2021-11-30
第165回 芥川賞は石沢麻依『貝に続く場所にて』&李琴峰『彼岸花が咲く島』、直木賞は佐藤究『テスカトリポカ』 &澤田 瞳子『星落ちて、なお』に決定!候補作や歴代受賞作品もご紹介します!
第165回(2021年上半期)芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)受賞作品が発表されました!芥川賞は石沢麻依『貝に続く場所にて』と李琴峰『彼岸花が咲く島』が、直木賞は佐藤究『テスカトリポカ』と澤田 瞳子『星落ちて、なお』が受賞。候補作品や著者、あらすじ、歴代受賞作品をご紹介します。
目次
芥川賞・直木賞とは
「芥川龍之介賞」「直木三十五賞」とは…
芥川賞・直木賞ともに1935(昭和10)年に制定。芥川賞は新進作家による純文学の中・短編作品のなかから選ばれ、直木賞は新進・中堅作家によるエンターテインメント作品の単行本(長編小説もしくは短編集)が対象という違いがあります。
それでは、第165回芥川賞・直木賞受賞作をご覧ください!
【第165回芥川賞】石沢麻依『貝に続く場所にて』
第165回芥川賞候補作!
コロナ禍が影を落とす異国の街に、9年前の光景が重なり合う。静謐な祈りをこめて描く鎮魂の物語。
ドイツの学術都市に暮らす私の元に、震災で行方不明になったはずの友人が現れる。人を隔てる距離と時間を言葉で埋めてゆく、現実と記憶の肖像画。第64回群像新人文学賞受賞作にして、第165回芥川賞候補作。
(群像新人文学賞 選評より)
記憶や内面、歴史や時間、ここと別のところなど、何層にも重なり合う世界を、今、この場所として描くことに挑んでいる小説ーー柴崎友香氏
人文的教養溢れる大人の傑作
曖昧な記憶を磨き上げ、それを丹念なコトバのオブジェに加工するという独自の祈りの手法を開発したーー島田雅彦氏
犠牲者ではない語り手を用意して、生者でも死者でもない「行方不明者」に焦点を絞った点で、すばらしい。清潔感がある。ーー古川日出男氏
【第165回芥川賞】李琴峰『彼岸花が咲く島』
その島では〈ニホン語〉と〈女語〉が話されていた
記憶を失くした少女が流れ着いたのは、ノロが統治し、男女が違う言葉を学ぶ島だったーー。不思議な世界、読む愉楽に満ちた中編小説。
【第165回直木賞】佐藤究『テスカトリポカ』
メキシコのカルテルに君臨した麻薬密売人のバルミロ・カサソラは、対立組織との抗争の果てにメキシコから逃走し、潜伏先のジャカルタで日本人の臓器ブローカーと出会った。二人は新たな臓器ビジネスを実現させるため日本へと向かう。川崎に生まれ育った天涯孤独の少年・土方コシモはバルミロと出会い、その才能を見出され、知らぬ間に彼らの犯罪に巻きこまれていくーー。海を越えて交錯する運命の背後に、滅亡した王国〈アステカ〉の恐るべき神の影がちらつく。人間は暴力から逃れられるのか。心臓密売人の恐怖がやってくる。誰も見たことのない、圧倒的な悪夢と祝祭が、幕を開ける。
【第165回直木賞】澤田 瞳子『星落ちて、なお』
鬼才・河鍋暁斎を父に持った娘・暁翠の数奇な人生とはーー。
父の影に翻弄され、激動の時代を生き抜いた女絵師の一代記。
不世出の絵師、河鍋暁斎が死んだ。残された娘のとよ(暁翠)に対し、腹違いの兄・周三郎は事あるごとに難癖をつけてくる。早くから養子に出されたことを逆恨みしているのかもしれない。
暁斎の死によって、これまで河鍋家の中で辛うじて保たれていた均衡が崩れた。兄はもとより、弟の記六は根無し草のような生活にどっぷりつかり頼りなく、妹のきくは病弱で長くは生きられそうもない。
河鍋一門の行末はとよの双肩にかかっっているのだったーー。
★第165回芥川賞候補作品
くどうれいん「氷柱の声」(群像4月号)
第165回芥川賞候補作。
語れないと思っていたこと。
言葉にできなかったこと。
東日本大震災が起きたとき、伊智花は盛岡の高校生だった。
それからの10年の時間をたどり、人びとの経験や思いを語る声を紡いでいく、著者初めての小説。
千葉雅也「オーバーヒート」(新潮6月号)
第165回芥川賞候補となった最新作「オーバーヒート」に、
第45回川端康成文学賞受賞の初短篇「マジックミラー」を併録!
