが残念です。当時はお金がなかったから、海外文学の文庫本を作家ではなく値段で選んだりもしていましたよ。

――作家を生業にするということは昔から決めていたのですか?―

いえ、作家になりたいと思ったことは一度もないんです。書くことが好きだったから一生書き続けていきたいなとは思っていたんですが、商売にしてしまうと書きたくないものも書かなければいけないでしょ。だからサラリーマンを続けながら、あくまでアマチュアでやっていこうと。18のときに勤め人になって7〜8年、結婚し子供も生まれて…とやっていくうちに仕事もだんだん忙しくなり、残業やらなんやらで好きな小説を書く時間がなくなってしまいましてね。このままでは書くことができなくなってしまうと思って、初めて賞に応募することを決めたんです。ただそれまで日本の小説をほとんど読んだことがなかったから、どういうものを賞に出せばいいのかわからなくて…。「シナリオならセリフだけ書けばいいんだろう」という安直な考えで、最初は生島治郎さん原作の「非情のライセンス」というテレビドラマのオリジナルシナリオに応募しました。それが入選して、脚本担当のテロップに「赤川次郎」という名前が出て、ちょっと気分が良くなってしまいましてね(笑)。自分が書いたものをおもしろがってくれる人がいるんだということを知ってから、いろんなところに応募するようになりました。

――赤川さんにとって本とは?―

やっぱり「人生の基本」じゃないですか。僕自身、本から学んだことはすごくたくさんあります。若い人たちに向けて話すときには、よくこう言うんです。「本を読むことは、予防注射を打つようなもんだから」と。あらかじめ小説の中でいろんな人生の挫折を疑似体験しておく。そうすると、実際の人生で壁にぶつかったときにその衝撃度が全然違うんですよ。「失恋するとこんなに辛いんだ。でも時間が経てば必ず乗り越えられる」ということがわかっていれば、必要以上に絶望しなくて済むんですよね。今は振られると相手を刺し殺しちゃうとかっていう短絡的な事件がたくさんあるでしょ。文学を通して大人の社会をあらかじめ知っておくということは、とても役に立つと思いますよ。

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電子書籍が果たす役割とは
――現在、楽天Koboでは赤川さんの著書を450冊以上読むことができます。電子書籍についてはどんなイメージをお持ちですか?――

本は中身だけでなくて、カバーや装丁、紙の色味などをひとつひとつ編集者が吟味しながら出来上がるわけで、そういうものも全部含めて本の文化だと思うんですよね。全部電子書籍になっていいかというとそれはちょっと残念な気もするので、紙の本の文化も大切に残していってほしいなあと感じますね。ただ「ああ、あの本読みたいな」と思っても、僕が好きな昔の海外文学は新潮や岩波でもほとんど絶版になってしまって手に入らないんですよ。そういう本が電子書籍で手軽に入手できたら、どんなにありがたいか…。あとだんだん歳をとってきて目も悪くなってきているので、文字のサイズを大きく出来たり、目が疲れにくい液晶を使っていたりというのは惹かれるところですね。


赤川次郎さん
――電子書籍という新しいデジタルツールに対して、何か思うことはありますか?――

アメリカで電子書籍が普及するっていうのはすごくよくわかります。土地が広大で、南部の田舎町とかに行けば本屋なんてほとんどないわけですから。今は日本も個人書店がどんどん潰れてしまって、身近なところで欲しい本を探すということが難しくなってきています。そういう意味では、電子書籍の果たす役割というのは今後日本でも徐々に大きくなっていくのかなと思いますね。


赤川次郎さん

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赤川次郎さんのオススメBOOKS
大好きな作家の名作を国内外からセレクト
『車輪の下』

『車輪の下』

ヘルマン・ヘッセ 著


大人の敷いたレールに乗り損ねた少年の苦悩や生きづらさを描いたストーリーに、自身の青春時代を重ね合わせる人も多いのではないでしょうか。大人になった私たちが今読んでも共感できるところが多分にあります。

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『マリー・アントワネット』

『マリー・アントワネット』

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歴史ものをこれほどおもしろく読ませてくれる人は、ツヴァイク以外にいないでしょう。最後勝利した人ではなく、敗北したり惨めな死を遂げた人ばかりを取り上げるところにも惹かれます。

<上巻><下巻>

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『流れる』

『流れる』

幸田文 著


映画に感激し原作を読みましたが、著者のキビキビとした文体がとても好きです。日本文学はわりとジメジメしたものが多いというイメージがありますが、竹を割ったような潔さや無駄のない文章は読んでいて憧れます。

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プロフィール
赤川次郎さん 赤川次郎さん(あかがわじろう)
1948年福岡県生まれ。1976年、「幽霊列車」でオール讀物推理小説新人賞を受賞。「三毛猫ホームズ」シリーズなどミステリーの他、サスペンス、ホラー、恋愛、時代小説まで幅広く活躍。
編集後記
「あらかじめ本で、挫折を疑似体験する。」という赤川さんの本に対する考え方はとても共感しました。
絶版になってしまった作品との再会も、電子書籍だからこそ出来ることだと思ったので、紙の良さと電子の良さを使い分けて、今後はもっと読書を楽しんでいきたいですね。

電子ブックリーダー「Kobo Aura」はこちら→

kobo aura
 

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GINGER x 楽天Kobo 輝く女性の電子読書ライフ

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