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日本財団 『これも学習マンガだ!~世界発見プロジェクト~』

エンターテイメントとしても消費される戦争マンガ

山内今日マチ子さんの『いちご戦争』は他とは系統が違いますね。

吉村今日さん流の詩集みたいな作品ですよね。甘いお菓子に包まれた恐ろしい戦争の物語。甘いお菓子と戦争は対極のもの。つまり『いちご戦争』というタイトルは一番反対にあるものをくっつけているわけです。日常において一番可愛かったり美味しかったり女の子らしかったり、という部分と戦争をくっつけるという試み。『COCOON』もそうですよね。戦争中でもそうでなくても、女の子はみんなそうした甘くてかわいいものが大好きで、それを大切にしたい。でもそうさせてくれない戦争についてのいろいろな表現がスタイリッシュにまとまっています。

山内マンガリテラシーが試される作品からスタイリッシュな詩集のような作品まで、「戦争」マンガを俯瞰するとマンガと戦争の両方が見えてきますね。

吉村本当にそうなんですよ。戦争というジャンルは広がりがあるんです。戦争は重いし暗いし、みんなが避けたいというものであるわけですが、ドラマを作りやすいということと、戦争をエンターテイメントとすることに対する、禁欲しているものをちゃんと解放してくれるものがマンガだったりするわけです。戦争は教条的な意味ではなく、むしろエンターテイメントとして消費されてくる部分が物凄くある。マンガはそもそも娯楽なので、娯楽として戦争を求める人たちにどう応えるかが重要なんです。だからこそ一方では悲劇を描くし、一方ではかっこよさや相手を打ち負かす快感も描いたりするわけで、その辺全体をひっくるめたメディア体験として僕らは戦争マンガから影響を受けている。そのことがよく分かる例としてコンビニマンガというメディアに今一番注目しています。これはおよそ1990年代後半に登場してきたメディアで、書店よりもコンビニエンスストアを中心に流通していて、単行本なのにカバーがなくて紙質があまりよくないけれど、そのぶん低価格であるのが特徴です。今日はコンビニマンガの戦争ものということで、『実録 神風特別攻撃隊 完全版』という一冊を持ってきました。あえて言えば、これは特攻の物語に感動して泣くためのマンガです。

山内これはどのくらい読まれているんですか。

吉村累計で10万部を超えています。いわゆるお決まりの物語なんですが、関連の研究書や資料に基づいているのと、隊員たちの遺書を引用するというのが特徴です。これはライターが全部脚本を書いて、絵を描ける人に作画をお願いするという方式で作られています。こうしてコンビニエンスストアに並べるマンガが大量生産されているわけです。コンビ二の棚のその横には「本当にあった○○な話」やゴシップ系のマンガなんかがある。そうした配置が重要なんですよ。戦争をエンターテイメントとして消費するということを一番分かりやすく体現しているのがコンビニマンガなんだと思います。コンビニマンガはゆるい動機で買われたり捨てられたりしますが、研究対象として軽んじるわけにはいきません。マンガ自体の影響力を考えるうえでは、むしろ消費の仕方が軽いからこそ、いつの間にか受けてしまうという意味で重く見る必要があると言えるでしょう。コンビニにおいてある戦争マンガには、マンガというメディア体験による戦争イメージの問題がぎゅっと詰まっていると思います。

山内コンビニマンガをメディアと捉える視点、大変興味深いです。今日は長時間にわたって、熱いトークをありがとうございました。

構成・編集 岩崎 由美

対談中に紹介された作品一覧

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