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日本財団 『これも学習マンガだ!~世界発見プロジェクト~』

スペシャル特集vol.08:ジャンル別インタビューシリーズ「戦争」
京都精華大学マンガ学部教授 吉村和真氏

ジャンル別インタビュー「戦争」

「これも学習マンガだ!」の11ジャンル(※)を1ジャンルごとに各ジャンルの専門家が紹介するインタビュー企画。第7弾は「戦争」ジャンルを取り上げます。思想史・マンガ研究が専門の京都精華大学マンガ学部教授 吉村 和真氏に「戦争」ジャンルの選書作品の感想や、戦争マンガの読まれかたについてお話を伺いました。
(※)「文学」「生命と世界」「芸術」「社会」「職業」「歴史」「戦争」「生活」「科学・学習」「スポーツ」「多様性」の11ジャンル

プロフィール

  • 吉村和真
    吉村和真(Kazuma Yoshimura)
    京都精華大学マンガ学部教授
    1971年、福岡県生まれ。京都精華大学マンガ学部教授、国際マンガ研究センター長。2015年より副学長・常務理事。専門は思想史・マンガ研究。「マンガを読む」ことが日常生活に定着するまでの歴史と、そのことが人間の思考や価値観に与える影響について研究中。2001年の「日本マンガ学会」設立や2006年の「京都国際マンガミュージアム」開館など、マンガ研究の環境整備と社会還元を進める。主な業績に、『「はだしのゲン」がいた風景―マンガ・戦争・記憶』(編著、2006年)、『差別と向き合うマンガたち』(共著、2007年)、『マンガの教科書―マンガの歴史がわかる60話』(編著、2008年)、『複数の「ヒロシマ」―記憶の戦後史とメディアの力学』(編著、2012年)、「コンビニエンスなマンガ体験としての「知覧」―『実録神風』のメディア力学」(『「知覧」の誕生―特攻の記憶はいかに創られてきたのか』、2015年)。「手塚治虫―逆風が育んだ「マンガの神様」」(『ひとびとの精神史』4巻、2015年)などがある。
  • 山内康裕
    聞き手
    山内康裕(Yasuhiro Yamauchi) 『これも学習マンガだ!』選書委員
    1979年生。法政大学イノベーションマネジメント研究科修了。2009年、マンガを介したコミュニケーションを生み出すユニット「マンガナイト」を結成し代表を務める。
    イベント・ワークショップ・デザイン・執筆・選書(「このマンガがすごい!」等)を手がける。また、2010年にはマンガ関連の企画会社「レインボーバード合同会社」を設立し、マンガに関連した施設・展示・販促・商品等のコンテンツプロデュース・キュレーション・プランニング業務等を提供している。主な実績は「立川まんがぱーく」「東京ワンピースタワー」「池袋シネマチ祭」など。「DOTPLACE」にて『マンガは拡張する』シリーズを連載中。「NPO法人グリーンズ」監事、税理士なども務める。

マンガを知らずして現代日本のことはわからない

山内吉村さんは京都精華大学マンガ学部の教授でいらっしゃいますが、具体的にはどのような授業をされていますか。

吉村「マンガ史概論」「現代マンガ論」などの理論を担当しています。マンガ“史”というと、「日本史」「世界史」のように年代に沿って事実を追いかけていくような授業を想像するかもしれませんが、マンガ史の場合はちょっと違います。まず、マンガ史も歴史を対象とする学問ですが、扱う史料がマンガなので、読み解くのは想像以上に難しい。というのもマンガの場合は設定が未来だったり過去だったりする中で、セリフをそのままその時代のものと安易に判断して読むわけにはいかないし、絵をどう読み解くかという問題も孕んできます。マンガを読み解く力、つまりマンガのリテラシーが無いと難しい訳ですね。僕の場合、そもそも歴史というのは扱う史料によってみえる像が変わってくる生き物みたいなものだという考え方なんです。歴史を学ぶということは、決められた年表にそってものをなぞるというより、自分自身が動態的にその時代の流れや空気に身を寄せていくことだと考えています。

山内マンガのリテラシーというのは興味深いテーマですね。

吉村日本人にとってマンガはとても身近で読むのが簡単なものだと思われていますよね。でもマンガには描くにしても読むにしても、活字以上に多種多様な方法がある。でもそんな複雑なマンガのリテラシーを僕たちはいつの間にか身に付けているんです。例えるならば、母国語を習得するような感じで。で、実は母国語っていうのは人間の思想や価値観をほとんど決定づけるわけですよ。日本語で育った人と英語で育った人は見える世界が違うんですね。同じように、マンガのリテラシーを自然と身に付けた人とそうでない人できっと見える世界が違うんです。僕の立場からすると、大げさに聞こえるかもしれませんが、マンガを研究しなくて現代日本のことなんかわかるはずないだろって思うんですよ。マンガのことを知らないと様々な本質的なことを見落としてしまうだろうと。

山内確かにそうですね。今回の「戦争」ジャンルの作品もまさに、現代日本を知る手助けになるものだと思います。

吉村そうですね。特に1970年代生まれ以降くらいの人たちにとっての「戦争イメージ」はマンガとアニメが強く影響しているというのが持論なんです。実際にNHKが行った「あなたの戦争イメージは何に影響されましたか?」というアンケート調査で1位が『はだしのゲン』2位が『火垂るの墓』でした。今でも大学で学生に聞いてみると昔と変わらず『はだしのゲン』が読まれていることが分かります。『はだしのゲン』は1973年の作品なので、もう43年経っているにも関わらず。

山内ものすごい影響力ですね。

吉村当たり前ですが、戦争を実体験できる世代は限定されます。けれど、メディア体験という意味ではむしろ戦後生まれの人たちの方が戦争のことをよく知っているとも解釈できます。「戦争体験が風化する」と言ったときに、風化するのは実体験であって、戦争についていろいろ考えたり、物語として享受したりする機会はむしろ増えています。

山内戦争マンガがたくさん生み出されるのはなぜでしょうか。

吉村ドラマが作りやすいからというのは大きいと思います。敗戦に向かっていく大きなストーリーが共有されていますからね。その中でも『はだしのゲン』はいろんな意味ですごいマンガですよ。

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