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日本財団 『これも学習マンガだ!~世界発見プロジェクト~』

スペシャル特集vol.07ジャンル別インタビューシリーズ「多様性」鞆の津ミュージアム学芸員 津口在五氏

ジャンル別インタビュー「多様性」

「これも学習マンガだ!」の11ジャンル(※)を1ジャンルごとに各ジャンルの専門家が紹介するインタビュー企画。第6弾は「多様性」ジャンルを取り上げます。広島県福山市にあるアール・ブリュット専門の美術館、鞆の津ミュージアムの学芸員津口在五氏に「多様性」ジャンルの選書作品についての感想や、価値観を揺るがすおすすめマンガの紹介をしていただきました。
(※)「文学」「生命と世界」「芸術」「社会」「職業」「歴史」「戦争」「生活」「科学・学習」「スポーツ」「多様性」の11ジャンル

プロフィール

  • 津口在五
    津口在五(Akigo Tsuguchi)
    鞆の津ミュージアム学芸員
    1976年 広島県生まれ。鞆の津ミュージアム学芸員。東京藝術大学大学院修士課程修了。2013年にミュージアムの母体である社会福祉法人 創樹会に入職後、展覧会の企画・運営に携わり始める。母体が運営する障害者支援施設で生活支援員としても勤務。共同で企画した展覧会に 『ヤンキー人類学』『花咲くジイさん〜我が道を行く超経験者たち〜』『スピリチュアルからこんにちは』『障害(仮)』などがある。福山大学非常勤講師。
  • 山内康裕
    聞き手
    山内康裕(Yasuhiro Yamauchi) 『これも学習マンガだ!』選書委員
    1979年生。法政大学イノベーションマネジメント研究科修了。2009年、マンガを介したコミュニケーションを生み出すユニット「マンガナイト」を結成し代表を務める。
    イベント・ワークショップ・デザイン・執筆・選書(「このマンガがすごい!」等)を手がける。また、2010年にはマンガ関連の企画会社「レインボーバード合同会社」を設立し、マンガに関連した施設・展示・販促・商品等のコンテンツプロデュース・キュレーション・プランニング業務等を提供している。主な実績は「立川まんがぱーく」「東京ワンピースタワー」「池袋シネマチ祭」など。「DOTPLACE」にて『マンガは拡張する』シリーズを連載中。「NPO法人グリーンズ」監事、税理士なども務める。

様々な方法で世界をとらえる

山内まず、鞆の津ミュージアムについて教えてください。

津口広島県福山市鞆の浦にあるミュージアムで、主に「アール・ブリュット」とか「アウトサイダー・アート」などと称されるような創作物を展示する展覧会を行っています。運営は社会福祉法人 創樹会で、日本財団アール・ブリュット支援事業の一環として2012年に開館しました。知的障害や精神障害のある人たちがつくった作品をはじめ、社会の「周縁」にいる人たちが人知れず生活の中で生み出したものなど、一般的にみれば価値がないとされたり、無視されがちな表現を展示することを通じ、世の中に多様性をもたらすことをひとつの理念として、企画・運営をしています。私はそこで学芸員として働いていまして、共同で企画展のコンセプトをつくったり、出展作家や作品を選んだりしてきました。

山内津口さんはミュージアム母体の福祉施設でもお仕事されているんですよね。

津口そうですね。鞆の津ミュージアムと平行して、母体が運営する知的障害のある人たちの入所施設でも働いています。私は生活支援員という形で食事や排泄、着替えや入浴の介助などの支援を行ってきました。

