2024-03-18
BL世界によく落ちているもの…それはーーBLあるあるが止まらない!『絶対BLになる世界VS絶対BLになりたくない男』
普段BL作品ばかり読んでいると、無意識のうちに強引な設定やストーリーを「普通」だと思い込んでしまうのかもしれない…。紺吉著『絶対BLになる世界VS絶対BLになりたくない男』(祥伝社)を読んで、そんなことに気づきました。この作品は、主人公が「自分がBL漫画の住人だ」ということに気づくメタ漫画です。なぜ、彼がその事実に気づいたかというと、あまりに不自然な現象が多すぎたからです。
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©紺吉/祥伝社
また、最初は自分が「イケメンじゃない」ことにより貞操は安全だと信じていた主人公でしたが、「BL漫画の界隈」では「平凡」や「特徴のない」「普通」という属性はメインに据えられやすいということを知って戦慄します。親に孫を抱かせてやりたい巨乳好きの主人公は、意地でも「BL」にならないと誓い、徹底してBLフラグを避けるようになります。
もう第1話の時点で「あー、たしかにBL漫画あるあるだよね」と笑ってしまいますが、この「不自然な現象」という名の「BLあるある」はもちろんこの程度では終わりません。
©紺吉/祥伝社
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つい「本音」を相手の目の前で言いがち(しかし相手はちゃんと聞き取れない)あるあるを「大人に高周波が聞き取れないように ある一定の声量以下の声は聞き取れないようにできているのかもしれない」と冷静に分析する主人公。
自らBL作品を読み予備知識を入れ、徹底的にBLフラグを避け続ける主人公ですが、この世界は容赦がありません。
©紺吉/祥伝社
とにかく、どうにも避けられないようなフラグが主人公を次々と襲ってくるのです。このような状況に遭遇した場合、普通であれば声をかけたり、警察に通報したりするでしょう。しかし、この世界では「自宅に連れて帰ること」が当然だといいます。いやいや、と苦笑しそうになりますが、記憶を辿ると「当然のように自宅に連れ帰るBL作品めちゃくちゃ読んでるわ…」となります。いかに自分が普段「ありえない世界観」に入り浸っているのか気づきます。
BLの世界で生きる主人公にとって、もはや家すらも平穏の場所としては存在していません。同じくモブ顔の弟に最近彼氏ができたようなのです。日常の些細な出来事がBL展開に繋がる世界において、弟の交友関係は把握しておこうと、弟が家に友達を連れてくるときはもしものときに備えて観察を欠かしません。
©紺吉/祥伝社
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モブ、当て馬、本命、とここまで簡単にわかってしまうのもにくいです。
このように毎話「BLあるある」が登場し、それにより苦悩する主人公の姿が見られるこの作品。よくここまでネタが尽きないものだと感心してしまうと同時に、BL作品の世界観がどれほど独特であるかということに改めて気づきます。とてもおもしろい作品なのですが、これを読んだあとに他のBL作品を読むと、どうしても主人公のツッコミが脳裏に浮かんでしまうのが困ります。
文=園田菜々