2018-06-19
【受賞作決定!】第159回 直木賞・芥川賞 と候補作品
目次
「芥川龍之介賞」「直木三十五賞」とは…
1935(昭和10)年に制定されました。芥川賞は新進作家による純文学の中・短編作品のなかから選ばれます。直木賞は新進・中堅作家によるエンターテインメント作品の単行本(長編小説もしくは短編集)が対象となります。
第159回芥川賞 高橋弘希『送り火』
第159回直木賞 島本理生『ファーストラヴ』
父親を刺殺し逮捕された女子大生のルポルタージュを執筆するため彼女に近づいた臨床心理士とその周辺の話。「その周辺の話」率はかなり高く、この事件を担当する弁護士を交えて絡む記憶と過去が興味深いです。予想の範囲内とはいえ、許されざる思考と嗜好の男たちがけっこう出てくるのですが、全部主人公の夫の我聞さんが洗い流していく様こそがなによりもセラピー。
第159回直木三十五賞 候補作
『破滅の王』/上田早夕里
日中戦争時の大陸で、秘密裏に開発された細菌兵器をめぐる骨太ストーリー。大陸、日本軍、医学に科学。これだけで731部隊を思い出すくらいには恐怖の対象でトラウマで(あと結局それしか思い出せないくらいには)有名な、関東軍防疫給水部が出てきます。展開のすべてが息苦しいですが、最後の最後に補記という形で登場人物のその後があって、そこにいちばん技巧を感じます。
『宇喜多の楽土』/木下昌輝
直木賞、2回目のノミネート!
前作『宇喜多の捨て嫁』(第152回直木賞候補作)は宇喜多直家が中心でしたが、こちらは息子の宇喜多秀家が主人公。片や戦国大名の中でも屈指の非道と呼ばれ、片や大名としての宇喜多家を終わらせた男という対比の意味でも前作を読むとより楽しめます。宇喜多秀家と正室・豪姫の心の通わせ方は最後までグッとさせつつ、「そうか、宇喜多直家の苛烈な人生には、豪姫という存在がいなかったんだ…」と哀しく気づかせてくれます。
『じっと手を見る』/窪 美澄
離職率の高さ、激務であること、低収入、など、介護士をめぐる環境でネガティブな話をよく聞きますが、本作はさらに「地方都市の閑散と憂鬱」「離婚、浮気、シングルマザー」が描かれかなりの重さ。でも主題は恋愛で、物語の収束の仕方としては申し分ないエンディングだと思います。海斗はいい人だなあと、しみじみ。