山内鞆の津ミュージアムで学芸員をやるようになったのにはどんな経緯が?東京芸大ご出身ですよね。

津口芸大では美学や美術史を勉強していて、直接はアウトサイダー・アートの研究をしていたわけではないんです。ただ、都築響一さんの『珍日本紀行』とか根本敬さんの『因果鉄道の旅』などを読んだりして、アウトサイダー・アート的なものがずっと好きだったこともあり、趣味でそういった作品を見たり、関連する本を読むという感じでした。卒業後は自分が所属していた研究室の助手をしたり、地元の尾道に帰ってきてからは本屋で働いたりしたんですけど、ある時「現場」に行った方がいいんじゃないかと思って、5年前に障害福祉施設での仕事を始めました。鞆の津ミュージアムには当初、お客さんとして通っていたのですが、開館後1年経った頃、鞆の津ミュージアムを運営している現在の法人に移ってくることになり、そこから学芸員としての仕事をするようになったという感じです。

山内マンガは子どもの頃から読んでいましたか。

津口昔、『テレビマガジン』とか『てれびくん』という雑誌に読者投稿コーナーってありましたよね。幼稚園くらいの時、それにオリジナルのロボットとかの絵を送ったりしていました。投稿して賞をもらえると、切手が送られてくるんですよ。3回くらいもらったかな。

山内(笑) 確かに当時は切手でしたね。

津口その後、小学2年生の時に「週刊少年ジャンプ」を初めて買ってもらって。『ドラゴンボール』が始まった頃ですね。そこから高校3年生くらいまで買い続けました。ちょうど『ドラゴンボール』が始まってから終わるまでかな。

山内大学では根本敬さんなどガロ系に?

津口そうですね。雑誌『宝島』を読んでいた高校の時の友人の影響で、根本敬さんやガロ関係のマンガを読むようになりました。花輪和一や諸星大二郎とか。

山内ジャンプのような王道少年マンガからガロまで幅広く読んでいますね。今回の「多様性」の選書作品はどういう風に受け取りましたか。

津口まず、すごいと思ったのは『ガキのためいき』。これはアスペルガー障害を持つ著者自身の子供時代を描いたエッセイ風の作品ですよね。さすがに当事者が描くものには圧倒的な分かりやすさがあるなと。今、医療や障害福祉の領域に「当事者研究」と言われる方法論があって、それはこの著者の沖田さんのような発達障害のある人や精神疾患をもった人などが主観的に自らの経験を分析したり、他者と対話することで新たな視点から自らの障害と向き合ったり、社会との関係性を変えていこうとする試みなんですが、それのマンガ版だなという感じがしました。非常に面白かったです。選書された作品群を見ると、この『ガキのためいき』と『どんぐりの家』が実録に近いという感じですよね。

山内その『どんぐりの家』はどうでしたか。実在のろう学校がモデルとなっている作品です。

津口実際、障害福祉施設に行ったことが無い人には、もしかしたら「本当にこんなことがあるのかな」と感じるかもしれないですよね。でも、私は子どもの知的障害施設でも働いていたことがあるのですが、実際に結構こういう感じの困難な現実はあるなと。凄くリアルに描かれていると思いました。

山内ハッピー!』はどうでした?

津口このお話は中途失明者の苦悩が描かれたものですけど、例えば先天的に失明している人が主人公だとしたら、全く違うマンガになったんじゃないかなと思います。伊藤亜紗さんの『目の見えない人は世界をどう見ているのか』という本があってとても面白いのですが、そこでは、視覚障害を単純に五感の内のひとつのモダリティが欠損していることだととらえるんじゃなくて、視覚以外の感覚を使って「健常者」とは違うやり方で世界を構築している人っていうとらえ方もできるんじゃないかと言われていまして。そういう障害のある人の中にある様々な方法での世界のとらえ方にふれることを通じて、「健常」とか「普通」であるとはどういうことなのかを考えるきっかけになればいいですよね。

山内新しい視点に気づくきっかけを提供するということはまさしく「これも学習マンガだ!」のひとつの目的でもあります。実際に学習参考書的な意味ではなく、学ぶきっかけになるものを意識して選書をしました。例えば「歴史」ジャンルであれば、まずマンガで歴史上の人物に興味を持って、絵でビジュアルイメージを持ったら、歴史小説がぐっと読みやすくなるとか。学びの導入部としてマンガの果たす役割は大きいと思います。

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