『デッドライン』で鮮烈な小説家デビューを果たした哲学者による
現代日本文学の最前線
言語が僕を隔てている。男たちが跳梁する空間からーー。
東京への愛惜を抱きつつ大阪に暮らし、京都の大学で教鞭を執る哲学者。
「言語は存在のクソだ!」と嘯きながら、言葉と男たちの肉体との
あいだを往復する。年下の恋人への思慕、両親の言葉、行きつけのバー、
失われた生家である「大きな白い家」、折々のツイート……。
「僕」を取り巻く時間と人びとを鮮やかに描く新作長篇「オーバーヒート」。
ハッテン場と新宿2丁目の移ろい、甦る記憶が現在を照射するさまを描いた、
選考委員絶賛の川端賞受賞作「マジックミラー」を併録。
高瀬隼子「水たまりで息をする」(すばる3月号)
【第165回芥川賞候補作】ある日、夫が風呂に入らなくなったことに気づいた衣津実。夫は水が臭くて体につくと痒くなると言い、入浴を拒み続ける。彼女はペットボトルの水で体をすすぐように命じるが、そのうち夫は雨が降ると外に出て濡れて帰ってくるように。そんなとき、夫の体臭が職場で話題になっていると義母から聞かされ、「夫婦の問題」だと責められる。夫は退職し、これを機に二人は、夫がこのところ川を求めて足繁く通っていた彼女の郷里に移住する。川で水浴びをするのが夫の日課となった。豪雨の日、河川増水の警報を聞いた衣津実は、夫の姿を探すがーー。
★第165回直木賞候補作品
一穂ミチ『スモールワールズ』
読売新聞、日経新聞、本の雑誌……各紙書評で絶賛の声続々!
「驚きの完成度!」ーー瀧井朝世さん(『スモールワールズ』公式HP書評より)
「BL界の鬼才恐るべし」ーー北上次郎さん(日本経済新聞 5月6日書評より)
夫婦円満を装う主婦と、家庭に恵まれない少年。「秘密」を抱えて出戻ってきた姉とふたたび暮らす高校生の弟。初孫の誕生に喜ぶ祖母と娘家族。人知れず手紙を交わしつづける男と女。向き合うことができなかった父と子。大切なことを言えないまま別れてしまった先輩と後輩。誰かの悲しみに寄り添いながら、愛おしい喜怒哀楽を描き尽くす連作集。
▼『スモールワールズ』刊行記念特別ショートストーリー「回転晩餐会」無料配信中!
呉勝浩『おれたちの歌をうたえ』
「あんた、ゴミサトシって知ってるか?」
元刑事の河辺のもとに、ある日かかってきた電話。その瞬間、封印していた記憶があふれ出す。真っ白な雪と、死体ーー。あの日、本当は何があったのか?
友が遺した暗号に導かれ、40年前の事件を洗いはじめた河辺とチンピラの茂田はやがて、隠されてきた真実へとたどり着く。
『スワン』で日本推理作家協会賞、吉川英治文学新人賞を受賞。圧倒的実力を誇る著者が、迸る想いで書き上げた大人のための大河ミステリー。
砂原浩太朗『高瀬庄左衛門御留書』
五十手前で妻を亡くし、息子をも事故で失った郡方の高瀬庄左衛門。
老いゆく身に遺されたのは、息子の嫁だった志穂と、手すさびに絵を描くことだけだった。
寂寥と悔恨を噛みしめ、韜晦の日々を送るが、それでも藩の政争の嵐が庄左衛門を襲う。
「決戦!小説大賞」でデビューし、文芸評論家・縄田一男氏に「新人にして一級品」と言わしめた著者。
藤沢周平、乙川優三郎、葉室麟ら偉大なる先達に連なる、人生の苦みと優しさ、命の輝きに満ちた傑作時代長編!