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日本財団 『これも学習マンガだ!~世界発見プロジェクト~』

読後に読者が一皮むける作品を

山内子どもの頃にこういう作品との出会いがあると幸せですよね。

三宅そうですね。多様な生命とそれが結びつく世界があるということを想像できると視野が広くなりますよね。西洋では「人間の知能が絶対だ」という考えが中心にあるんです。だから西洋では人工知能は基本的に人間に近づければ良いという考え方で開発されています。でも日本には「八百万の神」がいますよね。万物に神様が宿っているという考え方です。そんな日本ではロボットの人工知能っていうのは八百万の神のもう一人目なんです。つまり800万1体目(笑)要するに横並びなんですね。

山内多様な生命を階層的ではなく並列に捉えていると。たしかに分かります。ゆるキャラがこんなにたくさん生まれて人気が出るのもその価値観の土壌によるところが大きいかもしれませんね。

三宅だから日本では『宝石の国』のようなマンガがたくさん生まれるんじゃないかと。市川さんだけでなく、日本の多くのマンガ作品で人間とよく似ているけれど違うさまざまな生命体が描かれています。人間だけが知能を持っているんじゃなくて、それぞれの生物が固有の知能を持って、固有の関係を世界と結んでいるということを想像できるようになれば、より自由に生きられるんじゃないかな。

山内日本人にとっては当たり前の感覚なだけに見落としがちですが、重要な指摘だと思います。

三宅人間社会だけを見ていると行き詰っちゃいますよね。人間の尺度だけでずっと生きていると、やっぱり固く、弱くなるし、脆くもなる。例えば「受験勉強が出来ないから俺はダメ」だとか、「車を運転出来ないからダメだ」とかですね。特に今の若い人は1つの軸だけで考えてしまうことが多いように感じます。インターネットの世界でも一番強い言葉にすぐ翻弄されちゃいますよね。「そうじゃないよ、人間だけで世界って動いているわけじゃないんだよ」っていうことが感覚として理解できたら、今よりずっと楽になれるんじゃないかな。理屈ではなく感覚として理解するというのは結構大事なことで、そのためにもマンガはとても有効な方法だと思いますね。

山内子どもの頃に出会った作品を大人になってから読み返すとまた違った発見がありますよね。『火の鳥』も何歳で読むかで注目するキャラクターや読み取るメッセージが大きく変わってくるんじゃないかと。

三宅風の谷のナウシカ』もそうですね。冒険活劇としてアニメ版に親しんだ子どもが大人になってからマンガ版を読むとびっくりするかもしれません。主人公のナウシカは日本の古典文学の『虫愛づる姫君』がモデルと言われています。虫への偏見に満ちた世界にいて、偏見を持たずに虫や自然とまっすぐ向き合うナウシカの姿はまさに「生命と世界」の本質を体現していると思います。虫は人間社会にとっては害以外のものではないように思えるけれど、より大きな世界から見ると、虫が森を守って、森は地球を守っているということが分かります。

山内地球にとっては虫ではなくてむしろ人間が邪魔モノなのかもしれないという考え方は日本人特有なものなのかもしれないですね。多様な生命と世界が描かれるマンガをたくさん読む中で、知らず知らずのうちに日本人の間で共有されている価値観のひとつかもしれません。他にも世界を見るためのさまざまな視点を僕たちはマンガからたくさん得てきたと思います。

三宅作品を読んで新しい視点を手に入れるとそれまでと世界が違って見えてきますよね。読後に一皮むけるというか。素晴らしい作品は読者を作品の世界に引き込んだ後にもう一度現実に戻す力があると思うんです。作品から得たものを自分自身の問題やその他さまざまな現実世界の問題と折に触れて結び付け、考えることができる。夏休みに子どもをキャンプに行かせてちょっと大人になって帰ってくるみたいな感じで、マンガを子どもに読ませると一皮むけて帰ってくるみたいな感じかもしれない。マンガに限らず優れたエンターテイメントにはそういう力があると思います。

山内ゲームにもありますよね。

三宅「学べるゲーム100選」をやったら面白そう。やってみようかな。

山内いいですね。是非。楽しみにしています。

構成・編集 岩崎 由美

人工知能をもっと知るための2冊

対談中に紹介された作品一覧

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