2025-01-15
第172回芥川賞・直木賞決定!候補作と歴代受賞作品
第172回(2024年下半期)芥川賞・直木賞が発表され、芥川賞に安堂ホセ『DTOPIA』、鈴木結生『ゲーテはすべてを言った』が、直木賞に伊与原新『藍を継ぐ海』が選ばれました。最新の芥川賞・直木賞候補作品と歴代受賞作品をご紹介します。
目次
芥川賞・直木賞とは/由来/違いなど
「芥川龍之介賞」「直木三十五賞」とは…
芥川賞・直木賞ともに1935(昭和10)年に制定。
自身も作家であり、文藝春秋社主宰の菊池寛が同時に創設しました。
芥川賞は新進作家による純文学の中・短編作品のなかから選ばれ、直木賞は新進・中堅作家によるエンターテインメント作品の単行本(長編小説もしくは短編集)が対象という違いがあります。
いずれも年2回、1月・7月に受賞作品が発表されます。
第172回芥川賞・直木賞は2024年12月12日(木)に候補作品発表。2025年1月15日(水)に選考会が開かれ、受賞作品が決定します。
第172回芥川賞
『DTOPIA』安堂ホセ/河出書房新社
恋愛リアリティショー「DTOPIA」新シリーズの舞台はボラ・ボラ島。ミスユニバースを巡ってMr.LA、Mr.ロンドン等十人の男たちが争う──時代を象徴する圧倒的傑作、誕生!
『ゲーテはすべてを言った』鈴木結生/小説トリッパー秋季号
高名なゲーテ学者・博把統一は一家団欒のディナーで、彼の知らないゲーテの名言と出合う。ティー・バッグのタグに書かれたその言葉を求める旅の先に、行き着いた場所は……。若き才能が描く、アカデミック冒険譚!
第172回芥川賞 候補作品
『字滑り』永方佑樹/文學界10月号
『ダンス』竹中優子/新潮11月号
同僚三人が近頃欠勤を繰り返すのが気に入らない私は、その一人の先輩女性下村さんに、彼らの三角関係を知らされる。恋人を取られた下村さんの気ままな言動に翻弄される私の日々を描く、新潮新人賞受賞&芥川賞候補作。
『二十四五』乗代雄介/群像12月号
第172回芥川龍之介賞候補作!
大事な人が、かつてここにいた
確かなしるしを何度でも辿る──
喪失を抱えたまま生きていく、祈りの記録。
ロングセラー『旅する練習』の著者がはなつ待望の新作。
「これは、叔母がどんなに私を思ってくれていたかということを、その死後も巧妙なやり方で繰り返しほのめかされ時には泣かされたところでぴんぴんしている、根深い恨みである。」
実家を出て二年、作家になった二十四五の私は弟の結婚式に参列するため、仙台に向かっている。
五年前に亡くなった叔母の痕跡を求めて、往復する時間の先にあるものとは。
第172回直木賞
『藍を継ぐ海』伊与原新/新潮社
第172回直木賞 候補作品
『よむよむかたる』朝倉かすみ/文藝春秋
本を読み、人生を語る、みんなの大切な時間
この小説は、著者の母が参加していた読書会の風景がきっかけで生まれました。
本を読み、人生を語る。人が生のままの姿になり言葉が溢れだす。そんな幸福な時間をぎゅっと閉じ込めたい、という願いが込められた物語です。
〈あらすじ〉
小樽の古民家カフェ「喫茶シトロン」には今日も老人たちが集まる。月に一度の読書会〈坂の途中で本を読む会〉は今年で20年目を迎える。
店長の安田松生は、28歳。小説の新人賞を受賞し、本を一冊出したが、それ以降は小説を書けないでいる。昨年叔母の美智留から店の運営を引き継いだばかりだ。その「引き継ぎ」の一つに〈坂の途中で本を読む会〉のお世話も含まれる。何しろこの会は最年長92歳、最年少78歳、平均年齢85歳の超高齢読書サークル。それぞれに人の話を聞かないから予定は決まらないし、連絡は一度だけで伝わることもない。持病の一つや二つは当たり前で、毎月集まれていることが奇跡的でもある。安田は店長の責務として世話係だけをするつもりだったが、「小説家」であることを見込まれて、この会の一員となる。
