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日本財団 『これも学習マンガだ!~世界発見プロジェクト~』

「歴史」ジャンルの選書作品の中で印象深い作品は?

山内今日柳原さんにはたくさんの私物マンガを持ってきていただきました。紹介していただけますか。

    

柳原まず『チェーザレ 破壊の創造者』は素晴らしいと思います。歴史学の研究よりもマンガを作ることの方が難しいことってたくさんあるんじゃないかと。マンガは空間を描くものだから、例えば背景に描く建物の内部の様子や調度品に至るまで描かないといけないわけですよね。そこを調べるには相当の労力と強い想いが必要だと思います。

山内どこまで調べて描くかという判断は難しいですよね。歴史マンガを参考書的なものだと認識している人達は少なからずいて、そういう人達は内容に事実と違う点があると不満に思ってしまう。一方でマンガのドラマとしての面白さは別の所にもあるわけです。このバランスは難しそうですよね。

柳原歴史マニアや研究者たちがマンガ作品に対して「それは史実と違う」って突っ込むのは違う気がしていて。学生に対する「歴史マンガから得た歴史観は間違っている」みたいな批判も同じくですが。そこで否定するんじゃなくて適度な緊張感をもって、むしろ共存関係を築いていったほうが良いと思っています。

山内たしかにそうですよね。興味の入口がフィクションであっても、徐々にその背景にあるものが何なのか?と興味や視点が移っていけば良いんじゃないでしょうか。

柳原僕の講義では学生に『エマ』を見せるんです。作中、主人公エマがメイドとして勤めるドイツ人の貿易商が登場します。これはちょうど19世紀の終わりにドイツがフランスに戦争で勝って、賠償金を得た後の産業革命バブルの時代の話なんですね。ドイツがイギリスにどんどん進出していく。『エマ』に登場する裕福なドイツ人について、このような歴史を話すとストーリーだけでなく背景に目が行く。こうやって僕が講義で少しだけ他の視点を注入してあげれば、もうそれで十分学びになると思うんです。

山内少し話が逸れますが、そもそも今の大学生ってマンガ、読んでます?少し前に小学6年生~中学2年生の課外授業を受け持ったんですが、その教室では「週刊少年ジャンプ」を読んでいる子は3割にも満たなかったんです。今の子どもたちは私たちの想像以上にマンガを読まないんですよ。

柳原確かに。今の大学生でもマンガが読めない人は増えている印象です。

山内「これも学習マンガだ!」を通じてマンガの文法を次世代に繋いでいきたいとも考えているんです。マンガをたくさん読んでマンガの力を実感している世代が例えば今から5年後に「マンガで学ぼう」と号令をかけても、肝心の10~20代がマンガを読めなくなっているという状況は十分起こりえます。マンガ文化が幸せな形で続いていくためにはさまざまな切り口でマンガが使えますよって言うことを今このタイミングで伝えていかないといけないかなと。

柳原そうですね。マンガの多様性については僕も思うところがあります。歴史マンガであれば90年代くらいから竜馬や持統天皇のような超有名人物だけでなく、時には無名の人物が描かれるようになりましたよね。超有名人物を描く作品はその人物の運命を知っている読者が運命の中でもがく姿に魅了される。一方で、さほど有名ではない人物や無名の人物が描かれる作品では与えられた場所、限られた社会の中でどうやって頑張るかみたいな視点が入ってきます。

山内センゴク』や『キングダム』がそうですね。

柳原あともう一つ、歴史マンガの多様性で言うと現代史の学びにつながる作品についても触れておきたいです。『MASTERキートン』や『レッド』がそうなんですけれども、もはや20~30年前って今の中高生から見たら歴史なんですよね。『ヒストリエ』みたいに2000年以上前の「遠い過去」なら、人殺しを簡単にやってしまう感覚が今と違うものだと理解しやすい。でも実際はたった20~30年前であっても僕らの考え方や感覚は全く違っているんですよ。簡単な例で言うと、携帯電話があるか無いかで僕たちのコミュニケーションの有り様は大きく変化しましたよね。こんな風に20~30年前を描いた作品を読んでその変化に気づいて「何だろう、これ。」と思った時に、何か一つ掛け橋をかけてあげることが学びの糸口になるのではないかと。例えば『坂道のアポロン』は歴史的な事件を中心には扱っていないんだけれども、物語の背景には学生運動や学生闘争の時代があるんです。作品を読んだ100人のうち1人でもいいから「何だろう、これ。」と思って調べてくれたら面白いですよね。

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