トップ > 電子書籍 > 開催中のイベント > 気になるあの人の読書生活 第16回 伊東潤さん

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怒涛の長篠合戦を描いた「天地雷動」

伊東潤さん
――新刊『天地雷動』の読み所について教えてください。
『天地雷動』は2009年に角川書店から出された僕の実質的デビュー作、『武田家滅亡』の前史的位置付けの作品となっています。戦国時代のターニングポイントになった事件でも、本能寺や関ヶ原に比べ、長篠合戦を舞台にした小説は少ないので、自分が書かねばならないと思っていました。
読み所は、全体の四分の一ほどを占める長篠での戦闘シーンになりますが、一番コアな部分は「なぜ武田勝頼は設楽原に進出し、馬防柵を突破しようとしたのか」というところですね。謎が多いといわれるこの戦いに、僕なりの解釈を施しています。
『天地雷動』(電子書籍版)はこちら
『天地雷動』(紙版)はこちら
[伊東潤『天地雷動』特設サイト|KADOKAWA] http://www.kadokawa.co.jp/sp/2014/tenchiraidou/
――伊東さんの作品の強みである歴史解釈は、本書でも炸裂していますか?
もちろんです。歴史解釈と物語性を高度なレベルで融合するというのが僕の作風だと思っていますので、今回も様々な解釈を取り入れています。たとえば、鉄砲(火縄銃)に関して。鉄砲というのは本体と弾があれば撃てるものではなく、硝石(焔硝)すなわち黒色火薬が必要になります。この時代、硝石は内製できないので、南蛮船が運び込んできたものを、諸大名が買っていたわけです。ところが信長によって堺が押さえられ、さらに伊勢長島が落とされることで、硝石が東国に行き渡らなくなってきたのです。勝頼の焦りは相当なものだったはずです。しかも信長が、大量の硝石を家康に送ったという記録が古文書にあり、それを囮に使って勝頼をおびき出したという解釈も成り立つわけです。勝頼にも信長に「無二の一戦」を挑み、その膨張を阻止すると同時に、家康を滅ぼし、その領国を併呑するという目的があったと思います。信長が戦をする時は、戦う前に勝敗を決しています。この場合も、相手の弱みを利用し、自分の戦いたい戦場で、自分のやりたい戦い方を選びました。つまりこうした武将たちの駆け引きが、十分に楽しめる作品になっていると思います。
伊東潤さん
――本にまつわる忘れられない思い出を教えてください。
僕が小説を書き始めたばかりのころ、本屋さんで『火天の城』を見つけたんですね。初めは装丁の美しさに惹かれて手に取ったのですが、読んでみたら内容も素晴らしくて。奇をてらわず、自分の書きたいものを正面から書いている山本兼一さんに、強い憧れを抱きました。昨年の4月、『文芸春秋』の「信長対談」というものに呼ばれ、初めて山本さんとお話する機会に恵まれた時も、一ファンのように山本さんの作品の素晴らしさを語ってしまいました。それだけに、山本さんが急逝されたことを知ったときは本当にショックでした。一期一会となってしまいましたが、あのとき、山本さんの作品の素晴らしさを、直接ご本人に伝えることができて本当に良かったと思っています。
――本とはご自身の人生にとってどんな存在ですか?
本とは“人生を生き抜くための糧”でしょうか。僕らが若いときというのは、今と比べて娯楽も情報も非常に少なかったので、本を通していろいろな世界を知ることができました。今の時代は残念ながら、本が持つそうした役割が薄れてきているような気がします。とくに小説は、異世界に連れていってくれるだけでなく、作家のフィルターを通した世界観を知ることもできます。これは、人生を生き抜く上で、たいへんな糧となりました。最も分かりやすい例を挙げれば、会社で上司から嫌な目に遭っても、「司馬さんの描く竜馬だったら、笑い飛ばしているさ」と思うことで、随分と楽になりました。本のもたらすことは、読書そのものの喜びだけでなく、生きていく上で必要なことを教えてくれることだと、つくづく思いますね。
――数多くの本の中から良書を選ぶコツを教えてください。
まずベストセラーを買わないこと。外したくない心理から、最近は、ベストセラーばかり買う人が増えていますが、ベストセラーというものは会社の社員食堂と同じで、万人受けする味付けになっています。本屋大賞のベスト10に入るものなどは、すべてそうですね。そんなものは「あなたの本」じゃない。「あなたの本」は、本屋さんに入れば必ず目に留まります。その時は、高いと思っても文庫落ちなど待たずに買うべきです。それはあなたが今、食べたいと思っているものなので、今、食べないとだめなのです。つまり今、読むことによって、あなたが直面している悩みや問題が解決できるかもしれないのです。本屋さんに入れば、見えないコンシェルジェが必ずその本の前に連れていってくれます。なんか心霊話じみてきましたが、本当にそうなのです(笑)。

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Koboは思ったより小さくて手軽に読めそう

――楽天Koboについて、どんな印象をお持ちですか?
初めて電子書籍に触ったのですが、Koboは思ったよりも小さくて手軽に読めそうですね。電子書籍に対しては非常に肯定的にとらえていますよ。なにせ僕はIBM出身ですし(笑)。歴史の資料本などがもっとラインナップされれば、どんどん買って入れていきたいですね。古文書でなくてもいい、「吉川弘文館」で出ているような本とかがもっと電子化されてくれば、底辺は広がるんじゃないかなと思っているんです。僕は仕事でやっていますけど、“歴史好き”“歴史マニア”の数はあなどれません。そうそう、楽天はいつもいろんな買い物でお世話になってるんですよ。価格も安くなってきているから、電子書籍はそろそろ買い時かもしれないですね。
伊東潤さん

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伊東潤さんのオススメBOOKS

  • 『キャパの十字架』

    沢木耕太郎 著


    戦場カメラマン、ロバート・キャパの「崩れ落ちる兵士」の謎に挑む、素晴らしいルポルタージュ。沢木さんの真実を追い求める姿勢に感服します。

  • 『花鳥の夢』

    山本兼一 著


    戦国時代に生きた絵師・狩野永徳の美に対する執念、芸術家の魂を見事に描いています。安部龍太郎さんの『等伯』の対になるような作品です。

  • 『奇跡の生還へ導く人』

    ジョン・ガイガー 著


    人間が極限状態に陥ったときに現れる“サードマン”の存在について書かれた本。人間の知力や英知では解明できない、未知の世界に強く惹かれます。

プロフィール

伊東潤さん(いとうじゅん)
1960年神奈川県生まれ。外資系企業に勤務後、文筆業に転じる。『国を蹴った男』(講談社)で第34回吉川英治文学新人賞を、『巨鯨の海』(光文社)で第4回山田風太郎賞を受賞。そのほか、直木賞候補となった『城を噛ませた男』(光文社)や、『武田家滅亡』(角川書店)、『戦国鬼譚 惨』(講談社)など。最新刊に『天地雷動』(角川書店)。
[伊東潤公式サイト] http://quasar.ne.jp/CCP026.html
伊東潤さん

編集後記

企業で働かれたご経験がある伊東先生ならではの本とのつながりを伺うことができました。
ぜひ今後は電子書籍での読書体験していただき、新しい本の世界に出会っていただきたいと思いました。
kobo aura

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