2022-07-01
決定!2021年ノンフィクション本大賞『海をあげる』(上間陽子/筑摩書房)沖縄で生きるということ
目次
ノンフィクション本大賞とは
過去1年間(発行日2020年7月1日~2021年6月30日。奥付に準拠 )に日本語で出版されているノンフィクション作品全般(※海外作品の翻訳本は除く)から、書店員の投票でノミネート作品・大賞が選ばれます。
<2021年本屋大賞ノンフィクション本大賞受賞作品>
『海をあげる』上間陽子
おびやかされる、沖縄での美しく優しい生活。幼い娘を抱えながら、理不尽な暴力に直面してなおその目の光を失わない著者の姿は、連載中から大きな反響を呼んだ。ベストセラー『裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち』から3年、身体に残った言葉を聞きとるようにして書かれた初めてのエッセイ集。
★「沖縄での暮らし」光と影
「沖縄での平穏な生活を想像して」と言われたら、あなたは何を想いますか。
青い空と海、白い砂浜。燦々と降り注ぐ太陽。
そのようなイメージを抱く人は、多くいるでしょう。そこでのんびりと生活を送りたいと思う人も多いはずです。
しかし、『海をあげる』では、著者の静かな暮らしの中にある、影を描いています。
基地建設によって奪われていく沖縄の青い海、10代で出産を経験したママ、水商売をしながらも苦しい生活を余儀なくされる青年・少女たち。
そして、著者自身が経験した、裏切りと別れ。
★『海をあげる』がまとう現実
収録作品の1つ「美味しいごはん」では、著者(=陽子)が経験した裏切りと、それに向き合う気持ちと、葛藤が描かれています。
夫が仕事で地方赴任することとなり、東京と地方での夫婦別居生活が始まって3ヶ月が経ったクリスマスの翌日。
夫は突然、結婚していながらも恋人がいて、しかもその恋人が近所に住んでいる友人であることを明かし、「もうウソはつきたくない」と言いました。
その後、陽子は仲の良い友人に相談したり、夫の元恋人と対話をしたりなど、現状に向き合っていきます。
そして、「夫を許すか、許さないか」の選択に迫られることになります。
陽子が葛藤を繰り返し、出した決断とは…その後の生活は…
一見、穏やかに見える沖縄での暮らしの中にある影・現実を、あなたはどのように感じるでしょうか。
悲痛な叫びと、強く生きたいというメッセージを強く感じ、私たちの心を震わせます。
あなたは、そのリアルを受け止めることはできますか。
★著者・上間陽子について
1972年、沖縄県に生まれる。1990年代から、2014年にかけて東京、それ以降は地元沖縄で未成年の少女たちの支援や調査を行っている。
沖縄の夜の待ちで働く少女たちの姿をリアルに描いた『裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち』(太田出版/2017)などをはじめ、若者・女性・貧困などの社会問題や、沖縄にフォーカスを当てた作品を執筆している。
現在は、沖縄で若年出産をした女性の調査を行っている。
<ノンフィクション本大賞ノミネート作品>
『あの夏の正解』/早見和真
コロナ禍で甲子園が中止になった夏。夢を奪われた選手と指導者はどう行動したのか。「このまま終わっちゃうの?」。二〇二〇年、愛媛の済美と石川の星稜、強豪二校に密着した元高校球児の作家は、彼らに向き合い、“甲子園のない夏”の意味を問い続けた。退部の意思を打ち明けた三年生、迷いを正直に吐露する監督……。パンデミックに翻弄され、挑戦することさえ許されなかったすべての人に送るノンフィクション。
『キツネ目 グリコ森永事件全真相』/岩瀬達哉
147通にも及ぶ膨大な脅迫状、600点以上の遺留品、さらには目撃、尾行までされながら、ついに時効の彼方へと逃げ込んだ「グリコ森永事件」犯人グループ。
その中心人物、かつ司令塔となったのが、「キツネ目の男」だった。
グリコの江崎勝久社長を自宅から拉致して監禁、身代金を要求するという「実力行使」から、青酸入りの菓子と脅迫状の組み合わせによって裏取引し、企業からカネを奪おうとする「知能犯罪」、そしてメディアや世論を巻き込んだ劇場型のパフォーマンスまで、日本の犯罪史上に残る空前絶後の事件だ。
しかし、犯人グループは、その「痕跡」を消しきれていなかった。
当時、第一線で捜査にあたった刑事、捜査指揮した警察幹部、犯人グループと直接言葉を交わした被害者、脅迫状の的になった企業幹部など、徹底した取材で事件の真相をえぐり出す。
「少なくとも6人いた」という犯人グループの、役割分担、構成にまで迫る!
「キツネ目と仲間たち」の全貌が、闇の向こうから浮かび上がるーー。
『ゼロエフ』/古川日出男
そうか、「復興五輪」も消えるのか。
歩こう、と思った。話を聞きたい、と思った。
福島のシイタケ生産業者の家に生まれ育った著者が初めて出自を語り、18歳であとにした故郷に全身で向き合った。
生者たちに、そして死者たちに取材をするために。
中通りと浜通りを縦断した。いつしか360キロを歩き抜いた。報道からこぼれ落ちる現実を目にした。ひたすらに考えた。
NHK「目撃!にっぽん」で放送!
あの日から10年。小説家が肉体と思考で挑む、初のノンフィクション
『デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場』/河野啓
【第18回(2020年)開高健ノンフィクション賞受賞作!】両手の指9本を失いながら〈七大陸最高峰単独無酸素〉登頂を目指した登山家・栗城史多(くりきのぶかず)氏。エベレスト登頂をインターネットで生中継することを掲げ、SNS時代の寵児と称賛を受けた。しかし、8度目の挑戦となった2018年5月21日、滑落死。35歳だった。彼はなぜ凍傷で指を失ったあともエベレストに挑み続けたのか? 最後の挑戦に、登れるはずのない最難関のルートを選んだ理由は何だったのか? 滑落死は本当に事故だったのか? そして、彼は何者だったのか。謎多き人気クライマーの心の内を、綿密な取材で解き明かす。
『分水嶺 ドキュメント コロナ対策専門家会議』/河合香織
クラスター対策に3密回避.未知の新型コロナウイルスに日本では独自の対策がとられたが,その指針を描いた「専門家会議」ではどんな議論がなされていたのか? 注目を集めた度々の記者会見,自粛要請に高まる批判,そして初めての緊急事態宣言…….組織廃止までの約四カ月半,専門家たちの議論と葛藤を,政権や行政も含め関係者の証言で描くノンフィクション.