2023-07-17
海の水はなぜしょっぱいのか? 誰かに話したくなる理系雑学
我々が日頃、ネットやテレビで見聞きしている情報には、ほとんどといっていいほど理系に関するものが含まれています。これは、「サイエンス」は人々の好奇心を刺激するのはもちろん、モノや医療、食など、いずれもが理系分野を下地に成り立っているという現実があるからです。この春刊行された『人類なら知っておきたい 地球の雑学』(KADOKAWA)は、思わず誰かに話したくなる、そんな「理系雑学」をふんだんに収録した一冊です。
今回の記事では、我々にとってもっとも身近な調味料といっていい「塩」にまつわるとっておきの理系雑学を紹介しましょう。ふだんは意識したりしないけれど、誰もがみな「そもそもなんで?」と思っていることに違いないはずです。
海水が塩水であるワケ
海の水がしょっぱいのは、子どもでも知っています。しょっぱさの正体は、塩素とナトリウムが結びついた塩化ナトリウム、つまり「塩」です。
塩化ナトリウムは食塩の主成分で、海水からつくった塩は古くから食用にされてきました。海水の塩分濃度は3.5パーセントで、なめてみるとかなり塩辛いことがわかります。
写真:KADOKAWA
では、なぜ海水に大量の塩化ナトリウムが含まれているのでしょうか。これにはさまざまな説がありますが、二つに大別できます。
一つ目が、地球に海ができた直後からしょっぱかったという説。およそ46億年前のできたばかりの地球は、熱い溶岩のかたまりで海もありませんでした。それが、次第に温度が下がり、空気中の水蒸気も冷えて雨が降るようになりました。雨は空気中の塩素ガスを溶かして流れ、塩素を含んだ水が大地にたまりました。
また、この頃の大気は、火山から噴出したガスで満ちていましたが、火山ガスを含んだ雨は、岩を溶かす力もとても強いのです。そのため、岩石や土に含まれているナトリウムが溶けて海に流れ込み、塩素と結びつくことで塩化ナトリウムを含んだ海ができたというのです。
もう一つが、地球に陸ができてから徐々にしょっぱくなったという説。地球に陸ができたのはおよそ27億年前で、陸地の岩や土に含まれていた塩素やナトリウムが雨によって溶け出し、海まで運ばれました。海水が太陽に照らされると、水分だけが蒸発します。これが何億年も繰り返されるうちに、塩分濃度が徐々に濃くなったというのです。
現在では、これら二つの説の両方が相まって、海はしょっぱくなったと考えられています。海の水は常に蒸発していますが、それがまた雨になり、川になって海に戻るため、地球に生物が出現して以来、塩分濃度は変わっていません。
ナメクジに塩ではなく砂糖をかけるとどうなる?
さて、「塩」といえばナメクジ。この珍妙な生き物に塩をかけると縮んでしまうことはよく知られていますが、甘い砂糖をかけるとどうなるのでしょうか。まさか、塩とは逆に大きくなるようなことはないでしょうが……。
そもそも、塩をかけるとナメクジが縮むのは、浸透圧の作用によるもの。生物の細胞は細胞膜に包まれています。細胞膜は水などの小さい分子は通しますが、それより大きな分子は通しにくい性質があります。そのため、両側に濃度が違う溶液が置かれると、濃度の薄いほうから濃いほうへと水の分子が移動し、同じ濃度に変化することになります。このとき、水を移動させる圧力が浸透圧です。
写真:shutterstock
ナメクジの体内には、ほかの生物に比べても多い約85パーセントの水分が含まれており、しかも体の表面が水を通しやすい構造をしています。そのため、塩をかけられると細胞内の水分がどんどん外に出て塩のほうへと移動し、そのぶん体が縮むのです。野菜に塩をかけてしばらく置いておくと、水分がしみ出てきて体積が減りますが、これも浸透圧のはたらきによるもの。漬物はこれを利用している食品です。
では、ナメクジに塩ではなく砂糖をかけたらどうなるのか。じつは、砂糖をかけてもやはり縮んでしまいます。これも浸透圧の作用で、ナメクジの体の表面に砂糖がつくと、体内の水分が細胞膜を通って砂糖のほうへ移動するため、体は小さく縮んでいくのです。
野菜に砂糖をかけて実験してみると、塩をかけた場合と同様に縮むことがわかるでしょう。ただし、砂糖の浸透圧の力は塩ほど強くないので、塩に比べてずっとたくさんの砂糖が必要ですし、時間も長くかかってしまいます。あしからず。
思わず誰かに話したくなる「理系のウンチク」を212話収録した一冊。仕事で家庭で、日々のなにげない「雑談」に必ず役立つ理系ジャンルネタが存分に楽しめます。これはもはや、「理系テーマ」を超えた「地球テーマ」の雑学です!
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