安田は読書会に対しても斜に構えていた。二作目が書けない鬱屈がそうさせていたのかもしれない。しかし、読書会に参加し、自分でも老人たちと「語る」ことで心境に変化が訪れるーー。
なんとかウミガメの卵を孵化させ、自力で育てようとする徳島の中学生の女の子。老いた父親のために隕石を拾った場所を偽る北海道の身重の女性。山口の島で、萩焼に絶妙な色味を出すという伝説の土を探す元カメラマンの男ーー。人間の生をはるかに超える時の流れを見据えた、科学だけが気づかせてくれる大切な未来。きらめく全五篇。
『飽くなき地景』荻堂顕/KADOKAWA
土地開発と不動産事業で成り上がった昭和の旧華族、烏丸家。その嫡男として生まれた治道は、多数のビルを建て、東京の景観を変えていく家業に興味が持てず、祖父の誠一郎が所有する宝刀、一族の守り神でもある粟田口久国の「無銘」の美しさに幼いころから魅せられていた。家に伝わる宝を守り、文化に関わる仕事をしたいと志す治道だったが、祖父の死後、事業を推し進める父・道隆により、「無銘」が渋谷を根城にする愚連隊の手に渡ってしまう。治道は刀を取り戻すため、ある無謀な計画を実行に移すのだが……。やがて、オリンピック、高度経済成長と時代が進み、東京の景色が変貌するなか、その裏側で「無銘」にまつわる事件が巻き起こる。刀に隠された一族の秘密と愛憎を描く美と血のノワール。
『秘色の契り 阿波宝暦明和の変 顛末譚』木下昌輝/徳間書店
『秘色の契り 阿波宝暦明和の変 顛末譚』著者の言葉 木下昌輝
江戸時代、こんなにややこしい殿様は他にいなかったかもしれない。
小藩から25万石の大藩に養子入りし、苛烈な藩政改革に取り組んだ。
誰にも負けぬ弁舌と知識、厳しい倹約令と公共投資の両立、当時の身分制度を破壊する新法、そして、どこにもない市を生み出そうとしたが……
蜂須賀重喜という男が愚者なのか賢者なのか、勝者なのか敗者なのか。
皆様の目で確かめてください。
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三十万両もの巨額の借財を抱える徳島藩。藩政改革を担ったのは、型破りな人物だった。
気鋭の作家・木下昌輝が、現代にも通じる政治改革と、経済立て直しを目指す藩主と家臣団の奮闘を描く。
阿波には特産の藍があった。
江戸時代中期の宝歴3年(1753年)から、明和6年(1769年)に起こった徳島県蜂須賀藩のお家騒動の真相とは…。
徳島藩蜂須賀家の物頭、柏木忠兵衛は新藩主候補・佐竹岩五郎との面会のため、江戸に急いだ。藩の財政はひっ迫している。
新たなまとめ役が必要だった。しかしーー。
「政(まつりごと)には興味なし」
新藩主となった岩五郎改め、第十第藩主・蜂須賀重喜はそう言い放つ!
家老たちの専横に抗して、藩主の直仕置(直政治)による藩政改革をめざす忠兵衛ら中堅家臣団。
対立が激化するなか、新藩主が打ち出した驚きの改革案とは!?
そして、徳島藩を狙う大がかりな陰謀とは……。
「殿と一緒にやりたいのです!」
アクション&サスペンス満載、著者渾身の痛快歴史エンタテイメント長編!
徳島藩を二分する家臣団の対立が勃発する。
新藩主として第十代藩主・蜂須賀重喜を迎え、気鋭の中老たちは、藩政改革と藍玉の流通を取り戻そうと闘い始めた…。
ところが、新藩主はあまりにも斬新な改革案を打ち出した!
特産品の「藍」は借財に苦しむ藩を救うのか?
「改革で大切なのは、人の心を変えること!」
『虚の伽藍』月村了衛/新潮社
日本仏教の最大宗派・燈念寺派で弱者の救済を志す若き僧侶・志方凌玄。バブル期の京都を支配していたのは、暴力団、フィクサー、財界重鎮に市役所職員……古都の金脈に群がる魑魅魍魎だった。腐敗した燈念寺派を正道に戻すため、あえて悪に身を投じる凌玄だが、金にまみれた求道の果てに待っていたのはーー。圧巻の社会派巨編。