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日本財団 『これも学習マンガだ!~世界発見プロジェクト~』

普遍的で個人的な苦悩を“物語”に託す

山内 今回の「生活」ジャンルの4作品はどれも以前から読まれていましたか?

福田奈知未佐子短編集 ~思い出小箱の15粒~』だけ今回初めて読みました。これ、泣いちゃいますよね。アニメの「日本昔ばなし」を彷彿とさせるような、現代のおとぎ話。思い切った単純な線で描かれていて、絵柄がかわいらしい。本当に嫌なところがひとつもないというか。男の子でも女の子でも両方読める良作だと思いました。

山内はみだしっ子』は『まんがキッチン』でも取り上げていましたよね?

福田そうですね。『イグアナの娘』の萩尾先生も別の作品ですけど、『まんがキッチン』で取り上げさせてもらっています。少女マンガの金字塔とも言える2作品ですよね。『イグアナの娘』は親との葛藤を描いています。最近、「毒親」「毒母」といった言葉が出てきているけれど、これはマンガですと田房永子さんの『母がしんどい』いうエッセイマンガから定着した言葉です。自分と親の関係を体験記として描いて熱い支持を得ています。一方、体験記として描けなくて、物語を使わざるを得ない時代や、作者の精神状態というのもあると思います。『イグアナの娘』は親子関係の苦悶を物語として見事に昇華させている。『はみだしっ子』もそう。育児放棄など、問題のある家庭があるということを、舞台を外国にしたり、主人公たちの性別を男の子にしたりして、物語に仮託しなければいけない時代だったんだなと思います。どちらも普遍的なテーマを扱っていて、今の若い人が読んでもとても面白いと思いますね。

山内クッキングパパ』はどのように見られてますか?

福田私、福岡出身なんですよ。福岡をグルメシティに押し上げたのは辛子明太子と『クッキングパパ』だと思う(笑)。

山内確かにそうかもしれないです(笑)。

福田九州って男尊女卑が強いとよく言われてますけども、そこを逆手に取ったところが衝撃的。奥さんが仕事に忙しくて、それに文句も言わずにごはんを作ってくれる旦那さんが実は理想の男性像なんじゃないの?って、打ち出したのが早かった。その舞台が博多だったというのもインパクトがありました。それで、世の男性が実際に料理を作れるようになったかはわからないですけど(笑)。

山内少なくとも、料理をつくるのは大変だってことはわかったと思います(笑)。

福田クッキングパパ』が家にあった男の子は、なかった男の子より、「料理をやってみようかな」の確率が確実に上がってると思います。「豪華な男の料理」じゃなくて日常のありあわせでちょちょいと作っちゃうところもポイントですよね。それでもって、会社の部下のかわいい独身の女の子に恋心を持たれる。「こういう人がモテるんだよ」っていう提案をしているわけです。深いですよね。

ひとりひとりに最適な“理解”の方法がある

山内子どものころはどんなマンガを読んでいましたか?

福田 貸本って分かります?おじが理髪店を営んでいて、そこで読む貸本が一番最初に読んだマンガでした。何を読んだかは具体的に覚えてないんですけど、無国籍・スパイものが多かったかな。家が「マンガは読ませない」って感じだったんですよ。両親が民藝運動をやっていて、親が与える本は柳宗悦の本とか(笑)。活字が好きだったから、それも読んでいたんですが。だから、うちにマンガを持ち込んだのはおじさん(笑)。最初にプレゼントしてもらったのは一条ゆかり先生が表紙の「りぼん」でした。その後、近所の本屋さんが貸本屋も兼ねていることに気づいて、そこからはお小遣いで貸本を借りたり、立ち読みとかしてましたね。

山内図書館でマンガを読んだことは?

福田 まったくなかった。ゼロですね。図書館にマンガがあったら借りまくっていたと思います。

山内 今、図書館にマンガを置くところは増えてますよね。独自のキュレーションでマンガを入れたりして、司書さんも工夫している。昔はマンガは文芸書より幼稚なものだと思われることが多かったけれど、その認識は変わってきていると感じます。

福田 そうですね。でも、「マンガは文芸書より下だ」っていう認識がなかなか抜けない人も少なくないのかな、と。ある人に、「マンガには絵がついている。文字を読んでいたほうがよりイマジネーションが湧くから、私はマンガを読まない」と言われたことがあって。そんな風に思っている人がいるのかとびっくりしたけれど、同時に「私も気を付けよう」と思ったんです。無意識に、自分の苦手なものを差別していることって意外とあるのかなって。実は私、音楽で泣いたことが無いんですよ。正直音楽ってよく分からないんです。って言うと大概引かれてしまうんですが(笑)。でも、音楽からインスパイアされたマンガに感動することはたくさんあるわけです。それって、間接的だけどちゃんと音楽を摂取できてるってことだと思うんですよね。だから、自分にとってピンと来ないモノを迫害してはいけないな、と。

山内マンガにピンとくる人もいれば文章にピンとくる人もいるってことですよね。

福田 そうなんです。今の教育って文字に偏向しているところがあると思っていて。文字が読めなければ試験が受けられない、問いに答えられないとか。本当はすごく能力があるのに、文字が苦手なばっかりにスポイルされている人が相当数いるんじゃないかな。文字じゃなくて、絵や音で理解するほうが得意な人もいるんだっていうことが、もっと社会で認識されればといいのにと思います。

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